第19話 シーンの街中

 俺たちは、シーンの町中へ入る。

 

 おせっかいついでに、畑の人。

 トラゴスに変わって、堆肥のことを牧場の持ち主。

 グランハに話をするため、家へ向かっていた。


 グランハの家は街の外れにあり、一軒だけぽつんとあったので、すぐにわかった。

 すぐ脇には、馬が放された牧場があり、のんびり草を食んでいた。


 多分俺たちは大丈夫だと思うが、フェンがいたため。

 ピタッと、馬たちの動きが止まり、ジリジリと離れて行く。


 俺たちが家に近づく。馬たちが離れるを繰り返したが、無事に家に到着した。


 ドアをノックすると、無事にグランハが現れ、牧場のボロ置き場の土について話をする。

 畑を作る上で非常に役に立つため、上手にすれば売れることを教え。詳しい方法はトラゴスが知っているので、彼と話し合い、売値を決めてほしいことを説明した。


「ああ。それと忠告だが、単純に馬のボロを埋めても、畑の土には害にしかならない」

 一応釘も刺す。


「それじゃあ。よろしく」


 牧場の様子を見ても、失礼だがあまり裕福そうには見えない。

 堆肥の販売は、少しでも助けになるだろう。


 その後、ラノベの知識を元に、ギルドを探したがない。

 普段はどうしているか聞くと、猟師が肉屋に卸すに決まっているだろうと、普通に笑われた。

 笑われついでに、肉屋の場所を聞きそこへ向かう。


「こんにちは。どなたか、いらっしゃいます?」

 肉屋は店が閉まっていた。

 此処の肉屋は、営業日が決まっていないのか、仕入れがあった夕方から販売するのか。

 ひょっとして猟師が肉屋をやっているのか? などと考えていると、のっそりと大男が出てきた。


「なんだい。今日は売り物がないぞ」

「ああ。買い取りを、お願いしたいんですが」

「なにか獲って、今水にさらしてんのか?」


「いえ、さらしていません。なにかマズイですか?」

「血抜きもせず。さらしていないと傷みは早いし臭くなる。素人がたまたま獲ったのか? どこに置いてあるんだ。今からでも遅くないかもしれん。取りに行って、血抜きをするぞ」


「いえ。私の能力に、こんなのがありまして」

 そう言いながら、鹿を取り出す。


「おお? すごいな。それに、まだ固くなってない。獲りたてか。すぐに血抜きと内臓を取るぞ。早くこっちへ来い。教えてやる」


 後ろをついていく。

 すぐに、後ろ足に紐をかけ、軽く持ち上げると、前足の間にナイフを突き立て血抜きをする。

 

 その間におっさんは、すでに内蔵抜く準備を行っていた。


 正中線にナイフを入れると一気に切り開き、血が抜けたのを見ると、すかさず首を切る。

 気管や食道を切り開くと横隔膜にも切り目を入れ、一気に引きに引き抜いた。

 その後も、淡々と処置をして、皮をはぎ取る。

 今度は、大きな桶を担いできた。

 中に魔法で水を張り、その中に鹿を沈める。


 剥がした皮も、ザブザブ洗っている。

「この時に、肉や脂が残ってないように注意しろ」


「ありがとうございます。それで、買い取ってもらえるのでしょうか?」


「そうか。そうだな。いやすまん。つい嬉しくてな。どうも最近獲物がいなくてな。鹿一頭ぎん…… いや金貨1枚でいいだろう」

「もっと、鹿必要です?」

「持っているのか? しかし、日持ちをせんからなぁ。うん。もう一頭、出してくれ」

「これでいいですか」


 目に前に一頭出す。

「おお? 今度は雄か良いな。若いのは匂いも少ないからな。2つで金貨2枚だ、ほれ」

 金貨を受け取り、

「ありがとうございます。それではまた」

 そう言って、肉屋を後にする。


「ねえ、金貨って、いくら位なんだろうね?」

「さあ? 使ってみたら、わかるだろう」

「昔なにかで見た。害獣駆除した鹿の値段が1万ちょっとだったから、同じくらいかな。とりあえず今日は、宿があれば泊まってみよう」



「それで? 宿はどれだぁ?」

「誰かに聞きましょう」

 街の中は、西部劇の街状態。

 そんなに、強力なモンスターは来ないのか、街道の両側に街が広がっているということは、街道沿いがホテルだろう。


「ホテルもあるみたいだけど、お姉ちゃんがついてきそうな所だな」

「なんだか新鮮。ほらドアがスイングタイプ」

「酒場の上が、ホテルか。なるほどね」

「あそこに、入ってみるか?」


「いらっしゃいませ。お食事でしょうか? お泊りでしょうか?」

「泊まりは一人いくらだ?」

「銀貨3枚からとなっています」


「食事は別料金で、下で取るのか?」

「そうですね。部屋にメニューがありますので、お申し付けいただければ、お部屋でも可能でございます」

「理解った。とりあえず宿泊3人」



「ベッドの関係で、2人と1人で、部屋が分かれるようになりますが?」

 その瞬間に女の子二人の目が光り、何かを言いそうになったので。

「ソファーくらいあるだろ。一部屋で頼む」

「では、3人目は半額に致します」

「そりゃ、ありがとう」

 金貨を一枚渡す。


「お待ち下さい」


「お部屋は2階となっております。それと、お釣り。銀貨一枚と銅貨5枚でございます」

「銀貨一枚はチップなのか? それとも計算間違いか?」

「あー。少しお持ちください」


「こちらをどうぞ」

 鍵とお釣りを銀貨2枚と銅貨5枚受け取る。

「これはチップだ」

 銅貨5枚を渡す。


 部屋の鍵は、さっき203だったのが、今度は201だった。お釣りごまかしの指摘で仕返か? ここもしかして、幽霊でも出るのか?

 こわごわ開けると、予想以上に部屋が広かった。

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