第48話 王都改造のすすめ

 おれは、妹の結婚式に参列をすませると、友を助けるため。あの邪知暴虐の王の待つ城へ? ……あれ何か違うな? などと、ぼーっと走れメロスの一節を思い浮かべていた。


 でも、メロス自身が、結構傍若無人なんだよなぁ。

 自分の都合で、結婚式もせかしたし。

 その後、兄を誇れとかって……。


 何でこんなことをしているかというと、早く着きすぎて何も準備ができていないから。ここで待っていてくれと、客間? 応接室かな。御付きのメイドさんが、何か命令をとそわそわしている。


 そう。ここに通されて、すでに5時間。


 フェンとみちよは仲良く寝ている。

 サラスは凛としたたたずまいで、お茶を頂いている。

 おれは走れメロスを、城関連だけで連想し、思い出して、どんな話だったか考察中。


 地図でもあれば、改革案の一つや二つ片を付けるのだが、それの許可も出ていないらしい。そして、改革案の一つや二つ片を付ける下りは嘘だ。


 ドアをノックされ、ようやく呼ばれるかと思ったら、王が突然やって来て頭を下げる。

「はっ?」


「獣人族の王を務めている。レイ・オーメン・フェーラと申します。玉体をお運びいただきました上で、お待たせしてしまい。申し開きもありません」


「あ~宰相さんこれは?」

「うちの王様です。もともと確かに謁見の予定は入っていましたが、私が皆様をお連れするにあたって、話をしようとしたのですが、この人は話を聞かなくてですね。先ほどやっと、お伝えするとこの有様です」


「まあ。元々の予定に、割り込んだのは、こっちになるのかな?」

「昨日。王には、話をしに行くと伝えています。この結果は、王の浅慮が招いた結果ですね」

 おう。宰相さん、きついな。


「獣人族の王。レイ・オーメン・フェーラ様お顔をお上げください。我が主カミヨも困っています」

「かたじけない。そなたは?」


「はい主のお力によりハイヒューマンになりました。元魔人族。第1王女サラス・ヴァティーと申します」

「魔人族? 主によって、なった?」


「魔人族は、お嫌いですか?」

「いっいや。あまりかかわることがなかったせいで、よく知らんのでな」

「では、これから。よろしくお願いしますね。王様」

「はっ、はひ」


 うわー。サラスが王様を手玉に取ってる。まあ騒動になるよりはいいがな。

 さてと、どうするかな。

「神代 篤司(かみよ あつし)。種族はハイヒューマンだ。よろしくな。それで待ちくたびれて寝ているが、髪の白いほうがフェンリル。フェンと呼んでいる。でそちらの髪が黒いほうが万世 導世(ばんせ みちよ)。聖者でありハイヒューマンだ」

「おお。フェンリル様」

「あっ、間違えた」

「えっ?」

「ハイフェンリルだった」


「ああ、はい。フェンリル様なのですよね」

「まあ。そうだ」

「我々獣人族にとって、フェンリル様は特別なのです」

「ああ。そう言っていたな。神獣だと」

「そうでございます」


「そうは言っても、見た通りだ。よろしく頼む。それで、先ほど言っていた地図を頼む」

「は、少々お持ちください」


「宰相め。わしが頼んだ時には、あそこまで機敏に動かんのに」


「それで。カミヨ様でよろしいかな?」

「ああ。それでいい」

「王都の整備を、引き受けてくださいまして、ありがとうございます」


「ただ、絶対うまくいくとの、保証はないことは、理解しておいてくれ」


「大体どのようになさるのか、伺ってもよろしいでしょうか?」

「ああ。物流。流れの最適化と、大型ショッピングモールをコンビニにしよう。それがヒントだ」

「はっ?」


「簡単に言うと、集まるから込み合う。それなら、集まらないようにすればいい」

「いや、幾度となく市場の解体は行ったのですが。やはり同じところに集まってくるのです」

「再度集まる理由は? 聞いたのか?」

「店側だけですが、客が来ないからと言っていたと」


「移動して、客が来ないのはなぜだ?」

「はて? 移動したのを、知らないから?」

「それもある。ほかには?」

「品物が少ない。とかですかな?」

「それはどっちだ? 量の問題か? 商品の種類か?」


「どっちも。でしょうな?」

「ただ。そんなバカみたいな量が、必要なことは少ないだろうから、品物の種類だろうな」

 そう言っても、王は理解ができていない様子。


「それを踏まえて、どうすればいい」

「取り扱う種類の多い店を、王都のいろんな所に造るでしょうか?」

「正解だ。そして、それは外側の堀。あそこの外側に向けて造りたい。まあこれは地図を確認してからの話だがな」


 そう説明すると、理解できたようだ。

「流通を馬車ではなく、船で行うおつもりですか?」

「そうだな。店の裏から搬入する。それなら、客の邪魔にもならん」

「門の外から、直接入れられれば、町中を荷車が走らなくても。よくなる」


「それと、馬車は。調べてみないと分からんが、目的地は王城周辺だろう。門から専用道路を造ってしまえ」

「専用道路ですか?」

「そうだ。道を2重にするか、思案中だ。橋を造る技術はあるようだから、可能だろう」


「レンガ造りの橋? 素敵そうね」

「ああ。起きたのか。おはよう」

「みちよ。この人が、獣人族の王様だ」


「えっ。すみません。こんな格好で」

「いや良い。待たせたのはこちらだ。獣人族の王、レイ・オーメン・フェーラだ。獣種としてはトラだな」

「万世 導世(ばんせ みちよ)です。よろしくお願いします」


「遅くなりまして、申し訳ありません」

 宰相が、地図を抱えて入って来た。


「さあ始めようか」

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