第87話 もう一人の……

 朝から、各国を飛び回り。

 王をさらってくる。


 途中。

 ソレムニティー王国に、置き去りにして忘れていた。

 サラスに怒られた。

 それにもめげず、もう一つの管理室へと飛んだ。


 一応。

 テレーゼに、転移ゲートの認証が、使えるか試させる。

「えーと。神代様。ここも同じです。管理者が私となっております」

「えっ。そうなのか?」

「はい」


 そう言っている間に。


 王たちは一度やったことがあるため。

 勝手に橋を渡り。手をつないでいる。

 俺は、テレーゼと話をしているから。

 みちよが、代わりを務めている。


 そして聞こえてくる。

「意思を、受け取った。共に手を取り、邪神を倒せ」の言葉。


 すると。

 目の前の床が光りはじめて、下から女神が上がって来た!?

「意思を、確認いたしました。わたくしと共に。手を取り、邪神を滅ぼしましょう。実は、邪神は前回の戦いの折。死滅させること叶わず。まだ生き残っています」


 俺たちは、しゃべっている女神をのぞき込む。

「邪神は。通常の属性魔法では倒せず。聖なる属性を持たせたものでなくてはなりません」

 一生懸命。

 テンプレをしゃべってはいるが、顔が引きつりだした。


 そして。

 俺の横にいる、テレーゼを見つけて、驚いたようだ。

 言葉が止まる。


「なぜ。私が居るのです。この偽物」

 と、激高した時に、スタンさせた。


「あー。なんというか、私って。性格悪そうな顔をして、しゃべっていたのですね。反省をせねば、いけませんね」

 元からいたテレーゼが、しゃべる。


「さてと。困ったね。とりあえず、下を見てみるか」

 女神を少し遠くまで押し出して、全員がゲートに乗ってみる。


 軽く。ふわっと落下するような浮遊感を感じて、下の管理室へと到着した。

 そこに並んだ、大きめのチューブを見た瞬間。

 各王全員を、スタンさせ。

 部屋から放り出した。


 そこには、裸で液体に浮いているテレーゼ。


 カプセルの上部カウンターには、数字が表示されており。

 9212と8859の二つが空になっていた。

 もう一つ手前は、ずいぶん若そうで5573と5,208と。

 まあさらに、その奥側。

 ちびっこも居る。1,923と1,558。


「これは、あれかな? 人工子宮とかいうやつかな?」


「それっぽいわね」

 さすがに、みちよはそう答えたが、サラスやフェンは知らんだろうな。


「この情報は、ライブラリに無かったな」

 テレーゼに言うと、

「千年を超えたころに、体にガタが来て。オリジナルの私が、作った物のようです。これはすべて、私のクローンですね」


 そう言って、端末なのか。

 何かのコンソールから目を離して、チューブをしげしげと眺めるテレーゼ。


「向こうがライブラリで、こっちが本当の管理室か?」


「いえ。基本的には同じなんですが、食糧庫を向こうに移して、こちらにスペースを確保したようですね。ですので、試練を受けて解放されると、こちらから転送されるみたいです。それで、こちらは育成槽で。神代様の言われる人工子宮なるものは、奥側に1台。疑似体内槽と書かれたものが、あるようです」


「ああそれでか。このカウンター。1年の差があって、ちょうどの数字だな。疑似体内槽が1台だから、同じ歳が作られないんだな」

「でも子供って、生まれるのに、1年もかからないわよ」

「一人が終わって。すぐ次というわけにも、いかないんだろう。滅菌とか必要そうだし」


「もしかして、2個こっちのケースが開いたから、次が作成されるの?」

「どうでしょうか? 試練が達成されたら、停止されて廃棄されるのかも」

「廃棄?」

「ええ。私は伝言係で、邪神の生存と、戦い方を教えるのが役目のようですから」

「すると実際に、勇者召喚とかをしていたのは誰だ?」


 テレーゼが端末を調べると、

「昔。自信をこの星の制御用システムに取り込んで、制御システムとなってしまった私のオリジナルの意志でしょうか?」


「それは。今も、動いているのか?」

「動いていますが、新人種強化プログラムは、終了したようですから。もう勇者召喚は行われないと思います」


 それを聞いて、俺はほっとした。向こうの神様が気にしていたのは、自分の所のリソースを勝手に持っていく女神だ。その条件を考えると、テレーゼはメッセンジャーで。悪い女神はシステムとなる。危なく。勘違いで、自分の仕事を全うできていないことになってしまう。


「この子たちは、廃棄として。この時点で、意思はあるのか?」

「出るときに、教育をしないと単なる器で、出しても生存できないそうです」


「そうか。可哀そうだが、機械に任せよう」


 そこで、あの試練で引っかかっていた所を、ふと考えた。

 最初、試練の人種に。ハイヒューマンが入っていると、達成なんかできないじゃないかと思ったが。これを作ったときは、まだハイヒューマンが滅んだとは、思っていなかった。だから、4種族が手を取る必要がある。


 その時には、ここからテレーゼが出ても。繁殖ができることになる。


 そうだな。そう考えれば、4種族でいいんだ。


 そうして。こちら側にも、向こうからアクセスできるという。テレーゼの言葉を聞いて、俺たちは、上に上がった。


 すると、しどろもどろの王たちと、妹テレーゼがにらみ合いをしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る