第3話 聲
スマホを確認するとまるでそばで見ていたかのようなタイミングで夏美ちゃんから『かけてもいい?』とDMが来た。
僕は『いいよ!』とすかさず返信した。
着信音が部屋に鳴り響く。それと同時に僕の心臓の音が身体の中で濁流のように荒々しく鳴り響いてる。
震える手で『応答』を押す。
永遠のように感じる一瞬の沈黙が僕たちの間を通過した。
『もしもし?』
幼さが少し残る天使のような優しい声で夏美ちゃんは震えながら囁いた。
『もしもし?』
僕は少し口元が緩みながらも答えた。
『なんか少し恥ずかしい』
夏美ちゃんは通話越しでもわかるくらいに照れながら言った。
『僕も夏美ちゃんと電話できるの嬉しくってなんか緊張しちゃってる』
何も考えれなくなってつい本音が出てしまった。『我ながら気持ち悪いこと言ってしまったかも』不安が僕の頭の中をよぎった。
『雄介さん緊張してるんですか?なんかかわいい』
クスッと笑いながら夏美ちゃんは言った。
涼しい夜だったのが、真夏のような暑さが僕に襲いかかった。
『ごめんなさい。雄介さんすごくクールないなイメージだったのでなんかギャップで』
『大丈夫ですよ!ただ、可愛いなんて言われたのが初めてだったので戸惑っちゃって』
こしょばゆい感覚がしてしかたがない。
『そういえば、雄介さんは金山のどのあたりに住んでるんですか?』
『僕は金山駅の近くのマンションにすんでますよ!』
いつの間にか僕たちの緊張は解け、何気ない世間話で盛り上がっていた。
あっという間に時間が過ぎ、24:00になっていた。
僕の中で寝たい気持ちと通話を切りたくない気持ちが喧嘩した。
どうしようかと悩んでいると夏美ちゃんは口を開く。
『もうこんな時間だ!なんかあっという間だったね。明日も電話したいんだけど大丈夫?』
僕は眠いのが悟られないように言った。
『大丈夫だよ!僕も凄く楽しかったし!明日も同じ時間でいい?』
『うん!20:30で大丈夫!』
嬉しそうに夏美ちゃんは答えた。
『じゃあもうそろそろ寝るから切るね?』
僕は胸の奥から出てきそうな何かをグッとこらえた。
『じゃあ私ももうそろそろ寝るね。おやすみ。』
『うん、おやすみ。』
その日僕は遠足を終えた子供のような気持ちになって眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます