第74話 宣誓と新たな歴史

 それから、食事を頂き。

 翌日、獣人族から魔道具の映像装置を借り受け、各国に設置。


 ソレムニティーの王城のテラスから、3人の王が集まり、連合共和国建国の宣誓を行った。


 これは、宣誓書にビビった王たちが、交流では危ない。

 もう。国を一つにしてしまえと、はっちゃけた結果である。

 各王は、種族の代表という地位に落ち着いた。

 その上に、官位は置かず。平等であると決めたようだ。

 


 すぐに各王都には、ゲートが設置され、市民証が発行される。

 それを持つものは、ゲートの認証を使って、移動ができるようなった。


 さて、交流が始まると、焦ったのが魔人族。

 ヒューマンは農作物と工作物を出荷できる。

 獣人族は意外なことに魔道具が進んでいる。


 そこで、困った王。

 パズズが、泣きついてきた。


 そこで、ジュスティーツィアと相談して、何か名産を見つけろと指導後。

 シーサーペントに頼んで、追い込み漁を手伝わせることにした。

 しばらくは、海産物で交流をしろと伝え、製氷機をプレゼントした。



 聖国側の保養所に残っていた人々も、体調がよくなった人たちから、順にソレムニティー側の集合住宅に送る。

 そこで畑の手伝いなどに従事して、人々と交流。

 慣れれば、開拓地へ入っていく。


 一連の流れはできている。

 ほかの、手に職があるものは王都の近くに、一軒。

 集合住宅を作ってある。

 ここは、家族でも生活ができるように、マンションをイメージして作ってある。


 聖国側の保養所に残っている人々が、居なくなれば、元の隠れ家に戻して、ランパスの、超古代の文明跡へ探査に旅立とう。




 私は、聖都で神父を務めており。

 二人の修道女と共に小さな教会と、小さな児童保護施設を管理していた。

 だが、獣人族領への遠征が始まり、それが長引きだした頃から、徐々に街中でも食料の不足が見え始めた。

 すると、まるで潮が引くように街中の食料、特に小麦等の穀物は姿を消して、わずかな物が高値で取引されるようになった。


 さすがに、傷みやすい葉物や肉類は高値にならないので、何とか子供たちに食事を与えることができていた。


 だが、教会の上は、さらに兵を送るようだ。

 なけなしの物資を、兵糧として供出させるようになる。すると……それこそ、何もかもが、消え失せて行った。


 仕方なく、直接。

 近隣農家に赴き、何か売ってもらえるものは、ないかと尋ねて行ったが、近隣の村は、廃墟が広がるばかり。

 たまに人影が見える村には、柱に縛り付けられた人々。

 近づくと、すぐに兵士がやって来て、「こいつらは村から逃走した者たちだ。見せしめのために行っている。文句があるなら教皇様に言うんだな」と追い返された。


 仕方なく。

 教会に、修道女を一人残し。

 樹海へ入る。

 木の実や果物。小動物を探して回った。


 それでも、そんなものは、いつまでもありはしない。


 見る見るうちに、子供たちもやせ衰え。それを見て、何とかしようと思うのだが。もう、体が言うことを…… きかなくなってきている。私たちも…… もう、何日も水のみ。そんな生活を、しているのだから……。


 手立てがなく、必死に拝んでも、女神は何もしてくれない。

 そんな思いが、心に浮かびだした頃。

 夜半に知り合いの商人が訪ねてきた。

 この商人は、何とかして子供たちに食料を確保しようと、最後まで尽力してくれた方だ。


 私たちの様子を見るなり、「女神を信じて死にますか?」と、とんでもないことを言ってきた。

 私も少し前なら、世話になったこの方。

 それでも、投げかけられた、その言葉に対し。怒り。狂ったように説教をしたことだろう。

 だが、私は。いや、私たちは、そんな時期は、……疾うに、過ぎていた。


 怒る気力も、女神様への期待もすでになく。

「御覧の有様です。子供たちも、私たちも。いつ命が無くなるのかを、指折り数える状態。神父の私が言うのも、なんですが。このような状態でも、……女神が手を差し伸べてはくれません。自身や子供達。道に外れた行いの記憶も。ありませんのに。……おかしいでしょう。……無辜(むこ)の子供たち。命が消えようとしているが。私には、黙って見送るしかできない。……私には。……何の力も、ありません」


「じゃあ。決まりですね。その服を脱いで。ああと、修道女の方も、こちらに着替えてください。子供たちも、こちらに連れて来て、一緒に神の国へ向かいましょう」

そう言い残して、出て行ってしまった。神の国へ? 一緒に? 油でも持ってくるのか?


 その言葉を聞いて、私はきっと、この男も終わりを感じ。

 私たちと一緒に、自死するつもりで誘っているのだと思った。

 教会に仕える者にとって自死は禁忌。

 だから着替えろと。


 修道女達も、もう恥じらいもせず。着替える。

 着替え終わると、奥に向かい。歩いて子供たちを連れに行く。


「神父さん。どうしたの?」

 痩せ細り。目の周りがくぼみ、ひたすらぎょろついた目で、聞かれる。

 だが、何とも答えられず。

 ただ抱きしめる。

 この手で、苦しまずに終わらせるべきか?


 そんな自問をしていると、少しして、男が帰ってきたが。手ぶらだ。

 私は首をひねる。


 すると、すぐ後にもう一人男が入ってきて一言。

「これはひどいな」

 とだけ、声を漏らす。


「あなたが、神父さんか?」

「そうです」

 と答えると。


「女神を、捨てられるか?」

 と、にやっと笑いながら、聞いてきた。

 もしや、人買いかとも思ったが、もう何でも良いと、言葉を紡ぎ。

「救いはありませんでした。捨てます」

 と答える。


「そちらの、修道女さんたちはどうだい?」

 と聞かれ、彼女たちも、こっくりと頷く。


「よし。じゃあ行こう」


 わたしは、やはり自死の誘いだったかと。

 子供を抱きしめ、目を閉じる……。

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