第83話 女神の愚痴

「なんなの。あんたたち」

 が第一声。


「私を誰だと思っているのよ。縄を取りなさい」


 なんか喧しいから、鑑定しよ。


 テレーゼ・アーナキ

 種族:ハイヒューマン 25歳

 身体:165cm/55.2kg

 階位:5

 魔力量:6832

 攻撃力 :957

 防御力:623

 力:533

 耐久:621

 器用さ:536

 敏捷性:421

 知性:633


 称号:神の眷属(代行者)・管理

 適正:全

 状態:興奮


 あん? 階位は高いけれど、ああ魔力量も高いな。

 でも他が低い。引きこもりか?


 女神のメの字もないし、25歳?

 ハイヒューマンて。滅んだのが、何千年も前だろう?


 俺の頭の中は、クエスチョンマークが乱舞していた。


 その間も、自称女神は叫び続ける。


「何千年も待って。やっと試練を突破したと思ったのに。なに、この仕打ちは。恐れ奉りなさいよ。私は女神よ」

 ぜーぜーと、息を切らして、うめいている。


「あー。いいかな」

「なによ」


「試練て。あれ普通なら無理だろう。この世界に、お前以外。ハイヒューマンはいないんだろう?」

「そうよ。私は偉大なる。……あれ? そう言えば。あの試練どうやって? 私以外いないのに」


「誰も解けない試練を、ずーっと待っていたのか?」


「……解けたじゃない。長年待った、甲斐があったわ」

 本人も言いながら、納得していない顔だ。


「さて。テレーゼ・アーナキさん」

「なによ。……へっ、何で私の名前。盗み見たわね。このスケベ野郎」


「ああ。鑑定したのは、悪かった」

「鑑定。何でそんな? 私より上位じゃないと見られない……はず。……あなた一体?」


「あんたが。よその世界に迷惑を掛けるから。そのせいで、遣わされた管理者だ」

 そういった瞬間。女神の目が見開かれ、その後盛大に泳ぎ出す。

「そっ、そんな迷惑なんて」

 と言いながら、完全に挙動不審。


「覚えがあるようだな。他の宇宙からリソース。つまり、勇者と称して魂を持ってくるのは、禁止されているはずだな」


「で、でも。今までは……」

「よその神が我慢をしてくれたんだ。それに甘えて。お前は、やりすぎた」


「くっ、なんで。このロープ掌握できない」

「そりゃ、俺の方が強いからだろう。管理の力は知っているだろう」

「そんな……」

 相変わらず、すごい勢いで目が泳いでいる。

 何処を見ているんだろう?


「でも。この星は、私が管理している。あんたなんかが来れば、私が把握できないはずないわ」


「ああ。おかげで、大変だった。最初。弱い力でここへきて、レベルを上げたんだ」

「何ですって……」

 がっくりと力が抜ける、女神。


 周りの王たちは、完全に口を開けて放心状態だ。


「とまあ、そういうことで。この星は、俺が管理者になる」

 宣言をした瞬間。どういう原理か? いや俺の管理の力か。ものすごいエネルギーが俺に注がれた。


 このとき、俺の称号。

 司が管理に変わったのが分かった。

 こんな仕掛けをしていたのか。


 女神は、目を見開き。口がパクパクしている。

「神よ。お許しください」

 とだけ言って、うなだれる。



「あつし。なんというか、神々しいわ。力を抑えてくれない?」

 みちよが言う。

「そうか?」


 そう言われて、抑えてみるが。うん? これ以上は、駄目だな。

「だめだな。さっきみたいに、抑えることが出来ない」


「当たり前でしょう。あなた。眷属じゃなくて本物だもの」

 女神がつぶやく。


「そうなのか?」

「それに、その力。前の守護者。アーナキ様より強いわ」

 すっかり観念したようだ。


「それで。試練の話なんだけれど。神。あなたに、お伝えしなければいけないことが有るの」

「なんだ? そう言えば、あれは何が目的だったんだ」


 女神は、目的について話を始める。

「守護者。アーナキ様と、ハイヒューマンが手を組み。邪神を滅するために尽力したのだけれど。邪神はその身がちりじりとなり隠れただけなの。まだ、滅んではいないのよ」


 あらまあ。

 存在までかけて戦ったのに、まだ死んでいないのか。

「あいつは、陰に潜り。力をためているはずなの。そのために種族全部に力付けさせようとしたんだけれど、お互いに争いだすし。本当に苦労したわ」

「あれは、お前が仕掛けたんじゃないのか?」

 女神は、静かに首を振る。


「知を与えても、周りに攻め込む。勇者を与えても周りに攻め込む。そのおかげで、文明も発達せず。お互いの力は、どんどん弱くなっていったの。私の想いと正反対」

 とうとう、泣き出した。


「本当は、お互いに手を取れば、もっと発展していたはずなの。そのために、交流しやすくなるように、共通硬貨を与えたり色々したのに。何度も滅ぼしてやろうかとも思ったわよ。でもね。守護者。アーナキ様に。私は直接、この世界を守り。守護せよと願われて。16歳の時に、神の眷属としてお願いされた私は。これでも、精一杯務めたの……。 でも。環境に適応させるために作った亜人種は、好き勝手して。私から見ると、自ら滅びに向かって進んで行くのよ。この悲しさ、むなしさが。……分かる?」


「だ、そうだが。何か意見はあるかな? 各王よ」


 突然振られて、おろおろしているが、魔人族の王パズズが口を開く。

「女神よ。信託で一言言ってくれれば。我々とてそんなにバカではない」

「言ったじゃない。何度も何度も。聖国の教皇とか言うやつに。『種族は集まり、一つに成れと』」

 皆がそろって、あーと言う顔をする。


「聖国は滅んだ。我々が聞いた信託は、勇者を送るのみだ」

「なっなんで。あいつらが一番。私を信仰していたのに」

「信仰は、どうか知らんが。あいつらが、一番私利私欲に忠実で、攻撃的だったな。だから、そのありがたいお言葉を聞き、ヒューマンが武力を持って、他の種族をまとめ。一つとなろうとしたのかな?」

 と、俺が言うと、皆が頷く。


「なんでよ」

「努力は認めよう。他の宇宙にまで迷惑をかけ。ただ人を見る目と、指導力が無かったな」

 再び、がっくりと肩を落とし。泣き始めた。

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