第17話 魔人族領へ上陸

 少し回り込めば、兵士たちは居らず普通に上陸が出来た。

 こちらからでも、まだ暗雲のような黒い霧が見えている。

 ひょっとすると、あれを確認するために、兵達は移動をしたのかもしれない。


 岩場に上陸して、シーサーペントに礼を言って別れる。

 少し陸地に上がって岩陰に潜む。

 周辺を検索するため、俺だけ霊体になって飛び上がる。


 魔人族側も樹海の植生や動物の分布に変わったことはなく。人間側とほとんど変わらない。困ったことにはならないだろう。


 こちらも少し樹海を進むと、大陸を2分する山脈が続いている。

 女神は意外と戦力差をなくすために、均等な生活環境を整えているのかもしれない。

 海峡側から、街の方まで続く街道を避け。

 やはり山側、樹海との際を行くことに決めた。


 体に戻り、報告をする。


 しまった。魔族の姿を見ればよかった。見た目で分からない程度なら、途中から街道に紛れ込んでも良かったのかもしれない。


 まあいい。山側を移動して、街が近くにあれば、調べれば良いことだ。


 ウダウダと考えながら、出発をする。 悪い癖だが、ひょっとしてとか、もしかしたらという考えが、いつでも頭の中を占拠する。

 みちよのことを羨ましく思うのは、俺がこの性格を嫌いなんだろう。

 ああ。こいつが何も考えていないと、いうわけではない。


 


 あつし達が、魔人領の内陸に向けて出発した頃。

 勇者たちは、ダンジョンの中で報告を聞き、自分たちが謎の黒い霧に包まれていることを知った。

「地上へ、様子を見に行くぞ」

「はっ。しかし危険では? 」

「それを確認するんだ。ヤバそうなら、戻ってくれば良い」


 地上に上がってきた勇者たちは、雷雲のような黒い霧が迫ってきている様子を確認する。

「ありゃなんだ?」

「不明ですが、悪霊や怨霊のたぐいではと、報告が来ています」

「誰も取り残されているわけでもないのに、うめき声が聞こえるとか。霧に触れると体力を持っていかれるようです」


「死にはしないんだな? 」

「長時間捕らえられると、マズイと予想します」

「わかった。ちょっと下がっていろ」


 勇者は、剣を頭上に構えると、最近覚えた勇者の特有の剣技を発動する。

「すべてを浄化し、穢れを払え。オールピュリフィケーションセレモニー」

 頭の中で範囲を広げることを意識する。そして、何で英語なんだよとぼやく。


 発動された技は、霧を捕らえ滅していく。


 だが、相手が大きすぎて、少しくらい削っただけでは、勢いが落ちる様子はない。

「誰か聖魔法をぶち込め」

 MP回復ポーションをアオリながら、勇者が叫ぶ。


「幾人かの神官が並び、浄化魔法を発動する」

 その間に、勇者も第2段を発動するが……。


「こいつは駄目だ。撤退。撤退だ。ダンジョンには入らず、そのまま内陸側に下がるぞ」

「ダンジョンに戻らないのですか?」

「ああ、あんな奴が入ってきたら、魔人領側に行くしかなくなる。もし中に残っているなら、撤退を促せ、全員にだ」

「わかりました」

 兵が大慌てで走っていく。


「まあ。あいつが蓋をしてくれれば、ダンジョンを通しての行き来はできなくなる。手間が省けるか」


「一旦引いて、成り行きを見る。残念ながら、俺たちじゃ太刀打ちできない。さがれ!」


 謎の黒い霧は、3日3晩周辺にさまよっていたが、そのうち薄くなり消滅をした。


「報告します、霧が消えました」

「周りのモンスターとかの変化はあるか?」

「はっ。普通のモンスターが消え、アンデットばかりとなっています。ただ特殊ではなく浄化魔法で倒せます」


「ダンジョンの中は、どうなった?」

「こちらも、アンデッドの巣となっています」

「そうか、ありがとう。下がって良い」


「さてどうするか……。教会に言って、神官を回してもらうか。普通の兵より神官のレベル上げにちょうどだな。どう思うエバ? 」

 司祭として、勇者についてきたエバ。彼女は貧民の生まれで、色々なところに気が付き優秀であったが、生まれのせいで、教会の上層部に疎まれていた。


「そうですね。高貴な生まれのお嬢ちゃん坊っちゃんは、少し修行も必要かと思います」

「じゃあ。進言しよう」

「そんなことより、ゆっくりと。……今は、休憩も必要ですわ。勇者様」

「お手柔らかに」


「しかし、あの霧はどこから来たんだ、そっちも調査が必要だな」


 


 あつし達は順調に歩を進め、ミスルールで家を作っていた辺りで、小屋を立ていた。

 此処でも同じ様に温泉がわき、風呂を作成し早速飛び込んでいた。

「やっぱり。風呂は良いね」

「ええ。どうこう言っても日本人だわ」


「向こうと同じ様に、此処を拠点として、探りを入れるか」

「そうね。ただフェンが獲物が多いって、張り切っているからしばらくは休憩ね」

「もう少しで、自身の階位が上がるのがわかっているようで、張り切っているみたいだな」

「人化をマスターしたら、お相手するの?」

「いや、流石にその気はないが、襲われそうで怖いな」

「文字通り、肉食系よね」

「喰われるのか? おれ」



 そんな噂をすれば……

「主、どうじゃ」

 体毛は白いが、凄い美人さん。

 一糸纏わず、胸を張り立っていた。


 白い髪をした女の子は身長165cm程度で、適度に引き締まった筋肉が付き、バストがトップ87位アンダー71位のD、ウエスト63、ヒップ88位で、肉食のためか、欧米的脚長さんが仁王立ちしている。


 俺とみちよは風呂に浸かっているため、それを下から見上げている……。


「美人さんで、ちょっと嫉妬するくらい良いプロポーション。我慢できるの?」

「あっ。うん。多分な。 ……それより服がいるな」

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