第77話 フェン先生特別講義。世の仕組み

「昔から。魔素というものは、地の中を川のように流れて、火を吹く山から湧き出ていると言われている。本当かどうかは知らんがな」


 一口お茶を飲み、一息入れる。


「ただまあ。前に言ったであろう。獣人族のあがめる、神獣。その中におる鳥。フィーニクスは、火の山の、燃え盛る火口に住んでいる。じゃからうまい」

 思い出したのか、よだれを拭うフェン。


「火を噴く山は、火と共に魔素も噴き出す。……と言われておる。あ奴らはうまいのだよ」

 フェンが恍惚とした表情で、やばい。


 神獣を、食いたくなってきた……。

 みちよやサラスも、よだれが出ている。

 プリメールに言えば、良いですよと言いそうだけど。


「はい。先生」

「なんだね、あつしくん」

 ノリノリなフェン。


「では、火山からエネルギーを取っていると言う事でしょうか?」

 頷くフェン。


「良い答えだと言いたいが、火山はな……」

 たっぷり溜めた後。どや顔でフェンは言う。


「吹き出す所が変わるのだよ。諸君。だから、安定して取り出す事は出来ない。すると自ずと答えは導かれるはずじゃ。のう、みちよ。どうじゃ」

 にんまり笑って、みちよをからかっている。

 フェン。だが、そこまでヒントを出せば、わかると思うぞ。


「困ったわ。いったいどこかしら? 意地悪しないで、教えてくれない?」

 ふふんと腕を組み。みちよを上から見下ろすフェンだが。さっきのみちよのセリフ。すんごい棒読みだったんだが、お前こそ。なぜ分からない?


「仕方のないや……つ」

「ねえ。やっぱり、どう考えてもダンジョンでしょ。一度潜ってみないとだめよね」

 隣に座っているみちよが、俺の肩に手を添え。その上に顎を乗せながら、聞いてくる。

 耳に、息をかけるな。


「しようがない。潜ってみるか」

 そう言って、顔をあげると、フェンが固まっていた。


「先生。と言うことで、各海峡のダンジョンに潜りましょう」

 と振ってみるが。あれ? 復帰しないな?

「放っておきましょ」


 そう言って、拠点にしているテントへ移動をした。



 その後。話を詰めて。獣人国で遊んでいる勇者にも、仕事をさせようと、獣人国に飛んだ。



 ここにきて、もう何か月だ?

 やることは無いし、戦争は終わり、聖国に至っては。滅んだ?


 獣人の王もボケーっとしているし、あのおっさんが、すべて裏で噛んでいるらしいし。俺たちはいったい。何のために召喚されたんだ。


 ため息をつき、ぼやく勇者こと、並木勇気くん。


 すぐ後に、めんどうくさいと言う理由で、肉壁として仕事をさせられる運命を、彼はまだ、知らない。



 そのすぐ後。獣人国の王城に、あつしたちが帰って来た。

 その瞬間。王都に通達が回され、町中に喝さいが巻き起こった。


 3国調印の立役者。

 ハイヒューマンであることも、どこからかばれて、皆の知ることになっていた。


 ばらしたのは、王だけどね。

 調印式の後。

 国に帰ってきて、獣人。ヒューマン。魔人族の、3国統一連合ができたと報告するおりに、宣言をした。

 当然。後で、宰相のプリメールに、罵(のしし)られたようだ。


 その言葉はきつく。

 王は、3日ほど泣き暮らしたとか、噂が流れた。



 何はともあれ。立役者が帰って来たとあって、王都では歓迎の祭りが、催(もよお)された。

 なぜか王都の中心広場にできあがった。ひな壇に、3人が座って祝宴が開かれていた。


「なあ。何か聞いていたか?」

 あつしは、隣のみちよに聞く。


「いいえ。王城に帰ったとたん。攫われて、ここに来たのは、あなたも一緒だったじゃない」

「そうだよな」

 フェンはやっと少し機嫌が直り、目の前で繰り広げられている大道芸を楽しみ。酒を飲んでいる。


「おお。なかなかのもんじゃな。主、あれは戦闘の時に、役に立ちそうな身のこなしじゃな」

 目の前では、数人が組体操かな? 人が台になって、その上に駆け上がるのは、戦闘時の壁を超えるのに使えそうだし、まあ忍者っぽい。ただ身体能力が高い獣人の為。幾人かが手助けして、人を空に投げ上げたり、2人組でつながってバク転をしたりしている。

 確かに戦闘訓練からの、流れはありそうだ。


 でも。あのジャイアントスイングは、どうなんだろう?


 王城から、見える広場での饗宴を、王は城から眺めていた。その下の階では勇者並木くんが眺めており、くしくも同時に言葉が紡がれる。

「「楽しそうだなあ」」



 それ以外の城の人間は、歓迎の祭りを成功させるため、宰相プリメールの指示のもと素晴らしい仕事をこなしていた。



 そして、日が落ちてくると、空には魔法が打ち上げられ。

 かがり火の中。静かな音楽とダンスが催(もよお)されはじめる。この場で出来上がった幾組かの若者カップルは、町の闇に姿を消していく。


 祭りは、若者たちの交流の場にもなっており、一年後ベビーブームが到来するのが流れとなっている。


 完全に日が落ちると、静かに解散が始まって行く。


 当然、主賓はダンスが始まる頃には、王城へ帰る。

 かがり火の中、踊っている人々を眺めながら酒を飲んでいた。

「こういう雰囲気も良いな」

 隣にいるみちよに、声をかける。


「そうね。なんだかみんな、海の中で揺蕩っているみたい。結構ロマンチックな風景ね」

「かがり火が、いい味を出しているな。電気のライトじゃ、明るいだけだからな」


 そんな、雰囲気の中。フェンは酔っ払い寝ていた。


 王都の夜は、静かに更けて行く……。

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