第33話 魔王様の決断

「おい、どうした?」


「はい大丈夫です。皆様に鑑定結果を伝えて、よろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」


「そちらのフェンと呼ばれている方は、ハイフェンリル。神の眷属となっています。そして、その黒髪の方は万世 導世(ばんせ みちよ)様でハイヒューマン。聖者。異世界からの召喚者。神の眷属となっています」

「おお……」

「ざわざわ……」


「ハイフェンリルとは、聞いたことがないが、神の眷属。ふむ。うん? 異世界からの召喚者? そして、聖者とな?」


「そうだ。このみちよは、女神により、ヒューマンの国に、勇者と共に召喚された。今現在は私の眷属となり、ハイヒューマンに至った」


「おお、眷属化すると、種族が上がることができるのか。するとハイフェンリルとはフェンリルか?」


「ああそうだ。人化の技を覚えて、人の形をとっているが、文字通り神獣だな」


「おお……」

「ざわざわ……」


「まあ、それは置いといて。このみちよと共に、勇者と賢者の3人が召喚された。その召喚の時に、私は紛れ込み、この世界に使わされてきた」


「そうでしたか。しかしヒューマンの国から、ここへどうやって?ダンジョンを越えたのですか? いやしかし、連絡も来ていない」


「ああ、すまない。シーサーベントに頼んで、運んでもらった」

「なんと、シーサーベントはものすごく強力で、我らの船がどれだけ沈められたか……」


「それはすまない。今は、私の眷属となりおとなしい、手を出さなければ、何もせんだろう」

「それは、ありがたい」


「と、言うことで、たぶんすべての種族に祀られている女神は、ほかの世界の神々に迷惑を掛けながら、各種族に勇者という戦力を落として、潰し合いをさせている。それはなぜか。というところだが」


「まあ。今は女神の意図は置いておいて、私としてはすべての種族が女神に踊らされることなく、手を取り合って世界の管理に手を貸してほしい。ということが望みだ」


「はい。わかりました。ですが、少し相談させていただいてもよろしいでしょうか?」


「いいですよ。まあ。どういうことになっても、私たちは次に獣人の国へと赴いて同じお願いをするつもりです。それと、あからさまに女神に、敵対するのはやめてください」


「はい。承知しました」



「思った以上に、大変な話となった。信じれると思うか?」

「まあ、鑑定結果だけでは、多少疑いもありますが、精霊がひれ伏す姿を見ては信じるほかはありますまい」


「あれはなあ。力のないものに一部見えなかったようだが、そこそこ力のある者には見えただろう」

「歴史に残る、出来事でしたね」


「しかし、女神が。異世界の神に迷惑をおかけして、管理者が派遣されることになっているとは」

「今まで神託により、派兵してヒューマンとの争いもあったが、お互いに、『侵略されておる。速やかに対処せねば大変なことになる』とお告げが来ていたとなると。ちょっと考える必要がありますね」


「神託があれば、ダンジョンの手前で待つようにしよう。引けばよし、来るならダンジョンで蒸し焼きにするだけじゃ」


「ヒューマン側は信じ無かった、ということなのかな」

「勇者たちと共に召喚された聖者が、カミヨ様と行動共にしているということは、その可能性もありますな」


「まあ返答は、カミヨ様が獣人族の国へ赴き、事実をつかみ、行動を起こされるまで、我が国は専守防衛に努めつつ注視する。と回答いたしましょう」


「まあ、妥当だな。それと魔王王位決定戦はどうする」

「どうしましょう?」

「あの勇者。状態はどうだ?」

「樹海にて、修行中のようです」

「トーナメントは、今3回戦。カミヨ様を除き12名。イフ・リートは負けで良いだろう。あの状態でも、精霊が見えておらなんだようだしな」


「国民も楽しみにしておるようじゃ。続けよう。まだ日数もかかるし、最後にカミヨ様と戦ってみたい気もするな」

「お恐れながら、魔王様でも勝てるとは思えませんが」


「はっはっは。お前でもそう思うか?」

「あの神気の開放。あれでもきっと、全力じゃありません。精霊が震えていましたが」

「そうだな」


「すべての種族の祖か。それにフェンリル。シーサーベントを従える。恐怖を感じるが、それとともに、やはり挑みたい気持ちが起こる。……どうしよう。ジュスティーツィア」


「死ぬ気で挑んでみれば? 子供のころに、父上に挑んだように」

「あの無慈悲なげんこつは、今思いだしても痛いわ」


「まあ。あまり馬鹿な話をして、カミヨ様を待たせるわけにはいかん」




「話はまとまりましたか?」

「ああ、大きく変えるなら、議会を開かなきゃならんが、一応表向きは今のままで行こうと決めました。カミヨ様が獣人族を見て、情報を集め、方針が決まるまでは現状のまま。それで神託があっても専守防衛。ダンジョンを越えなければ、無駄死には防げるでしょう」


「わかりました。それでは獣人国へ行った後、また戻って来てから、相談いたしましょう」


「それでだが、カミヨ様。私を眷属にしてはくれないか?」

「は?」

「魔王様?」

「眷属になれば、上位の種族に、進化できるのであろう?」


「うーん、どうするかな?」

「主、良いじゃないか。種族の上につくものを、眷属化すれば治政も楽になる」

「みちよは、どう思う?」

「そうね。良いと思うわ、念話で連絡も付くし」


「じゃあ、やってみるか」

 半分だけ霊体を体から出し、魔王の額に手を置き力を流し込む。

〈ああっ。力が流れ込んでくる〉

〈念話が通ったな。眷属になることを望むか〉

〈サラス・ヴァティー。カミヨ様の眷属になることを望みます〉

〈眷属化を許可する〉

〈ああっ。つながりを感じる〉


「うん?サラス・ヴァティー?」

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