第16話 海辺の遺跡

 中に入ると、ガランとして荷物のたぐいはなかった。

 ただ、いくつかの小山を巡ると半円形のドームを部屋として通路で繋がれていた。


 ただ。通路は必ず地下に一段降りており。ただの施設ではなく軍事用の塹壕のようにも思える。


 通路の一つに更に1段下がるところがあり、そこを奥に進むとかなり広い施設があった。 みちよと周辺を探査していると、中央に広い部屋があり、そこにはなにかの司令室のようなパネルが並んだ机があり、正面にはガラス質の埋め込まれた平らな壁があった。


〈ここが、指令センターっぽいな〉

〈昔テレビでみた、電車の指令センターみたい〉

〈ああ雰囲気はある。邪神との戦いがどのくらい前かは知らんが、その頃のものだとすると残っているのがすごいな〉


〈ほかも見てみよう〉


 いくつか見て回ったが、おおよそ、がらんどうの小部屋ばかりだった。

 そのうち、みちよが変な顔をして立ち止まった。


〈ちょっと体に帰ってみる、嫌な予感がする〉

 そんなことを言って、飛び出してしまった。




 追いかけて戻ると、なぜかフェンが、みちよの服を脱がしてコロコロ転がしていた。

〈何をしてるのよ?〉

〈なんじゃ戻ったのか〉

〈で何をしていたのかな? 私の体で〉

〈思ったより帰ってこないから、人の体というものをまじまじ見たことがないなと、ちょっと見せてもらっていただけじゃ〉


〈なんで転がしていたのよ〉

〈それはまあ、ワシラの習性かな? 〉


「う~ひどい、いじめだわ」

〈フェン。信頼して体を預けているんだから、困るな〉

〈ふん〉

〈フェン?〉


〈コヤツの体から、主の匂いがしたからつい、可愛いヤキモチじゃ〉

〈そんなんでコロコロ……転がされ。……ああ昨夜の匂い? ふーん。ヤキモチ焼きさんねぇ〉


〈ああ、まあ行くぞ〉

〈ちょっと待って、服はどこよ〉

〈ほれ〉

 亜空間庫から取り出すフェン。

〈何であなたが、それを使えるのよ〉

〈眷属じゃ。当然使える〉


〈えっそうなの? 〉

〈いや。こっち見られても、眷属になって、何が使えるかは俺にはわからない〉

〈それもそうね〉

〈どうやって使うの?〉


〈亜空間収納庫は俺が作った空間で、それに対して繋いで荷物の出し入れしているだけだから〉

〈あっこれね、預けている私の荷物もわかるわ。これがあれば何かあっても連絡が取り合えるわね〉

〈そういう使い方も便利そうだが、使わないですめばその方がいい〉


〈まあ出発しよう。こっちだ〉



 少し歩けば、見覚えのある場所に到着する。

 これがそうだが、霊体と違い。掘り返さないとね。


〈任せろ〉

 すごい勢いでフェンが土をひっかく。見ていると壁に向かって引っ掻いているから猫の爪とぎみたいだと、ついニマニマしてしまった。


 あっという間に、扉が見えてきた。


 細かいところは木で、ピックマトック(小型のツルハシ)みたいなものを作り、掘り出していく。

 粗方掘り出したところで、ドアノブを引く。

 バキッとかパキパキとか、変な音がしているが開いた。

 すごいな。構造物が腐っていないことに感動する。


 記憶にある通路を歩いていき、管理小屋のドアを見つける。

〈このドアの向こうに、管理小屋があるんだけど、こっちの通路も気になるんだよね。行ってみて良い?〉

〈良いわよ〉

 だが、フェンに止められる。

〈主おすすめしない。嫌なニオイがするから、死霊系のモンスターが居る可能性がある〉


〈げっ浄化系の魔法で行けるだろうが、わざわざ行かなくていいか。さっき霊体のときに出会ったら、まずかったんじゃ無いか?〉


〈じゃあこっちのドアから、桟橋に向かおう〉


 ドアを開けて中に入り、改めて肉眼で見ると制御コンソールは、ガラス板で出来ているようだ。これコンソールだよな?


 まあ良い。通り抜けて通路に出る。

「この先はきっと、秘密基地みたいにぐわーっと開くんでしょうね」

「ああ。多分そうだろう。このまま下っていくと港というよりは、地下ドックみたいな所に出る」


 順調に下りながら、シーサーペントを呼んで見る。

〈お~い。私の場所がわかるか?〉

〈これは主。今すぐ向かいます。申し訳ありませんが、少しお待ちを〉


〈うん? あの詰め所の奥から、嫌な感じが来ていないか?〉

 少しクンクンと匂いを嗅ぎ。

〈来ていますな〉

 フェンリルから返事が来る。

〈とりあえず、浄化してみようか?〉


 出入り口から出かかった、黒い霧状の物は、浄化の光に当たると燃え上がり、慌てるように戻っていった。


〈何とかなったのか?〉

〈そういうのを、フラグっていうんでしょう?〉

〈そうだな。足下から、妙な振動がし始めた〉


〈主。おまたせしました。あれは、なんですかな?〉

 シーサーペントに言われてみると、色んな隙間から黒い煙が吹き出してきていた。

〈シーサーペント。頭にでも、全員乗せてくれ〉

〈承知しました〉


 全員で飛び移る。

〈痛い〉

〈丈夫な鱗だから、少々爪が刺さったくらい大丈夫だろう。ぴーぴー言うな情けない〉

〈主。この犬ころだけ、落としてもいいですかな?〉

〈ああもう。喧嘩をするな。早く逃げよう。どんどん湧いてくるぞ〉


〈もう一度。今度は、浄化の光〉

 先程は単なる浄化だが、今度は指定範囲へ、浄化の光を照射する。

 やはり浄化の光に当たると、消滅はするようだが、いくらでも湧き出してきてキリがない。

 

 海に出て振り返ると、ドックのあった半島じゃないな岬か? 全部を飲み込むように黒い霧が覆い尽くしていた。

 海には、でてこれないのか。


 とりあえず、逃げることが出来た。

 向き直り、シーサーペントにお願いをする。

〈手をかけるが、ぐるっと回り込んで、魔人族の兵士がいない方に行ってくれ。〉


〈ぐるっと回り込みますので、良さそうな所を教えてください〉


 アクシデントはあったが、これで魔人族の大陸に渡ることができそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る