いざ市場へ

 あぁ…朝日が眩しい…雲一つ無い良い天気だ…



 次の日の朝、俺は泊まった建物の外側階段で空を見上げていた。

 あの後アグラーヤ…いやグラーシャとのが夜遅くまで続き、部屋で三時間ほど寝たあと一服するために外側階段に出てきていた。

 ユウヒとオルヌは結局帰って来なかったためゆっくり寝ることができたが、オルヌに続きグラーシャとも懇ろになったと知ったらユウヒはどう思うのだろう……



「まぁ、いい思いをしたのは確かなんだが…なんかヒモかチャラ男みたいな生き方になってないか?そもそもなんだって俺みたいな男と会って早々そういうことになるんだ?……本気で改造されてる可能性も?」



 タバコを吸いながら考えを口に出しているとユウヒとオルヌのものすごい大声が聞こえてきた



「コラァァァァァァ!!!!アグラーヤ!!!アンタ調整所に手ぇ回したでしょ!!」



「普通調整に30分もかからないのに一晩中かかったとかふざけんなぁぁぁ!!絶対ユウ兄襲っただろ!!このスカヅラババァ!!」



「朝っぱらからやかましいぞこのバカ共!!お前達から今まで被ってきた被害を考えたら役得あっても良いだろうがぁ!!」



「えぇ!!工場長ズルいです!なら我々にもご相伴に預かる権利あるでしょう!!」



 ギャースカドッカンバッタンとものすごい声と騒音が響いている…これはアレだな、今俺が顔出したらますます混乱すること間違い無い…



「となると、ここは三十六計逃げるに如かずってな。」



 俺は部屋に戻ると財布と上着を身に着け一足先に市場へ行くとメモを残し、外へ向かうのだった。










「いらっしゃい!出来立てトカゲサンドが10PAYだ!安いよ!」



「動作確認してある旧国防軍の正式小銃!弾薬付きの掘り出し物!5万PAYが今日だけ4万PAYだ!買わなきゃ損だよ!」



「おい!これっぽっちの小麦で10万はねぇだろうが!」


「嫌なら買うんじゃねえや!こっちは混ぜ物3割の高級品だ!」



「誰か…お恵み下さい…誰か…」



「さぁさぁ!いきの良い人足だよ!荷物運びも戦闘補助もお手の物!買ってからどう使うかはあなた次第!1人2000PAYからだ!」





 市場に着いた俺は少しばかり歩き回ってみることにしたが、ちょっと歩いただけでも大勢の人間が賑わいを見せていた。

 しかし、見る限りユウヒ達のような美人といった人間はおらず、芋っぽいというかぱっとしない感じをした人間ばかりだった。



「しかし、金の単位がPAYペイとはね。所々自分の知ってる事の残滓があるのがなんともはや…」



 昨夜部屋に帰る前にグラーシャからプラスチック製の板をもらったが、それがPAYらしい。

 ただ問題は10枚ほどのキャッシュカードサイズしかなく、同じ物を市場で買い物している人は見た限り持っていなかったため、現在の所持金額が分からないという事だ。



「ねぇねぇ、おじさん買い物ならいいお店あるから案内しようか?」



 そう声をかけられて下を見ると、小学生程の子供が俺の服を摘んでいた。

 服装はボロボロではあるが、それなりに健康そうに見えた。



「あー、悪いんだがお兄さんは探しものがあってね、大昔の物を探しているから案内はまた今度頼むよ。」



 俺はそう言ってやんわりと断ったが、子供は服を掴んだままだった。



「なら余計におすすめだよ。そのお店ガラクタとか何でもおいてあるからおじさんの探しものあるかもだよ?」



 ふむ…このままブラブラあてもなく探すよりもちょっとは頼りになるかな?



「よし分かった、坊主案内してくれ。」



「分かった!こっちについて来て!」



そう言うと子供は俺の手を引きながら歩き出した。

メインの通りを途中で曲がり、少しばかり路地を通った先にその店はあった。



「ほいっ!着いたよ!ガラクタばっかりでしょ」


「……確かにガラクタばかりだなぁ」



山となったガラクタの中から前半分だけ出ているサビだらけの戦車に寄りかかるようにしてトタン板とベニヤ板でその店は作られていた。



「おーい!オッチャン!お客さん連れてきたよ!」



「客だと?!オッシャァ!でかしたぞ!」

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