第69話 農民を根こそぎ頂く

 俺たちは、ミスルールの拠点に戻り。

 みんなを、ソレムニティー王国が、受け入れてくれることを伝える。


 5人ほど残っていた、農民たちは喜んだ。

 今晩から。早速、彼らの住んでいた村の、近隣も救済しに行くと、張り切っている。


 俺は農民から、おおよその場所を聞き出して、意識を飛ばし、様子を見に行く。


 農民たちが逃げ出してから、30日近くが経っている。


 兵たちもバカではないから、何らかの対応をしていることは予想される。


 村は、出るときに火を放ったらしく、焼け落ちている。

 静かな雰囲気だが、周りを窺うと……。


 兵士が、馬を連れて潜んでいるのが分かる。

 農民が、どこか近隣に潜んでいて、荷物でも取りにくれば、捕まえようというはらか。


 と、いうことは、近隣の村にも、警戒と監視が付いている可能性があるな。


 農民たちは、畑の草を取ったり忙しくしているが、家の中から外を見張っている奴が、村の入り口の家と、出口側に一人ずつ。

 ここは、少し離れた山の中に、馬が繋がれ、餌と水の桶がおかれている。


 さらに周辺を調べると。

 ある村には、丸太の杭が立てられ、それに括り付けられた農民が、20人ばかり道沿いに立っていた。

 当然。遠くの陰に、5人ほどの兵が見張っている。


 慌てて調べると、杭の立っている村は、近隣でも5か所以上あり、そのうち2つは、くくられた村人が息絶えていた。


 それを見た俺は、腹が立ち。

 聖都周辺をくまなく調べ、マップを作成した。

 だが近郊だけでも、一つの村で、200から300人の農民が居る。

 農業が機械化などされておらず、必然的に人数が必要となる。

 聖都周辺全体では、1万人を超えていた。


 どう考えても一度には無理だ。


 括り付けられた住人のいる村と、飢え方のひどい村。

 病気に罹患している村を、ピックアップして、順位を決める。

 その後、体に帰ると、再びソレムニティーに飛ぶ

 デレクタゼラルを捕まえて、山脈の下に、大規模な難民キャンプを作る許可をもらう。


 前回造った10軒宿泊施設を、10棟建てても800人。

 もっと建てたいが、手が足りない。


 焦っても、一度には絶対無理だ。

 我慢しよう。


 助けた村人に、手伝ってもらい、救済の人数を広げて行こう。


 まずは、危機的状況の人たちが、優先だ。


 みちよ達にも、状況説明して、手順を確認する。


 まず俺が飛び、見張りをすべて気絶させる。


 すぐに戻り。

 今度は、みんなを連れて救助に向かう。


 そして、一度戻り。

 病気とけがを治療して、手伝いの村人の男女。

 2人に、風呂と着替え、食事の案内を頼む。

 その間に、次を助けに行く。


 聖都に近い所から、外側に向けて助けていく。


 朝までに、1000人近くを助け、元気そうな人たちは、ソレムニティー側のキャンプに送った。


 見張りたちの馬もいただいて、ソレムニティーに送った。


 馬を失った、見張りからの連絡は、そこそこ時間がかかると思いたい。

 気持ちばかりが焦るが、慌ててもしようがない。



 聖都 ……3日後。

「大変です。周辺の村が。人が居なくなって……」


「何を慌てておる。それに、報告は正確に行わんか」


「はい。周辺の村から、住人がすべて消えました」

「ああ。逃げ出したとか、死に絶えてしまった報告は受けておる。農民なんぞなんぼでも増える。よそから回せばよかろう」


 平然と言い放つ、司教。


 引きつりながら、報告を続ける司祭。

「それが、どうも近隣の町にまで、広がっているようでして」

「逃げたのなら、捕まえればよい。幾人かを、見せしめにすれば、収まろう。わざわざ雑事の報告は必要ない」


 さらに引きつる司祭。

 そんなレベルではないと、叫びたいができない。

「はい」

 そう言って、下がる。


 兵に、農民を何としてでも探せと、命令を行う。

 すでに、街道という街道に、検問を設置していたが、それでも防げない農民の流出。検問の設置。それだけが、できる手立てであった。




 ソレムニティーの、開拓された土地は、急遽きれいに区画が切られ、働き手の人数に合わせ、大中小を選べるように決めた。

 作付けをする作物の、種類も選択できるようにした。


 いくつかの区画ごとに、家を建て。住人が、それぞれの手が空いているときに、手伝いをしやすいよう。

 あっせんしていく。


 収穫ができて、安定するまでは、食料の配布を行うようにして、それも手の空いている農民の仕事とした。

 ミスルールから頂いた馬が、非常に役に立った。


 そして、重病者たちや、状態のひどい者たちは、宿舎で療養させる。




 両方での、整備のおかげで。

 収容できる人数が増えた。


 そのため。

 一気に、救済という名の農民さらいを行った。


 おおよそ一月で、計画は完了して、生きていた農民は救済で来た。


 だが最後の方は、ほとんどが殺されたり、餓死していて救えなかった。


 それは様子を確認して大丈夫だと思った所に、兵士だか盗賊だかわからない奴らが現れ、非道を尽くしたからである。


 兵士が潜伏して、見張っていたはずの所でも、行われていたから、そう言うことだろう。



 一方。

 クオーレル側に、詰めていた兵たちも、兵糧は届かなくなり、獣や木の実を採取していたが、日に日に動けなくなる人間が増えてきていた。


 教会関係者が、優先的に物資を取るため。

 徴兵された、農民や商人は食料もなく苦しんでいた。


 そこに噂が流れ始める。

『集え。助けてほしくば、自身の信じれるものだけを誘い。村の教会へ夜12時に集え』

 と言うもの。


 苦しんでいた、農民たち下級兵士は、仲間に誘われて教会に集まる。

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