第4章 形を求めて世界放浪

第76話 出発?

 まあ。簡単にはいかないのは、分かっていた。

 今。俺達は、ランパスの、超古代の文明跡にいる。


 クオーレル側から来た、ダンジョン出口。

 目の前には、見えない壁があり、絶賛みんながパントマイム中。


「やっぱり。入れないわね」

 と、みちよがぼやく。

「まあ。一度霊体でも、入れなかったからな」


「フェン。前に聞いた言葉は、どこにあるんだ?」

 フェンに聞くが、そっぽを向きながら、

「知らん」

 とだけ答えた。


「なんだ? まだ怒っているのか?」

 先日。ソレムニティーの王城にフェンを置き去りにして、ミスルールの拠点で、みちよとゆっくりしたので、怒っているようだ。


「ぬっ。それはそれで、腹も立つが。本当に知らんのだ。昔。誰かに聞いた、覚えがあるだけの情報じゃ」


「そうか……」

 少し考えて、魔力をシールドに流してみた。



「変化なしだな」

「どうしたの?」

 みちよが、聞いてくる。


「いや。ハイヒューマンに反応するかと思って、魔力を流してみたが、変化なしだな」


 それを聞いて、みちよが手を打つ。

「ひょっとして。ねえ、ミスルールのランブル側の岬に、遺跡があったじゃない」

 言われて、思い出す。

「ああ。あの、やばそうな煙が、出てきたところか?」


 みちよは頷きながら、

「そうよ。あんな形の、ゲート管理室みたいなのが、あるんじゃないの?」

 なぞは全て解けたと、言わんばかりの、満面の笑みだ。


「うーん。周辺を探してみるか」

 とりあえず、時間がかかりそうなので、一旦ミスルールの拠点に帰り、出直すことにする。


「やはりここが、一番落ちつくのう。主」

 フェンは満足そうだが、鼻をひくつかせている。


「だが。しばらくよそ者が来ていたせいで、多少匂うのお……」


 フェンは、こちらを向くと。いきなり、

「おい、みちよ。10回ばかり浄化しろ」

 と言い放つ。


「何よ。偉そうに」

「お前は、他人の。この匂いが気にならんのか?」

「ああ。フェンは鼻がいいからな。どうしても、大勢人が暮らしていると、匂いが残っているのだろう」


 言われると、気になるな。

「俺からも頼む。この辺りを、浄化してみてくれ」


「仕方がないわね」

 と言って、かなり強力な、浄化魔法をかける。


 一帯が、光に塗りつぶされた。

 おお。すごいな。

 光の粒が、キラキラと天から降って来る。

 思わず光の粒を受けるように、手のひらを上に向け。

 光の粒を、すくおうとしてしまった。


 その姿が、面白かったのか。

 みちよ達が、くすくすと笑っている。


「どうした?」

 と聞くと。

「そんなに喜んでくれるなら、うれしいわ」

 と言いながら。ぎゅっと抱き着いてきた。


 慌ててフェンも飛びついてきて、光が消えていく残滓を眺めた。

「さてフェンも満足かな?」


 少し鼻をひくひくさせていたが、

「フン。まあよかろう」

 とだけ答える。


 家の中へ入り、久々の生活を楽しんだ。

 さっきの浄化魔法のおかげで、多少くすぶっていた、家の中も奇麗になっていた。



 翌日。ランパスに行く前に、各王に聞いてみたが、知らないようだ。


 今日は。ランパスのランブル側に来ている。


 シールドは同じ状況だから、外を確認する。


 港に遺跡があったのだから、ダンジョンは、昔の移動用の通路が、遺跡になった可能性が高い。そう考えて、ダンジョン側から、遺跡を地道に探していく。


 今回は、おバカなことをしないように、フェンに言い含め。

 サラスも監視用に連れてきた。

 これでフェンが馬鹿なことをすれば、止めてくれるだろう。



 みちよと二人で霊体となり、怪しそうな出っ張りに突っ込んでいく。

 やはり遺跡は至る所にあり、潜ってみるが、海に対しての施設のようだ。


 一度体へ戻り、相談する。


 今回は、遊ばれていなかったようだ。


 サラスが、シールド? のエネルギーとか、発生させる魔道具があるのではないかと言い出して、俺は目からうろこ状態だった。


 何千年もの間、張られているシールド……。

 それなら、そのエネルギーはどこから? なんて、そんな事は、最初に考えるべきところだ。

「サラスは、すごいな」

 と思わず、頭をなでる。

 サラスも笑顔で、目を細めて赤くなっている。


「なあフェン。何千年もの間。強力なシールドを張るためのエネルギー。何から得られると思う?」

「んっ」

 頭を突き出して来る。フェン。

「はいはい」

 と言って、頭をなでる。


「こほん」

 と一つ、咳払いをして、

「まず最初に。何処から安定して、膨大なエネルギー? なるものを得るかということだが、順に考えても。安定してというのが曲者じゃ」

「安定的にか…… それは確かに。空気中の魔素か?」


 ちっちっちっ。と左右に指を振るフェン。そんなこと、どこで覚えた。


「このくう? 周りにあるのは、なんじゃったかな?」

「空気?」

「そうそう、それじゃ。その空気に含まれる魔素は斑(むら)がある」

 どこからか取り出した、指示棒で手に平をピシッと打つ。


「空気は、この世界全体を流れており、山があったり谷があったりする。そこで流れにより斑ができてしまうのじゃ。あのシールドとやらを張り続けるのに、エネルギーの斑があっては、調整しづらいのはだめじゃろう」

 めっちゃ。どや顔のフェン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る