第82話 つかまえた

 翌日。

 午前中はゆっくりして、午後から各種族の王を拉致しに行く。


 最近、こんなことばかり、している気がする。


 翌日。各地で王を拉致して、中央の小島へ移動をする。


 そこで、この場所を、初めて見るメンバーは、こんな施設があったことに驚き。周りを、きょろきょろと眺めている。


 あつしは口を開き、みんなに説明をする。


「さて。ここは4つの大陸。ダンジョンから繋がっている、海の真ん中の島だ。この前。そこにある、島にあたる部分に立った時。『汝の道を示せ』と問いが聞こえた。ここまでは良いな」


 当然、各王は初耳である。

 しかし、もしほかの王が聞いていれば、悔しいので誰も何も言わない。

 大丈夫。誰も何も聞いてはいない。


 あつしは、

「まず、考えられる条件を上げる。どこかから、どこかに通り抜けてみる。これが一つ。次に、4つの通路から、各種族が真ん中に集まり、反応がなければ、手でも繋ごうか。今のところ、思いついたのはこの位だな。何か案はあるか?」


「はい」

 と言って、ソレムニティーの王。トゥラン・ク・イリティー・ソレムニティー長いからトゥランでいいや。が、手を挙げた。


「トゥラン王。何か意見が?」

「真ん中に集まり。全員が、別の道に進むこともあるかと思う」


「ちょっと待った。みんなが集まり、別の道に進むというのは、考え方としてはどうだ? 何らかの意思に従い。と、いうならば、喧嘩別れに見えやしまいか」

 と、魔人族の王パズズが答える。


「ううむ。それもそうじゃな」


「まあ試すか。何か反応も、あるだろう」

 あつしがそう言うと、各王が頷き、ぞろぞろと遺跡の道の入り口に立つ。が、

「これって。やっぱり本物と、対応したほうが良いのではないか?」

 魔人族の王。パズズが発言する。


「でも。どうだ。各大陸につながるダンジョンは、2つあるぞ」

「それもそうだな。でもまあ、南をはさんで、ヒューマンと魔人族。北をはさんで、俺と獣人族でいいだろう」

 と俺が言うと、移動をする。


「こうだな?」

 獣人族の王。レイが、立ち位置を決める。


「それじゃあ。中へ入るぞ」

 一斉に歩き出す。

 入ったら底が抜けるとか、罠があるとかは勘弁してくれよ。

 俺は祈った。

 だれに?


 みんなが中に入ると、声が聞こえる。

「汝の道を示せ」

 顔を見合わせ。とりあえず、輪になるように手をつなぐ。


「意思を、受け取った。共に手を取り、邪神を倒せ」


 その瞬間。

 部屋の中心に、光の柱が立ち。

 下から、女神が上がって来た。


 その瞬間。

 俺は、女神の後ろへ移動して、首根っこを捕まえる。

 すかさず、雷魔法でスタンさせた。


 「ぴぃ」と言って、白目をむき、卒倒する女神。


 すぐに紐を取り出し、ぐるぐる巻きにして転がした。


 ここまでで、1秒ジャスト。


 俺は、腕組みをして、フンと鼻息を荒くする。


 訳が分からない、王連中と勇者たち。

 確かに、すぐ横に立っていた俺が、わずかの間に、違った場所に現れた女性を。縛り上げている。


 正気を戻したのか。

「神代様。突然どうされたのです? それにその女性は?」


 俺は答えようとして、こいつが女神じゃなかったら、まずいことになると気が付いた。

「おい、並木君。坂下さん。みちよ。こいつの顔を確認してくれ。女神じゃないか?」


 焦っている俺の剣幕に、恐る恐る近づく3人。


「多分正解ね」

 と、みちよがいい。ほかの二人もうなづく。

「よし。こいつが女神だ」


 ものすごい勢いで驚き、近寄って来る王たち。

「この方。いえ、こいつが、そうでございますか」


「この床は、転移装置かエレベーターぽいから、ちょっと寄せよう。おい。みちよ何か持っていないか、身体検査してくれ。フェンも手伝ってくれ」


 うなずいて、近づいてきたフェンが、いきなり女神を脱がそうとするから、頭に拳骨を落とす。


「脱がすな」

「ふん。さすが獣ね」

 微笑む、みちよ。


「とりあえず。何持っていないようね。あとは女だから、大事なところも調べる?」

「そこまでしなくても、いいだろう」



 とりあえず、目が覚めるまでどうするか?

「ここだと何か仕込まれているのも不安だから、一度拠点に帰るか。王たちは時間は大丈夫か?」


「「「宰相が居るから大丈夫」」」


「わかった。飛ぶぞ」



 ということで、ミスルールの拠点へと帰ってきて。

 女神は、逃げられない程度に縛って、ベッドに転がす。


 各王は、家の様子を眺めて、温泉があるぞというと、入りに行った。

 世話してくれる、侍女が居なくて大丈夫か聞くと、大丈夫だと言うので、タオルと石鹸。シャンプーとリンス。トリートメントとバスタオルまで説明して、後は放っておいた。


 俺たちは、お茶を入れ。

 捕まえたはいいが、どうするか、話をしている。




 少しして、意識が戻った気配がする。

 だが、女神は狸寝入りを決め込むようだ。


 まあ、何かの決まりがあって、現れた瞬間。

 まさか、意識を飛ばされるとは、思っていなかっただろう。


 王たちが、がやがやと入ってきた瞬間。

 女神は、叫び声をあげた。


 バスタオルを、体に巻いただけで、こいつら部屋に戻ってきやがった。


 バスローブを出して、王たちに脱衣所に戻るように注意をする。


「さて。そこでじたばたしている。自称女神さん。お話をしようか?」

 俺がそう言うと、そこから怒涛のような苦情が、女神の口から紡がれた。



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