【普通】の水



「さっきも言ったろ、荒野の迷子だって、あんたらに水取り上げられたから俺の分の水がいるからこの装置修理して水を飲めるようにするだけだよ」



「はぁ!?お前何を言って」



「黙ってみときな、必要分もらったらあとのは好きにしな」



 そういいながら俺はタンクに再び左手を添えた。



「〚分解〛〚修理〛」



 添えた左手を中心に波紋が広がり、タンクやパイプ・蛇口がみるみる修復されていく、外観もさっきは朽ちかけたというレベルだったが今は建築10年ほどたった家にあるというくらいには元に戻っていた。



「さてもう一回〚解析〛」



〚貯水タンク 固有値 45 / 100  

 状況  ・専用フィルター使用年数超過による劣化あり

     ・排出水汚染度60% 使用不適 〛



「おし、さっきよりは治ったな、あとはフィルターの方を何とかすればいけるな」



 オルヌの方を見てみると槍を下げてこちらをポカンとした表情で見ていた。まあ、こんなの実際に見るとそんな感じにはなるよな、俺もそうだったし。



「………は?…え?なんで一瞬で新しくなって??」



「おーい、オルヌさんや、他の山積みなガラクタも同じように使っていいか?」



「…え?あ、ああ…いいと思うけど……」



「よし、ならやっちまうわ、さっきも言ったけど水汲んだらあとは好きにしなよ」



「あ?お、おう……」



 そのあと二つほどガラクタの山を変えて同じようにタンクを〚修理〛したらこうなった



〚貯水タンク 固有値 93 / 100  

 状況  ・排出水汚染度3% 飲用可能範囲内 〛



 このくらいになれば大丈夫だろう、見た目も新築マンションにくっついてるくらいには新しめになったしな。俺はさっそく蛇口を捻ってバケツに水を出した。

 水はさっきと比べ物にならないくらい勢いよく出てくるようになり色も澄んでいて匂いも特にしなくなっていた。



「よし、大丈夫そうだな、ならばさっそくと」



 勢いよく流れている水を手で受け止めながら飲んでみた、東京ではなく静岡辺りの水道水レベルにはなったと個人的には思うが、他の二人がなんていうか………



「なあ、ちょっと試し飲みを、ってあれ?どこいった?」



 いつの間にかオルヌがいなくなっていた、ほんとユウヒといいオルヌといい音もなくどっか行っちまうって忍者の末裔かなにかか?



「まあそのうち水汲みに来るでしょって、さっそく来たか」



 畑の方から騒がしい声が聞こえてくる。オルヌがユウヒを連れてきたようだ。



「………んだよ!水が出る様になったんだって!」


「あのね、ここの取水装置はもうイカれる寸前で汚水しかでないんだからもう諦めなさいな」


「だからアイツが直しちゃったんだって!」


「そんな馬鹿な……こ……と」



 連れだってやって来たユウヒは蛇口から出ている水を見て言葉が出なくなったようだ。



「やっぱり見間違いじゃあない……水だ!水が出るようになったんだ!」


「おお、来たな、試しに飲んでみたけど普通の水程度なら出てくる仕上がりになったぞ」


「マジか!さっそく飲ませてもらうぞ!」



 そう言うが早いかオルヌは流れている水に手をいれそこから飲み始めた。無我夢中というのはこんな感じなんだなぁ。



「……………あなた、いったいどうやって……そもそもあなた【ノマ】じゃなかった?【デザ】の気配は何も感じなかったんだけど?」


「まあ、なんというか[過去からの贈り物]のお陰……かな」






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