目的達成のち帰還

 それから周りの産廃の山に埋もれていたメルとリーンを引っ張り出す作業を行った、どうやらギガンドーザーに吹き飛ばされそのまま埋まってしまったようだった。



「うう…すまねぇ全然役に立てなかったぜ…」


「あぁ…ユウタさん…私のためにこんな大怪我して…ごめんなさいぃ…」


「ちょっと!そこの筋肉女!しれっと何を抜かしやがってるんですの!死んでないならとっととフィルターとやらを探して帰りますわよ!」



 産廃から引っ張り出されたメルとリーンはPAは壊れてしまったものの、身体は無事だったようだ、フィルター見つけたらこちらも修理してあげよう。

 2人も加わって産廃を捜索していると純正フィルターがあちこちから見つけることができた、まぁ全部壊れてはいたがそれはナノマシンで直るので問題は無かった。

 さらにこのナノマシンは俺の身体も徐々にではあるが修復出来るようで、今はすっかり痛みが無くなり元通りになったようだ。



「さて、次は2人のアーマーを修理…」


「何を言ってるんですの?!さっさと治療受けに戻りますわ!役立たずなコイツラのは放っといて構いませんわ!」


「いや言い方、あと俺はもう見た目だけだから中身は大丈夫みたいだから…」


「…ユウ兄、帰ろ…?」

「帰るわよ、…まさか嫌とは言わないわよね…?」


「分かったから、帰って病院行くから目に光消してこっち凝視しないで」



 ユウヒとオルヌが目のハイライトを消してこっちを凝視してくる怖い状況になっていたので大人しく戻ることにした。



「なぁエミリー、メルとリーンのアーマー一緒に持って帰ってくれないか?」


「えっ!?」

「なっ!」


「えっ?!いくらユウタさんの頼みでも泥に…いえ歩兵連盟の方達の荷物を運ぶなんて!私にもエイブラムス家の長子としての!そして車両連合としてのプライドがありますわ!」



 うーん、二人も頑張ってくれたから置いていくのも忍びないし…仕方ない、ここは俺の説得技能を生かすときだろう。

 俺はいろいろと話しているエミリーに近づき、耳元に口を近づけて囁いた。



「なあエミリー頼むよ、そうそう前に言っていたお茶会…帰ったらぜひ伺わせてもらうよ、なんだったらに参加しても構わないぜ?」


「そこのデカいの2人何グズグズしているんですの!?さっさとその壊れた人形トレーラーに積みなさい!今!すぐに!ですわ!」


「お嬢…さすがにチョロ過ぎっす…」


「…お嬢の手はモーター搭載仕様、しかしユウタ様にああも囁かれれば仕方ない…」



 説得技能云々というよりエミリーのチョロさに甘えてしまった感が強いが、2人がトレーラーに乗せ終えるとようやく町へ帰還することができるようになった。

 しかし、我ながらいよいよ人間離れしてきたと思う、ナノマシンが腕から全身に回ったようで時間がたつほどにできることが増えていくと同時に体が強靭になっていくのが今回のことで実感できた、何よりこうして大けがが自然に治ってしまっていること自体がその証拠だろう……



「…こんな時代になっているから、ありがたいんだが…咲…お前さん一体過去で何やったらこんな技術を作れるようになるっていうんだ…」



ほとんど無意識に口に出してしまったその言葉に答えられるただ1人の人物はもはや今の時代には存在してはいなかった。



「んっ?ユウタ君、何か言ったかい?」



サイドカーに乗ったところでホープがそう問いかけてきた。



「いや…何でもないさ…ただ疑問を口に出してしまっただけだ…もう誰も答えられない疑問を…な…」

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