第78話 とりあえずダンジョン
並木君を捕まえ。
ついでにソレムニティー王国に寄って、坂下さんも捕まえる。
エネルギー経路を考えて、ランパスの超古代の文明跡からクオーレル側に向けて、ダンジョンへ潜ってみる。
「並木君は、幾度かダンジョンに入ったのだろう」
「ミスルールから、ランブルに繋がっている所と、獣人族領に行くために、クオーレル側にも入った」
「じゃあ、並木君に案内を頼もう」
俺がそう言うと、いやそうな顔をした。
「ミスルールからランブルに繋がっているダンジョンが、なぜか途中から、ゾンビとか。モンスターまでゾンビになっていたからな。あいつら光魔法が無いと、倒すのが面倒くさいんだよ」
並木君が文句を言っている。
だが、それよりも俺は、途中からゾンビの言葉に引っかかった。
「最初は、普通のモンスターだったのか?」
「そうなんだ。一度、岬の方角から黒い霧が出てきて、そいつがダンジョンに入るとダンジョンの中身が、ゾンビだらけになったんだよ」
俺は、みちよ達と、顔を見合わせる。
なんだろう黒い霧。覚えがあるなあ。
ちょっと、遠い目をする。
とりあえずここは、現実逃避。
どうせ行かなきゃいかないが、最後に回すことに決定しよう。
「まあ、ここは大丈夫だろう。とりあえず行こう」
半ば強引に、皆を押し込む。
当然先頭は、勇者である並木君だ。
中に入り。少し進むと、暗くなってきた。
「さすがに設備は、生き残っていないのか。どこかに操作用のコンソールは無いのかね?」
きょろきょろと探す。
見た感じはトンネルだな。
そうすると操作系は外にあったのか? 今更だけど。
「ライト」
みちよが、唱える。
内部は見えるが、普通のトンネルのように、配線を露出させるようなことにはなっていない。保守性を無視してか、文明が進んでいたために保守など必要が無かったのか。
「これは。裏側にでも、保守用通路でもあるのかね」
そう言って見回すが、側道への入り口も見えない。
こまったね、こりゃ。
「とりあえず、先へ進もう。モンスターの気配も、今のところないから。どんどん行こう。もし、入れそうなところがあれば、確認しよう」
「モンスターが居ないのは、どうしてでしょう」
坂下さんが口を開いた。
最近慣れてきていたが、今回は並木君がいる事で、緊張しているのか? いや最初に来た時に盛っていたな。
元カレと久しぶりに会ったと言う事と、ミスルールで彼女がさせられていたことを並木君が知っていると考えれば、ぎくしゃくもするか……。
「まあ。今いるのがランパス側だからな。なにか魔物除けの効果が仕組まれているのかもしれないし、心配しなくても。クオーレル側に近づけば増えて来るだろう」
少しおどけて俺が言うと、
「別に、出てきて欲しいわけじゃありません」
そう言って、少し頬が膨れた。
顔は笑っているけどね。
うん? そんな様子を見て、並木君が驚ている。
まあいい。
久々に会った。
妙子の雰囲気が変わっていた。
昔からの幼なじみで良く知っている。
ガキの頃から可愛かったために、周りからもてはやされ、クラスでは、かなり我がままで浮いた存在だった。
中学生頃にはプライドが高いだけの、性格ブスになっていた。
それでも。俺には昔と同じで、あたる事もなく。
ここに来るまでは、懐いていた。
召喚された晩。さすがに不安だったのか、俺に甘えてきて一線を越えた。
だが、数日で関係が終わってしまった。
廊下で、これからの予定を、修道女に聞いていたのを見たらしく。
問い詰められた。
だが、予定を聞いていただけだと説明しても、聞き入れられることはなかった。
そして、当てつけるようにあいつは。
顔のいい兵士と関係を持ったようだ。
散々。彼はすごいい人で。
あっちもすごいの。
そんなことを言って、俺にのろけて来やがった。
当然、そんなことを言われれば、俺もとなり。
手近な、修道女と関係を持った……。
その後は。
あいつが、わがままを爆発させ。
奴隷にまで、落とされたと聞いていた。
でも、今のあいつは。
まるで、小学校の低学年の時のように。
かわいい、素直な時に戻っているようだ。
特に、ぷくっとほほを膨らませて、その後。
嬉しそうに笑うそれは、昔見たあいつの癖だ。
小学校の高学年。
その頃に、クラスメートの女子から、男子の気を引くための。
いわゆる、あざとい行為と言われて、することが無くなっていた。
神代さんたちに、手伝えと言われ。
半分拉致されてくると、そこに勇気がいた。
かれは、代えがたい私の幼なじみ。
小学生時代から、周りの女の子に疎まれていた私を、たびたびかばってくれていた優しい彼。
こっちに召喚されて、甘える私に優しくて。
半ば、私から彼と関係を持った。
子供のころから、待ち望んだその時。
私は、天にも昇るような気持ちだった。
でも。すぐに彼が、修道女に声をかけて関係を迫っていると、たまたま、すれ違う神官や修道女が噂をしていた。
そんなことないと、思った矢先。
楽しそうに修道女と話をする、彼を見てしまった。
その瞬間頭に血が上り、彼に裏切られた絶望感が私を襲った。
そして、私がほかの男といちゃついているところを見れば、彼はやきもちを焼いて戻って来てくれるかしらと行動を起こしてしまった。
口では、いろいろ言ったけれど。
そんな関係は持っていなくて。
彼にやきもちを焼かせたい。
あの時の私は、それしか考えていなかった。
でも、結局。
彼はやきもちを焼くのではなく、離れて行った。
その後。
すべてのものから、拒絶されたような気になり。
落ち込んでいた私に、優しくしてくれた神官。
そいつが突然豹変。
私は強引に襲われた。
そのとき、何か。
魔法か薬を使われたのだろうと思う。
その後。私はひたすら快楽を求めるようになった。
いや、私にとっては、人と触れ合うことで、その時だけは、必要にされていると感じられた。
それ以外の時には、なぜか考える事が苦痛で。何もかもどうでもよくて。
夜になれば、彼らに呼ばれる。
そんなことが繰り返される日々。
そして、それも終わりが来る。
その後。とってもひどい日々が始まった。
口々に言われた。
「お前はひどい奴だ」
「だから罰を与える」
そう。私はひどい人間。
だから、罰を受けるの……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます