第72話 ソレムニティー王との話し合い
席に座ると、グラスに白ワインか?
「どうぞ。食前酒としてヘレスです。多少酒精がお強いので、ご注意を」
執事らしい男が、説明をする。
軽く口を付けると、シェリー酒ぽい。
フェンは、がばっと一気に飲んだが。大丈夫か?
「前菜でございます」
色々な物が、少量ずつ乗っている皿が出て来た。
イタリアンか? 前菜と言うよりおつまみだな。と思ったら、もう一枚出て来た。
「どうですかな? お口に合いますでしょうか?」
「そうですね。野菜もなかなかフレッシュだし、これはハムかな?」
「獣肉を塩で漬けて、2年以上かけて熟成しております」
また執事さんが、説明してくれた。
「おいしいですね」
「それは良かった」
王もうれしそうだ。
フェンはがつがつ食っているが、まあいいか。
みちよは、さすがに静かに食べている。
「ワインは、どうかね」
「いただきます」
「メインは、お肉ですので、こちらを」
執事が、赤のワインを持って来た。
どぼどぼと注ぐと、香りが立って来た。
ワインを味わっていると、王が口を開いてきた。
「カミヨ様。非常にぶしつけな質問だが、良いだろうか?」
まあ。聞きたいことは分かる。
「私の正体でしょうか?」
「これはこれは、話が早いが。申し訳ない。兵からの報告を、聞けば聞くほど普通ではないと。確信しております」
「隠してもいないので、特に問題はありません」
もう一口ワインを飲んで、説明を始める。
「我々は、別の世界から召喚されたものです。聖国で、勇者が使わされた話は御存じでしょうか?」
「うわさでは聞いている。ランブルに続く、ダンジョン辺りで、勇者らしきものが長い間、修行していたと話が上がっている」
「歓談中失礼いたします。第一のお皿でございます」
スープとニョッキのパスタか?
「それでだ。その勇者たちと一緒に来たのが、そこにいる万世さんを含めて3人いる。それで俺も一緒には来たが、俺は別の神に使わされた」
スープ? を一口頂く。ほう、トマトがあるのか。
赤いから、唐辛子かと思った。
話を続ける。
「言いにくいが。女神は、ほかの世界を司る。神々を怒らせた。それで、俺が使わされた」
ガシャッと、王がナイフを落とす。
「ああ。失礼した。それではあなたは?」
「ハイヒューマンだ」
言った瞬間。王は固まり、百面相している。なんだよ、そのガーンと、効果音の響きそうな顔は?
「まことでしょうか?」
笑いながら答える。
「まことです」
フェンとみちよが、くすくす笑っている。失礼だよ。
がばっと、一気に、ワインをあおる王。
「いや。想像の範疇を、超えていました」
「それで、王にはお願い事がある。あす、獣人の王と魔人族の王を連れて来る。3種族で手を取り合っていただきたい」
さらに言葉を重ねる。
「どこも、大した理由などなく、交流をしていなかったようだしな。会って話せば、仲良くできるだろう」
少し思案をして口を開く。
「そうですな。他の種族との話し合いなど、記録にも残っていないほどですからな。ハイヒューマンのカミヨ様の仲介で、交流するのも正しい道なのでしょう」
含みを持った感じだが、まあいいだろう。何かあれば守ろう。
「失礼いたします。第二のお皿でございます」
少し小さめのステーキ。牛ぽいのとチキンぽいのが2種類乗っている。
切り分けて脇のソースで食べてみる。うん? このソースは、ワサビを使った物か?
「ほう。うまいな」
「ホースラディッシュを使った、ソースでございます」
執事が説明をしてくれる。
「こっちにもあるんだな」
「ホースラディッシュをご存じですか?」
「俺たちの世界。いや国で、ワサビ大根とか、セイヨウワサビと言われている」
「カミヨ様たちの住まわれていた国は、どのような所でしたのでしょうか?」
「魔道具や魔法はないが、他の技術ならば、200年から300年は先に行っている。道具を使い空を飛び、超高層の建物が建っている。この世界の人が見れば夢のような国かもしれん。ここで使われていた電話。通信用の装置は150年くらい前の技術かな」
「なんと。そうでございますか」
ううむと、王が考え込んでしまった。
その間に野菜やチーズなどが運ばれてきて、それをつまみながらワインを飲み。すっかり酒宴のようになってきた。
デザートが来る頃には、みちよは真っ赤になっていた。でもデザートは食べるのね。
食事も終わり、王に念押しをする。
「いや。すっかりごちそうになってしまい、ありがとうございます。確認ですが、明日も、今日来た時間位でよろしいでしょうか?」
「そうですな。ただ他国の王をお迎えするのに、門の外でと言うわけにもいきますまい」
「どちらか、使っていい部屋があれば、そちらに連れてきますが」
「それでは、控室をご用意いたしましょう。おい」
「はい。どうぞこちらへ。ご案内いたします」
「それじゃあ。今日は、ありがとうございました」
と言って席を立つ。
おいフェン。
手酌は行儀が悪いぞ。
ビンは置いて行け。
酔っ払い2人の腰に手を回し、エスコートと言う名の、強制退去をする。
「こちらでございます」
中は調度品がおかれた、落ち着いた部屋だった。
「じゃあ。明日はこちらに直接お邪魔します。今日はありがとうございました」
と言って、転移をした。
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