第18話 世の仕組みとお手伝い

 ちょっと、フェンには驚かされたが、みちよが服を適当に仕立て直して、着せることにした。

 最初は嫌って、すぐに脱ぎ散らかしていたが、最近はなれたようだ。


 最初はトイレもしつけが必要で、みちよは体のでっかい子どもね。

 と、笑いながら世話をしていた。


 なれると、手が器用に使えるため、それに感心して、色々工作も手伝ってくれる様になった。


 ある程度、魔人族の特徴や街の様子。貨幣について情報が集まり、街に出かけることとした。


 女神は種族に対して、生活環境はとことん均等にをモットーにしているようで、貨幣まで教会を通して下賜されるようだ。

 気にしていなかったが、貨幣に刻印されている女の人は女神だそうだ。

 そのため、偽造は問答無用で死罪。


 身体的特徴は、魔人族も魔力量が多いだけで、肌も青かったりしないようで、全く普通。ただし、力の強いものは、なぜか大小様々だが角が生えるらしい。

 角があると、魔力操作がサポートされるということだから、感覚器の一つなのかもしれない。


 そうそう。

 ひとが霊体で情報を取っていたときに、違和感を感じて体に戻ると、フェンに襲われていた。

 出かける前に、みちよに見張っておいてと言っていたのだが、襲われても壊しはしないだろうと考え、別にいいやと俺の体を放っておいたらしい。


「どっちが良い?」

 と、あっけらかんと聞かれたが。

「こういうものは、比べられん」

 と返す。

「そうなの? 自分じゃよくわからないから、今度フェンと比べっこしよう」

 そう言いながら、行ってしまった。


 

 それはさておき。

 街に向けて歩いていると、畑で村人…… じゃないな? 農業従事の町人か? 数人集まって話をしているようだ。


 関わるつもりはなかったが、フェンが突然、

「お前たちどうした。何を集まってる」

 と声をかけてしまった。


「なんだい、あんたら?」

「いや、通りすがっただけなんだが。集まって深刻な顔をしていると、やはり気になるだろう」


「ああまあ。それもそうか」

「で、どうした?」

「こんなこと言っても、仕方がないだろうが。もうずっと、植えた野菜の育ちが悪くてね」

「ああ。新たに開梱でもすれば良いんだが、若いものは徴兵されたり王都に行って仕官するもので、労働力もなくてね」


「ちょっと、鑑定してあげよう」

「鑑定? そんな、料金払えないぞ」

「ああ良い。此処に通りすがったのも、なにかの縁だ」


 鑑定をすると、やはり特別なことではなく、連作により土がかれていた。

「土が死んでる。少し治していいか?」

「できるのか?」

「ああ、なにを植えるんだ」

「今からは麦だ」

「わかった」


 土が枯れガチガチだ。

 魔法で少し深くまで掘り返し空気を入れる。

 病害虫駆除に燃やすか、それとも水を張るか?

 水つまり『湛水(たんすい)』は時間がかかるし水はけが悪いと逆に悪影響が出る。土の中から燃やして、冷却もかねて、水魔法で土を濡らす。

 ついでにphも弱酸性に調整。

 さて、熱を加えたなら、菌を増やし土を丈夫にするためには、肥料。


「近くに牧場はあるか?」

「ああ、馬の牧場がある」

「そこで、もらえるようなら、寝藁とボロをまとめて貰ってきてくれ」

「それなら、廃棄場があるからそっちに行こう」


「穴をほって、牧場で出たボロとか雑草とか放り込んでいる。たまに火が出るから離れたこんな所にあるんだ」


「ここいら一帯が、そうなのか?」

「ああそうだ」

「じゃあ、この辺りの土を貰っていこう」

「まさかこれを入れるのか」

「ああ、たまに火が出ると言っていただろう、あれは発酵熱と言って60度以上にもなる。それで雑草の種も家畜のボロもきれいになる。あとに残るのは栄養豊かな肥料だ」


「どうやって運ぶのかが、問題だな?」

「ああそうだ、保管庫の中で積んであるこれを使おう」


 材木を取り出し、一時間ほど掛けて荷車を複数作った。

 車輪は蒸すことも出来ないので、車軸から柱を8方向に立て、そこへ曲線に削った木を打ち付けていく。

 ちょっと不細工だが、いいだろう。


 このくらいは良いかなと、魔法を使い。必要な土を荷車の上に座標を指定して移動させる。運んでもらい、ダンプすると意外と少ない。

 うーん。さっきの場所をイメージして、土をこっちの畑の上に転移させた。

 そのまま、魔法を使い。すき込む。


 それを、幾度か繰り返し、ふかふかの土が作れた。

 これでいいだろう。

 きちっと、水はけのため勾配も付けてある。


「これでいいだろう」

「本当に大丈夫か? 確かに土の色は良くなったが……」

「麦の種を2つくれ」

「ああ。ちょっと待ってろ」



「ほら、2粒だ」

「こっちは畑。こっちは端の水路だから、元の土だな」

 と言って、指を突き刺し、麦をひと粒ずつ植えて水をかける。

「これを、魔法で栽培」


 さっき植えたところから、ぴょこっと葉が出てくる。

 適度に水分を与えながら育てると、分けつが進み。

 ぐんぐん大きくなる。

 ある点で、もともとの畑の土は、分けつ数も少なくなり、育ちも悪くなってくる。

 種になるまで成長させ、成長を止める。


「実際見て、どうだ?」

「ああすごいな。こんなに差が出るとは」

「それで、あそこの土を適度に入れながら、麦を刈ったら豆類を植えて、その後麦と作ると土も長持ちする。覚えておくと良い」


「あそこの牧場と話をしておかないと、くれなくなるかもしれないぞ」


 地頭が良いのだろう。俺がそう言うと、ぱっと顔が変わる。

「ああそうだな。これだけ効き目があれば、みんなが欲しがるな」

「ただ注意しろ。出たばかりのものはゴミだ。最低3ヶ月以上は発酵させてから貰ってくるように」

「理解った。でも新しいのでも、多少は効くんだろう?」

「場合によっては、枯れる」

「きちっと、発酵させる。熱々の時を過ぎて、匂いが少なくなるまで置くように」

「わかったよ」


「それじゃあね」

 手を振って別れる。

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