一触即発

「………………はぁ……なるほどね……入るまでに時間がかかるって嫌という程よくわかったよお二人さん……」



 街というよりは要塞といった高い壁、その両端までおよそ500m程度あるその壁の末端は壊れておりそこからジャンクの小山がいくつも重なって障害物になっているのが見えていた。そして大きめの門の前には俺でも見たことがある戦車が5両、砲身をこちらへ向けてずらりと並びその車両間には統一された制服を着た人間達が銃をこちらへ向けていた。その両脇には不揃いの格好をした人間達が雑多な銃を向けていた。さらに壁の上にはでかい狙撃銃を持った人間が何人もこれまたこちらを狙っている。



「…………一応聞くけど、なにやらかしたの?お二人さん?」



「…………別に、ちょっと気に入らない人間をぶん殴っただけよ。」



「キシシシシ♪私も気に入らない奴らにちょっと火をつけただけだよ♪」



 くそ!頬を味わうことなく分かる!これは!やらかした事をめちゃくちゃマイルドに言っている時の態度だ!



「いやいやお二人さんや、ちょっとでこんな警戒されることなんて『【紅霧あかぎり】に【灼熱しゃくねつ】!乗っているんだろう!武器を持たずおとなしく降りるんだ!』…………いわれてるみたいだぞ、お二人さん……」



 制服を着た連中の中でも頭一つ大きい人間、恐らく隊長格が拡声器か何かを使ってユウヒとオルヌを呼んでいるようだ。

 こんな警戒されても余裕な態度を崩さない二人とは違いこちらは左腕以外一般人ときたもんだ、戦車砲で吹っ飛ばされた時には肉なんぞかけらも残らないということはわかりきったことだった。



「分かってると思うが、俺はノマだからな?銃に撃たれたらあの世行きだからな?二人共分かっているんだよな?」



「分かってるわよ、オルヌここにいてちょうだい、ちょっと話をしてくるわ。」



 そう言うとユウヒは軽トラを降りて隊長格の所に歩いていった。オルヌは荷台に置いてあったデカいバールを手にしていた。



「……ちょっとオルヌさん?そのデカいバール持って何する気なんだい?」



「ん?これ?これはユウヒのだよ、呼ばれたらこれぶん投げてユウヒに渡すんだ♪」



「………その後ユウヒさんは何をするのかな?………」



「そりゃあ、全員ぶっ飛ばして街に堂々ご入場さ!」



こいつら全然分かってねぇじゃねえか!何考えてんだ!何も考えてないのか!?



「ふざけんな!こっちは荒事駄目だって言ってんだろうが!」



俺は軽トラから降りてユウヒの所へ走って行った。なにやら周りがざわついていたが気にする余裕は無かった。



「………じられるか!そんな事!そう言って前回何人殺した!」



「はぁ……こっちは穏便に済まそうとしてるのよ?貴方も死にたいの?」



やっぱり物騒な事言言いまくっている! このままでは捜し物どころじゃなくなるぞ……



「ユウヒ、何物騒な事言ってんだ?そんな事言ってたら目的達成不可能だぞ?」



「……なんでこっちに来たのよ?」



「ん?男?すまんが、貴殿は誰かな?生憎今は見ての通り取り込み中なんだが…」



「こいつは関係な…「すみませんね、隊長さん…であってるかな?俺はヒラオカユウタって者です、彼女らのツレでしてね」ちょっと!」



ユウヒが説明を止めようとしてくるが、二人に任せてたら俺まで同じカテゴリに分類されてしまいそうだ。



「ツレ……?…え?…こ、この二人に…お、男!?そ…そんな……なぜ……」



よくわからないがなんか隊長さん凄いショックを受けている、今の内にこっちの要件押し通そう。



「ちょっと色々込み入った事情が有りましてね?申し訳ないんですが、この街の責任者に説明をしたいのでアポイント取れますか?」

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