第15話 再度挑戦

 結局、子どもフェンリルも眷属化して、周りでの念話が騒がしくなり、皆の体調も復活した頃。


 さて、ずいぶんと時間を取ってしまったが、魔人領へ行ってみるか。

 そう思い思いつき、みんなに声をかける。


〈ぼちぼちみんな安定したから、魔人領へ出発しようか〉

〈そうね、力にも慣れたし〉

〈主、私も行くぞ〉


〈うん? 子どもたちはどうするんだ?〉

〈ここまで大きくなれば、私の手も必要ない。それに眷属にもなったから、この周辺の奴らには負けん〉

〈〈〈だいじょうぶだよ〉〉〉


 みんなが順繰りに寝込んだ結果。すでに春が来て、子フェンリルたちも立派になっている。


〈じゃあ、お前たちには、この家の守りをお願いすることにしようか〉

〈〈〈はーい〉〉〉


〈今度は生身で移動だな〉

〈そうね、ダンジョン経由かしら〉

〈ああ興味もあるしな。あれは古代の遺跡だろうから、何かありそうだしな〉


〈うん? あの穴か幾度か通ったことがある。我らはもともと南の大陸に住んでいたからの〉

〈そうなのか? でも残念ながら、これから行くのは北だ〉

〈そうなのか? では案内ができないな。お役に立てると思ったが〉

〈どうせ、そっちにも行くから、その時には頼むよ〉

〈まかせよ〉


〈じゃあ行くか〉


「半年近く住むと、愛着があり離れるのが寂しいな」

 家を見ながら、そうぼやく。

「私達の家ですもの。また帰ってくる場所があるっていうのは、良いわね」

「そうだな」〈それじゃあ行ってくる。留守番は頼んだぞ〉

〈〈〈はーい〉〉〉


〈行こう〉




 ひとっ飛びで行けたダンジョンも、徒歩だと結構時間がかかる。

 フェンに乗せてもらおうかと思ったが、みちよを乗せる乗せないで喧嘩するため、トレーニングがてら歩くことにした。


 フェンはその代わり、周辺を走り回り、周りのモンスターを間引く ……というより殲滅だなあれは。

 頑張って、階位を上げ。人化をマスターすると息巻いている。それを聞いて俺はすごく微妙なんだが。



 結局2週間ほどかかり、ダンジョンの近くにやってきたが、やけに物々しい。

 2人を待たせ、状態を確認するため、走り回っている兵士に声をかける。


「ダンジョンに挑もうかと思って来たんだが、入れないのか?」

「ああ。今勇者様がアタックしているから封鎖中だ」

「勇者様?」

「ああ、女神様が使わしてくれた人間の味方だ」


「そうか、強いのか?」

「最初は全然だったが、今はかなり強いらしい」


「強いらしい? 見てはいないのか?」

「ああ近くにいると、攻撃の巻き添え食らうからな。それに俺みたいな下っ端は近づけないさ」

「分かった。ありがとう」


 場を離れようとしたが、声がかけられる。

「勇者を知らないということは、神国の人間じゃないのか?」

「ああ。ソレムニティーの方から来た」

「ああ堕落の民か」


「まあ。そういうことだ、出直してくれ」

「わかった」

 言ってから気がついたが、ソレムニティーからだと、不法入国だ。詰められなくって良かった。



 二人のもとに戻り、説明をする。

「ということで入れんな。海から行く。シーサーペントに頼んで渡してもらおう」

「堕落の民って何? 」

「ああその昔。女神に仕え、修業を行うことを嫌って、神国をでていった者たちの、末裔ということらしいな」



 この時、入れなかったダンジョンだが、後に必然として潜る必要が発生する事になる。


 ダンジョンの入口をぐるっと迂回して海に出るが、適度な間隔で見張りの櫓が建っているようだ。


〈参ったな。これは…… 〉


〈ちょっと飛んで、どこかいい場所がないか探ってくる。体を頼む〉

〈〈まかせて〉〉


 俺は飛び出すと、海側からシーサーペントが入ってこれそうで、見張りからの死角を探して飛んでいると、大きめの海蝕洞窟を見つけた。

 中に飛び込み様子を探りながら奥へ進んでいくと? コンクリートっぽいもので出来た桟橋があった。


 何だこりゃ? 見ると、あちらこちらに傷みがあり、新しいものでは無い。


 そこから続く通路を奥に向かって進んでいく。通路は搬入口なのか2車線くらいは幅があり舗装されている。

 開口されていればよかったが、突き当りは壁があり閉ざされている。

 どこか抜けれないかと周りを見ると、コンクリートで囲われた小屋があり、中には壊れているようだが操作パネルのような物がある。


 遺跡か? まあ今の時代の代物じゃないし。奥に続く通路を進みドアを見つけるがええい行け。よし通り抜けれた。ダンジョンの壁とは違うようだ。振り返ると入り口上部には室名札がついているようだが、読めないな。


 とりあえず、出口の方に向かい進んでいくとまたドアがある。そこも突き抜けると外に出た。樹海の景色の中にいくつかの小山がある。出入り口に長年の葉などが堆積し土となって埋もれていたのだろう。

 そのまま場所を把握するため真上に上昇してから体に戻っていった。


 戻ると、俺の体を2人が抱え込んでいた。

〈ただいま、見張りはしていたのか?〉

〈おかえりなさい〉

〈ちゃんと周辺を把握しておる大丈夫じゃ〉

〈なら良い、向こうに遺跡だろうが、ドック? 船着き場かな? の残骸を見つけた。あそこから行こう〉


〈こっちだ〉


 先程の場所を目指し小一時間進むと小山が多くなってきた。これ全部もしかすると建造物が埋まっているのか?


〈ちょっと待って、この小山は遺跡かもしれないちょっと確認をしたい〉

〈私も行く〉

〈お前の体は見んぞ〉

〈なんですって? ちょっと位見ててよ〉

〈フェン頼むよ。見といてくれ〉

〈ぬっ、しようがない〉


 霊体になり小山に潜り込む。

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