第81話 謎はすべて…… 深まる

 取り合えず、そんな問答に答えたくはないので、転移して、みんなの所へ帰った。


 起き上がり。周りを見回す。

 すると、テーブルや椅子を出して、バーベキューの真っ最中だった。


「ひどいな。俺の体は、ほったらかしか?」

 俺が聞くと、

「ちゃんと見ていたわよ。でも途中で、フェンがおなかがすいたと、文句を言いだしたから、この状態なの」


 みちよが言うと、フェンが、

「何を言う。お前や、こ奴らも同意したじゃないか」

 と、わとわたしている。


 フェンの頭を、なでながら、

「まあいいさ」

 とだけ、言葉を紡ぐ。


「それで、何かありました?」

 並木君が聞いてくるので、コーラを出してやりながら、答える。


 並木君は、コーラを見て、泣いていた。

「ここから、たぶん1万キロくらいだろう。海の真ん中に施設があって、いきなり問われた『汝の道を示せ』だと」


「伝承とは、違う言葉ね。前は形で、今度は道なのね」

 みちよが、唇の下に右手の人差し指を付けて、考えている。


「そういえば。道はすべてのダンジョンから来ているようで、4本の道がロータリー交差点になっていた」


「それも関係があるのかもね。4つの道と4つの大陸に分けられた4つの種族か」

「どこからきて、何処へ行くのか? 何かでそんな言葉を読んだ気がする」

 と坂下さんが言うと。


 みちよが、

「フランスの画家ポール・ゴーギャンが描いた絵に、そんなタイトルがあったような気がするわ。たしか『我々はどこから来たのか、 我々は何者か、 我々はどこへ行くのか』だったかしら?」


「深い言葉だが。ここでは、ハイヒューマンがもともと生活をしていた。邪神との戦いで、邪神は倒したが、環境が大きく変わったために、それに耐えられる種族を作り出したとか言っていたな」

「そのために、あのシールドなのね」


「だとすれば、答えは何だ? 橋は4つあったから4種族が集まって、手でも取り合えばいいのか?」

「そんな、簡単な事でいいのかしら?」

「簡単でもないさ。つい最近まで、みんながいがみ合っていたしな。集合場所はそれぞれ大陸から1万キロだ」


 それを聞いて、皆がなるほどという顔をする。

「各王を、代表で連れてくるか。冗談みたいな話だが、俺なら簡単だ。今とりあえず俺がすることは、俺も食う」

 おれは、ビールを出して、一息に飲む。



 時間が時間なので、一度ミスルールの拠点に帰った後。

 みちよとフェンを連れて、一度、謎の施設に飛んだ。


 調べると、上はぽつんと海に浮かぶ島。構造は二重式火山島であり。中心にある火口の底に、地上施設があって、地下に謎の部屋がある。


 海底からは、300mほどの高さがあり、海抜は外側のカルデラ外輪部分で500m程度。

 その中にある、施設が建っている内側。

 火口部分が800m程度だろう。

 カルデラ内部には、湖と森が広がっている。


 ただし、ロータリー交差点の下には、なぜか壁があり。

 入ることができなかった。


 謎の島を探索した後、各種族の王都に寄り道して、明日の午後迎えに来るからと言い残し、拠点へ帰る。


 転移して帰ると、なぜか並木君と坂下さんが盛っていた。

 まあ増設してあるゲストルームの方だし、俺たちにも気が付かないようだから放っていくことにする。


 


 探査を終えて、ミスルールの神代さんたちの拠点といわれる場所に帰ってきた。

 神代さんたちが話し込んでいると思ったら、並木君と私は放って置かれて、3人はいつの間にかいなくなっていた。


 しばらくは、気まずい時間が流れていたのだけれど、

「離れ離れになった後。どうしていたの?」

 私は、並木君に聞いてみた。


 すると、ランブル側のダンジョン周辺で探査をして、しばらく強化をしていたこと。

 ある日。変な霧が発生して、それを浴びた兵たちやモンスターがゾンビ化したこと。ダンジョンへ入っていき。

 ダンジョン内部でも、出てくるのがゾンビやスケルトンになったこと。


 やがて、クオーレルに侵攻するからと呼ばれ。

 獣人族側に攻め込むが、裏で糸を引いていた、神代さんに、ぼこぼこにされたこと。 

 そんなことを話してくれた。


「お前は、どうしていたんだ?」

 聞かれて、言いにくかったが。


 勇気に焼きもちを焼かすためにNTRな嘘をつき。

 気が付けば、勇気が離れて行っちゃったこと。

 その後は、魔法か薬で操られ、訳の分からないことになっていたが。

 性奴隷にされていたこと。


 クオーレルに侵攻した時に、落とし穴へ馬車ごと落ちて、拘束が取れ。

 おかげで逃げ出し。

 ここと同じような、神代さんの拠点が、クオーレルにもあって、保護してもらい治療と浄化をしてもらったこと。

 

 その後は、神代さんのお手伝いで、ソレムニティー側で、逃げ出してきた農民たちのお世話をしていたことを説明した。


 最後に、

「私が。あなたを、信じ切れなかったの。ごめんね」

 とだけ謝る。すると、

「俺も一緒だ。ごめんな」

 そう言って、抱きしめてくれた。

 そして、優しくキスも。


 でも。私は、汚れた。

 今もし。

 勇気が許してくれても、あなたの横に立つ資格はないの。

 そう思い、勇気をそっと押しのける。


「どうしたんだ?」

 聞かれたけれど、何も言えず。

 ただ、首を横に振った。


 すると、やっぱり抱きしめられて。

 昔からの幼なじみじゃないか。

 なんで遠慮をするんだ。

 お前が自分の意志で、ほかの男を好きなら、お前の幸せを考えて身を引くけれど。

 そうでなければ、俺は、お前と居たいんだ。


 と、言ってくれた。

 涙が出るほど、うれしい言葉。


「でも。私が、私自身を許せないの……。 どうしようもなく、汚されてしまった」

「そんなものは。急には無理だろうが、忘れてしまえ。体は万世さんの。ハイヒューマンの浄化を受けて、完全にきれいだ。気にするな。あとは、お前の気持ち次第だ。俺は気にしない」

「でも……」

「証明してやる」


 ちょっと、俺たちが居なかった間に。

 そんな、事があったようだ。


 盛っていて、晩飯のにおいに気が付き。

 やっと、俺たちが帰ってきていることに気がついたようだ。

 二人とも、真っ赤になって、もじもじしている。

 

「まあ、赤飯でも食うか?」

 俺は、二人に聞いた。

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