呼び出し
あの後部屋から出た俺達三人は宿泊のために割り当てられた部屋に案内された。
中は寂れたビジネスホテルといった感じだったが、この時代なら上等な方だろう。アグラーヤはかなり配慮してくれたようだ。
「えぇ~、個室じゃないの〜!これでご飯が寂しかったら暴れてやるからな!」
「まぁ、あいつにしてはまあまあ何じゃないかしら…何を考えてるかは知らないけど。」
「泊まれるだけありがたいだろ…飯ももらえるらしいし、とりあえず休んどこうや…」
街に入るまでで精神的に疲れてしまったし、入ってからもアグラーヤとの交渉で余計に疲れてしまった。
この部屋のベットはしっかりとフカフカした良い物を使っており、疲れた体を優しく包みこんでくれた。
「さてと、ユウヒ!ユウ兄!私はちょっと行く所があるから出かけてくるね♪」
「ほ〜い、気をつけてなぁ」
「?オルヌ…アンタどこに行くのよ?」
「【調整所】だよ♪キッシシシ!」
「!!」
なんかユウヒはかなり驚いているが、そんなに珍しいところなのか?
「ちょっ!ちょっとオルヌ!アンタまさか…」
「キッシシシ♪あったり〜、まだ私に残ってるし十分だと思うよ。ユウヒも一緒に行って【登録】する?」
「はぁぁぁ?!何言ってんのよ!そんなの…」
「なら、私だけお先にやってくるよ♪今夜は記念日になりそうだねぇ♪」
「まっ!待ちなさい!誰も行かないなんて言ってないじゃない!行ってやろうじゃないの!」
なんか色々言い合っているが、俺はこのシーツと掛け布団の感触を味わうのに忙しいため、左耳から右耳に言葉を素通りさせていた。
「ちょっと!私達は出かけてくるから、勝手にウロウロしないように!いいわね!」
「ユウ兄!サクッと行ってくるよ♪帰ったら楽しみにしててね!キシシシ♪」
「はいよぉ〜、きをつけて〜なぁ〜」
ああ、このフカフカな感触が素晴らしい。500年と2日ぶりのフカフカ感だ…もう誰にもこの時間を邪魔はできな…
「失礼します、工場長がヒラオカ氏に要件があるとのことで、お手数ですが執務室まで来ていただけますか?」
「………分かりました…少々お待ちを……」
ノックの音ともにそう声をかけられた俺は答えを返す他無かった。
くそっ!なんて時代だ!
「やあ、部屋は気に入ってくれたかな?急に呼び出してすまないね。」
「いえ、久しぶりに良いベッドの感触を楽しんでいただけでしたので問題ありませんよ、」
「な!そ、それは、ひっ一人で…かね?」
「?ええ、あんなにフカフカな寝具は久しぶりでしたからね。」
「おお!そうかね!なら私も安心だよ、フゥ〜」
アグラーヤはそう言うと安心したように息を吐いた。
この人もしかしてユウヒ達としけこんでると勘違いしたのか?
「流石に
「いやいや、君のような男は貴重だからね。デザに物怖じせずに接してくれるなんて大変珍しいことだよ。デザの女ならすぐさま確保しようとしてくる、用心することだ…」
そんな事を言われても、美人さんに言い寄られてくる分には悪い気はしないのだが…こういう考え自体が珍しいのか…
「さて、これが先程言っていた地図だ。少しばかり手描きで追加をしてあるから見てみたまえ。」
そう言うとアグラーヤは普段使っているであろう机に紙を拡げた。
回り込んで見てみると、ややくたびれているが大まかな施設の配置が分かる地図というよりは図面といった方がよい物だった。
「
地図を指差しながら説明をしてくれたが、
思ったよりもデカい施設だったんだな、処理場の方が多いのはそれだけゴミが多かったのだろう。
「それが今では我々が掌握出来ているのは第1と第2工場と第1産廃処理場だけ……後は変異した化け物と狂った機械共の巣というわけだ。」
アグラーヤはそう言いながら後ろから柔らかくしかしがっしりと俺を抱き締めてきた。
「……いきなりどうしたんです?」
「さっきも言っただろう?こんな気持ちになったのは初めてなんだ……君を一目見たときから疼きが収まらないんだ…」
オルヌの時もそうだったが、唐突過ぎないか?左腕着けたときに何か他にも改造されているんじゃ?
「こんな傷だらけのデザ相手にすまないが、あまり抵抗しないでくれると嬉しいな…あと、できたらでいい…グラーシャと呼んでくれ…なるべく優しくするよ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます