第4話 使える魔法と脱出準備

 水は魔法が使えた。

 だが純水なのか、あまりうまくない。

 ……まあ現状、文句は言えない。


 どうやら、食い物も持ってくる気はないようだ。

 ここって教会だったよな? 最初っから殺す気満々てどう言う事よ。

 いよいよ、信じることはできない。

 まあ、それがわかった事で十分か。


 時間はあるので、色々と試してみる。


 神様からもらった能力で、脱出するのは問題ない事がわかった。

 入り口の扉は、下側をこちら側。つまり部屋側に跳ね上げる構造だった。

 扉は数100kgはあるようだが、隙間に指を入れて持ち上げると、比較的簡単に持ち上がった。さすが5倍。

 ただそのときに、紐を介して鳴る鐘を、鳴らないようにしておかないといけない。

 

 これは管理能力なのか、超能力のサイコキネシスみたいなもので、物体に干渉できた。それなら、レベル10の干渉とは、どういうことなんだろうか?


 脱出実行は夜中にしようとは考えているが、一応勇者たちに伝えておかないとまずい。

 俺の良心がそうささやく。

 霊体?を飛ばす。


 勇者は、話が通じなさそうだから、話をするなら聖者の娘かな? ふらふらと部屋を探す。

 ……着替えとかは、していないよね。


 覗くと、勇者と賢者の娘は早速盛っていた。

 避妊とか大丈夫かな? 余計なお世話か。


 周りの部屋を見ると、一部屋飛ばして彼女を見つけた。

 驚かせるのは嫌だから、昼間に抑えた力を、少し開放し窓に近づいていく。


 窓から部屋に、明かりが差し込んだのか、彼女は気がついたようだ。

 この光は、見える人間にしか見えないのか? 特に騒ぎも起こっていない。

 ひょっとして、俺だから見えただけで、他の人間には姿も見えないのかもしれないが、確認が必要だろう。


 窓から、彼女が顔を出す。

「どうしたんですか?」

 俺の姿に驚きもせず、話しかけてきた。


 俺に対する、夕方からの処遇と、出ていくことを説明する。

 教会と女神を、信用してはいけないことをさらに説明。


 俺も、今の状態では力がないので、ちょっと修行をするため、ここから出て行くと説明する。


 すると、彼女から、

「あなたは神様では、もしくは使いとかでは、ないのですか?」

 と素直に聞かれ、少し俺は思案した後。


 内緒であることを念押して、実はと話を始めた。

 地球を含めた宇宙を管理する神様から、ここの女神が無茶をして、たちが悪いので、管理するために使わされた派遣管理人であることを伝えた。


 すると、彼女としては当然だが、

「ひょっとして、帰してもらうことはできますか?」

 と聞かれた。


「今は力がないし、君たちが向こうの宇宙。……地球から居なくなってすぐに、法則に従い、存在は消された」

 そのことを、説明する。


「一応、これから先、俺が力を持てば、様子を見に行くことはできるかもしれない」

 とも言ったが、彼女はなにか思案中で、聞いていない感じだった。


 隠すのは嫌なので、説明したが。

 高校生にはきつかったかもしれない。

「じゃあ、俺は行くよ」

 そう言って、窓から離れる。


 彼女は、追いかけるように窓から顔を出し、

「私の名前は万世 導世(ばんせ みちよ)です」

 と、名前を伝えてきた。


 俺もそれに答え、

「俺は、神代 篤司(かみよ あつし)25歳だ」

 と伝えた。歳は必要なかったか? とも思ったがまあ良い。


 そのまま力を抑えて、光を消す。

 自分のもとへ引き返す。

 

 みちよは、ずっと考えていた。

 今日起こった出来事を、順に思い出しながら、私はこれからどうするべきか考えていた。 


 付いて来てくれていた、教会の方に部屋へ案内され、

「おやすみなさい」

 と言われたのが、さっき。


 時計は、こちらに来たときに、季節も時間も全然違ったので、役に立たないけれど。

 季節が冬で、4時半から5時に日が暮れてと考えると、おおよそ想像が付く。


 召喚されて、説明を受け、日が暮れた頃、案内されて食事。

 薄っすらと塩味のついた、じゃがいもの煮物? を頂いて。

 その後、部屋に案内されて来た。

 だから、おおよそこの世界では午後6時くらい? それであまりズレていないはず。実際は、昼と夜の時間を計ってとか思うが、その規則性も同じかどうかは不明だ。


 でも塾の帰りに転送されてからで、おおよそ半日経っている。ここでは、夕方でも体感では夜中の12時くらいになる、眠らなきゃとベッドへ向かう。


 ふと、外が明るいのに気が付いた……。

 気になり、外を覗くと、あの人が外に浮かんでいた。

「どうしたんですか?」

 と問うてみると、私達と分かれた後。


 半地下の牢屋のような所に幽閉されて、水すら与えられていない事。そのため出て行くが、私達も教会と女神を、信用してはいけないことを説明された。

 来たばかりで、あてもないのにどこに行くか聞いてみると、ちょっと今のままじゃ力がないから、修行をしに行くと返事が帰ってきた。



 昼間に見たときから、疑問に思っていたことを聞いてみる。

「あなたは神様ではないのですか?」

 と聞くと、彼は少し困ったような顔をしたが、

「他の勇者にも内緒にしてね。命が危なくなるから」

 私がうなずくと、

「実は、地球を含めた宇宙を管理する神様から、ここの女神が無茶をして、たちが悪いので、管理するために使わされた派遣管理人みたいなものなんだが。力を持ったまま送り込むと流石にバレそうだからと、今は力がなくてね」


「ひょっとして、日本に帰してもらう事が、できたりします?」

「さっきも言った通り、今は力がないし、君たちが向こうの宇宙。……地球から居なくなってすぐに、法則に従い、存在は消された」

「そうですか……」


 私が居なくなってから、家族が心配して心を痛めることを気にしていたが、存在が消され、心配しなくていいなら私も少しは楽になれる。私が居なかったことになるのは悲しいけれど、家族を苦しませるよりは絶対いいことよ。きっと。


「……かもしれない」

 彼が何かを言ったのを、聞き逃してしまった。

「じゃあ、俺は行くよ」

 あ、しまった、名前すらまともに言ってない。

「私の名前は万世 導世(ばんせ みちよ)です」

「そうか、おれは神代 篤司(かみよ あつし)25歳だ」


 そう言い残し、彼は反対側の建物の方に飛んでいった。あれって幽体なのかしら? 25歳なんだ。神代さん。神の使い神代篤司さんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る