第9話 教会にて

 朝、修道女が朝食を持ち、幽閉している聖者の部屋を訪れる。

 ノックをし、返事はないが、鍵を開け中に入る……。


「あらまあ。うーん。いませんねぇ。窓から出たのかしら? 勇者さんたちといい。召喚された方々は手がかかりますねぇ。これ、やはり報告しないとまずいですよね……。 はぁ、手間がかかる。仕事ばっかり増えるのに、少しは役には立っているのかしら……」


 聖者が、行方不明。

 そんな連絡が、枢機卿や大司教のもとに届く。


「すぐに周辺を探しなさい。……そういえば東館の一般人はどうなった?」

「あの日に放り込んだまま見ていません。あそこは氷室構造になっており、春までは問題がないと思い、放置しておりました」


「ううむ。一応確認しろ」



 * * *


「報告いたします。どちらも見つかりません」

「どちらも? ということは、あの男も居ないのか?」

「はい。見当たりません」

「何時からだ?」


「出るときには、鐘がなるはずですが、鳴った記憶は誰もないとのことで、いつからかは不明です」


「なんということだ……。 聖者は門からは出ていないのだな? どこかに隠れている可能性がある。もう一度探せ」


 そう言った後、部屋を出て行こうとした者を制止する。

「一応。街の門番にも問い合わせろ。人相を言って、見ていないか確認をしろ。 これから後も、出ていくようなら捕まえるようにな。黒髪黒目だから目立つだろう」


 部屋にある、椅子の脚を蹴飛ばす。

「ええい、召喚された奴ら。どいつもこいつも手間ばかりかかる。落ち着いたのは勇者だけか」


「裏から、樹海か山脈に入った可能性はありませんか?」

「それならば、放っておけばば良い。聖魔法はあっても力のない小娘だ。魔物に食われて終わりだろう。遠眼鏡で山脈側も一応見てみろ」


 その頃の勇者くん。

「おい。この森は、どこまで続いているんだ?」

「ずっと向こうの山脈にまで、続いております」

「広いな。魔物は強いのか」

「この樹海は魔の巣窟と呼ばれ、奥に行けばとんでもない魔物がうようよいるそうです」

「そうか。もう少し力がついたら、開放するのも面白いかもしれんな」

 腕を組み、胸を張りながら宣言する。


「それは、ありがたいことでございます。この周辺は開墾しても、すぐに魔物に襲われ、再び樹海に飲まれることを、繰り返しております。開墾されれば、1大農地が出来上がります。教皇さまも喜ばれることでしょう」

 さらに胸を張り、もう少しでイナバウアーの勇者くん。

「任せておけ」

 そう言って、笑いながら倒れる。


 その頃の賢者。

 うっ。ここは一体どこなの? なんで私がこんな目に。賢者専用馬車が造られ、見た目は立派だが、扉を開けば、首と手に枷がはめられ、その間はロープにつながれている。当然足首も。服は着ていなく。椅子という名のおまるに座っている状態。


 牢獄としても、極悪人の独房状態。

 閉じ込められ、死なない程度にクズ野菜のスープを時間が来れば飲まされる。

 確かに、生かされては居た。


 日に幾度か、浄化はされ身ぎれいではあるが、それは性的な奉仕をさせられるため。

 隷属の魔法がかかっているため、反抗も自死もできない。恨みを募らせる事も、薬でぼけた頭では難しい。



 その頃、聖者とおまけ。

 聖者は温泉に比較的ゆっくり入り。

 出た後、軽く食事。

 錬成した小麦粉に、バターと牛乳? によるホワイトクリームシチュー。

 じゃがいもみたいな芋、人参みたいな根菜、イノシシのバラ肉を燻製したベーコンが入っている。


 その後、デザート。

 木の実入り。毒抜き済みで、甘み強めに加工したものを、2つほど食べ、眠りに入っている。

 よほど疲れていたのか、爆睡だ。


 俺は、薪を取ってきたり、子供のフェンリルをモフったり忙しくしている。

 肝心の管理能力はすぐに10になった。

 きっと魔物を1匹倒せば1上がるくらいだったのだろう。

 自身の記憶から、色々な物も作れるし重宝している。


神代 篤司(かみよ あつし)

 種族:ヒューマン(ハイヒューマン) 25歳

 身体:178cm/73.6kg

 階位:4

 魔力量:61240

 攻撃力 :4300

 防御力:1900

 力:1720

 耐久:1860

 器用さ:1950

 敏捷性:1920

 知性:1900


称号:異世界からの召喚者(管理者見習い)

適正:全

特殊能力:司(10)

状態: 通常


 なっ、おかしいだろう。

 ……特に魔力量と攻撃力。

 階位が4で2千弱。

 ハイヒューマンの基礎値って、もしかして500かな?

 一般の成人。

 なりたてが10だとして、万世さんが女神の小細工で10倍の力。

 俺にいたっては、神様の悪ふざけで200倍って。

 それに管理者って神様だよね、

 いつから俺は、神様の見習いとなったんだろうか……。


 なっ、と言って話を振られた、ちびフェンリルも首を捻っている。

 さあ、きれいになったし出るか。

 万世さんが寝ている間に、露天風呂でちびフェンリルたちを洗っていた。


 お湯から出た瞬間に、両側からスプラッシュ攻撃を受ける……。


「うわーっっ」


 両脇で、躊躇も遠慮もなくプルプルするフェンリルたち。

 頭から飛沫をかけられ、逃げるように内風呂への扉に手を伸ばす。


 そうです。

 ひねりもなく予想とおり、右手がムギュッと何かを掴みました。

 慌てて手を引っ込め、バランスを崩し、立て直しそこねてひっくり返る。

 

 見上げると、驚いた顔の万世さん。

 だよね、

 こっちは、もろだしでひっくり返っているが、万世さんは、

「大丈夫ですか」

 と、手を差し伸べてくれた。


「ああ大丈夫。こっちこそごめん」

 と言ったが、

「別にいいですよ」

 と笑ってくれた。


 慌てて、内風呂を通り過ぎ、脱衣所で体を拭く。

 この脱衣かごを見れば、俺の着替えがあること。

 彼女は、気がついているはずだよな……。


 

 触られちゃった。

 突然だから、ちょっとびっくりしたけれど。

 扉を開けて外を見ると、チビちゃんたちに水をかけられながら逃げてくる神代さん。

 つい、手の先に胸を出しちゃった。

 神代さん驚いて倒れちゃったから、全身見てしまった。

 嫌われたりはしないよね。


 一緒に住むんだし、ちょっと位良いよね。

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