第49話 そうだな、まずは壊そう
「やはり。堀は川からの水を引き込み、内外2重の堀を水が流れている。川の引き込み部分と出口の、外壁部分はどうなっている?」
「はっ、壁を水面ギリギリまで作り、水中は金属と木を使った柵で蓋をしています」
「よし。壊そう」
「はっ?」
「壊して、荷受けと積み替え用の船着き場を作る。つまり出っ張り部分を作ってその中で作業をする」
「壁の一部だけを押し出して、防衛的には大丈夫なんでしょうか?」
五稜郭の図を描きながら、
「本当はこういう方がいいんだよ。簡単な図だから設計が甘いけど、死角をなくすという点で考える。それと、何ならとがった部分の内側は埋めてしまうと、強度が上がる。建築物として考えても丸よりは三角の方が強い」
「おお。確かにこれなら。どの方向にもにらみが効きますな」
「それと、中へ入る道は、絶対まっすぐに造らない事。クランク状に曲げる。そして壁を築いて、両側から弓でも撃てばいい」
「そうか、城門を抜いたと雪崩れ込んでも、曲がった道の先に、また城門があれば、破城槌も大きなものは使えませんな」
「どっちにしろ。この王都のような、ヘロヘロな壁じゃ話にならん。カタパルトで撃ち出された、でかい石でも食らえば一発だ」
「ぐっ。すみません」
「それと、堀の船と店の裏側。荷上場も木で造り、敵が来たら燃やせるようにね。宰相さんにお願いした、住所のデータはさすがにまだだよね」
「未だ連絡を、受けておりません。もうしばらく、かかると思います」
「じゃあ、とりあえず。ここまでの部分を詰めておいて。それと店の候補場所と造る前から、ここに店を造ると宣伝をしておいてください。品目は市場で売っている物全部」
「市場は、どうされますか?」
「ほっといても、多分そんなにしないうちに無くなるから、市場で働いている人に店を建てるから、そこに入らないか一応誘っておいて。それと、品物の買い付けと店への配達のための人間も確保。その人件費や購入費用は、出店する店から売り上げを一定割合でもらうか、仕入れ値に少し上乗せだね。売値は少し高くはなるけれど、市場の状況にうんざりしていれば買うでしょ。だけどまあ、大量に買うからと言って、生産者と話をして、安くしてもらうのもいいかもね」
一応一通りの話が終わったので、まだ寝ているフェンを抱えて、本来用意された部屋へ移動をする。
ここでも、部屋付きのメイドさんがいて、お茶を用意してくれた。
「ねえ。さっきの話って、スーパーマーケットだよね」
「まあ。品目に武器とか農具まであるからな。ただ最初に頭に浮かんだのはコンビニだったんだよ。なんだか恋しくて」
「そうよね。よく行っていたもの。ふふっ、まさかこんな所で生活するなんて、考えもしなかったわ」
「ほんとになぁ。……普通の会社員を、管理者にとか言って、異世界に放り込むなんてなあ。多分そろそろ係長とか、そういう話なら喜んで受けたんだけどな。女神を部下にして教育しろだなんて……なあ」
「ふふっ、びっくりよね。それに比べれば、勇者なんて些細な物ね」
「まあ、彼も頑張っていたようだがね」
「最近は、見に行かないのね」
「体を無防備にすると、いたずらする奴らがいるからな」
「あら? どこのどいつかしら?」
「さあ? 誰だろうな」
「カミヨ様。情報が集まりました」
「見せてくれ。……やはりというか。まあ当然だよな。住んでいるところは、まんべんなく散らばっている。多少偏りがあるが、ここは何があるんだ?」
「工作物を作っている。職人街でございます」
「じゃあ。そこで使用される、品物は分かるだろう」
「刃物や、その他染料とかも、使われますな」
「そうだ。なるべくそういうものも、職人から聞き出して、店にそろえるようにしてくれ」
「それと、防壁には上部に通路を作り、壁は人が隠れる程度の高さを取る。各所に狭間(さま)を作る。魔法を撃つには、どのくらいの大きさの穴がいいか確認をすること。弓に魔法を乗せることはできるのか?」
「魔石が必要ですが、得意な職人が居たはずです。それでカミヨ様、狭間とはいったい?」
「狭間は、攻撃用の穴だ。外側は小さく作り、内側は可動域を取って、攻撃範囲を広くとる」
「なるほど。攻防一体の仕組みですな」
「それと、馬車専用道路は、金がかかりすぎるだろう?」
「ええ、実はまず外壁の改装を優先として、かなり人手と経費が必要で困っています」
「ああ防御を考えると外壁が優先だな。ただまあ、今の壁を利用して、外側に肉盛りして、でっぱりを作れば経費も削減できるだろ。それにレンガじゃなく石を持ってきてもいい」
「大きな石は、運搬も大変で」
「それの道具も教えよう。石の採取は川の上流だろう?」
「そうなりますな」
「こんな形の跳ね釣瓶を作って吊り上げ、筏に乗せて流せばいい。あとは滑車だ。金物の加工はどのくらいの物ができる?」
「職人に確認が必要ですが」
「じゃあ図面を渡そう。このひもの端と滑車の間にさらに滑車を入れて、それにつけたフックというところに石を結んだひもをかける。これを玉掛けというんだが、危険だから練習を行ってくれ。トロッコもいいが、レールがなあ。木製レールのトロッコでもいいか。一応トロッコの図面も書いておくから、職人に見せてみてくれ」
「それで、馬車道についてだが……」
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