第71話 ソレムニティー王のお誘い

 あつしは、ミスルールの拠点に戻り。様子を見る。


 とりあえず、ここにこれた人々。


 そう、すでに農民だけではなく、商人や兵士。

 牧師や修道女も来ている。

 だが周りの人たちからの話を聞き、ある一定の評価を受けてなおかつ、素直に助けを望み。手を取ったもの達のみ。


 これ幸いと、物資をため込んでいた奴などは、ここにはいない。


 体調や状態をみちよに聞き、元気になった人たちから、ヒアリングを行い、これから先の相談に乗る。


 無理に農民をさせてもしようがない。


 ただ、牧師などは、職を放棄させた。

 だが放棄させたのは女神への祈りのみで、大量に出た孤児の為。

 保育施設や学校を、運営させる予定にはしてある。

 なぜか、金は大量にあるしな。


 ソレムニティー側の宿舎へ移動して、手伝いや、世話をしてくれている元農民や、賢者。

 ……えーと。坂下さんにも話を聞く。


 こちら側には、比較的元気な人を送ったため、問題はないようだ。

 家族と無事巡り合った人も、大量に居るらしい。


 孤児を作ったのは、俺かもしれんから、フォローはしないとな。

 今になって、クオーレル側のダンジョン出口で、撃ち込んだ魔法が悔やまれる。


 そういえば、荷物も見せないと。

「坂下さん。自分の荷物はあるかな?」

 目の前に取り出す。


「ええと、これがそうです。どうしたんですか?」

「聖都の教会に行って持って来た。あそこはもう、廃墟だからな」

「そうなんですか? ありがとうございます」


 そうしていると、兵士が一人やって来た。

「ひょっとして、あなたがカミヨ様でしょうか?」

「ああそうだ」


「やっとお会いできました。お手すきになればで、結構ですので、王がお会いしたいとの事です」

「うーん。今晩で良いか?」


 何かメモを取り出し、目を通すと、

「はい。あっ夜でしたら、夕食に合わせてこられた方が、うれしいとの事です。それとお仲間の方も来られるようでしたら、ご一緒にどうぞとの事です」

 と、兵士が伝えてきた。


 受け答えの、メモがあるのか。


「分かった。夕方に伺おう」

「お迎えは、どういたしましょう?」


「気を使わなくていい。王城の前まで、転移で行く」

「承知しました。よろしくお願いいたします」


 そう言い残すと、兵士は嬉しそうに帰って行った。

 何時から探していたんだろうか?


 うんまあ。一緒に行くのは、みちよとフェンで良いか。


 王に会うなら、商人たちの要望と、孤児院と学校についてお願いしよう。




 夕方。みちよとフェンを連れて、王城の、門の前に転移をする。


 その姿を見た兵たち。

 一人が慌てて、門の中へ駆け込んでいく。

「王様から招待を受けているカミヨだ。取り次いでくれるかね」

「はい。お待ちしておりました。ただいま、案内が参りますので、少しお待ちください」


 と言った兵だが、なんだかそわそわしているな。

 どうしたんだろう?

 ああ目線が。そうか、みちよとフェンのせいか。


「カミヨ様。お待たせいたしました。ご案内をさせていただきます。私、宰相を務めさせていただいております。プレミエと申します」

「よろしく。神代篤司と申します。こちらが、万世導世と、こちらがフェンだ」

 二人も紹介する。


「これはこれは。ご丁寧に。お二方も、よろしくお願いいたします」

 そう言って、宰相は握手を求めて来る。

 特に思う所もないので、順に応じる。


「それでは、まいりましょう」

 歩き始めた宰相に、ついて行く。

 横に居た兵士は、鼻の下が伸びているが、良いのか?


 中に入ると、うん。

 何というか、普通の城だな。

 変に華美なところもないし、好感が持てる。


 突き当りの、狭い部屋に入り、全員が入ると扉を閉めて、宰相が扉の脇にある石に、魔力を送る。


 静かに、部屋が上に上がっていく。

「ほう。魔道具の昇降機があるのか?」


「カミヨ様が、昇降機をご存じな事に驚いております。これは、数年前に開発されたもので、多くは出回っていないはずなのですが」

「詳しくは、王に会って話そう」

「そうで。ございますね」


 すぐに到着して、宰相が扉を開ける。

「アコーディオンドアのエレベーターだと、昔の映画のようだな」

「そうね。でも工事現場とかで、こういうの見たことがあるわ」

「ああ、あるな。資材用のロングスパンとか、言うやつだな」

「なんで、そんな名前を知っているの?」

「大学の時に、ちょっとバイトをしていたんだよ」

「お給料が良かったの?」

「そう。あの夏休み。一月は辛かった」


「こちらでございます。どうぞ」

 バカな話をしていると、宰相がドアを開けてくれる。

「ああ。ありがとう」


 部屋に入ると、奥に座っていた男が、立ち上がり迎えてくれた。

 彼が王なら、好感が持てるな。

「カミヨ様。ソレムニティーの王。トゥラン・ク・イリティー・ソレムニティーと申します」

「初めまして。神代篤司と申します。こちらが、万世導世と、こちらがフェンです」


 正式な挨拶は分からないので、二人はお辞儀をする。

 俺は、王と握手中だ。


「さて。カミヨ様には、この国として、多大な恩をいただいて。お礼の申しようもない。大した事は出来ないが、せめてもの食事を楽しんでいただきたい。それと、多少歓談を、楽しもうではありませんか」

「それは、こちらもありがたい申し出ですね。ありがとうございます」


 なぜか王は、正面に座った。普通。王はお誕生日席じゃないのか? まあいいけど。

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