とりあえずの休息
すっかり日も暮れて文明の明かりなど全くない真っ暗な夜、あの後二人とお互い改めて自己紹介し、食事と水浴びと自分の能力説明を終えるとここで寝ろと言われた部屋から外に広がる風景をタバコを吸いながらぼぅっと見ていた。
今日一日で途轍もなく状況が変わってしまった。
もう
「500年前?コールドスリープ?何をふざけた事って言いたいけど、取水装置が治ったのは【戦前技術】があったからなのね……」
夕食を食べながらユウヒがそう言ってきた。
まあ俺とユウヒが逆の立場でもそう思うしかない、それよりも
「なあ、さっき聞こうと思ってたんだが、その【戦前技術】っていうのと【ノマ】と【デザ】っていう言葉の意味を教えてくれないか?なにせ500年分のタイムラグがあるもんでね」
「キシシシシ!【戦前技術】ってのは、今では使えなくなった昔の技術全般の事さね、だいたい昔にあった戦争より前と後の技術や機械をそれぞれ区別してるんだ」
ユウヒが答えるより先にオルヌが質問に答えてくれた。その彼女は少し欠けた皿に載ったトカゲっぽい物の丸焼きを頬張りながら言った。
「アム、ムグ【デザ】ってのはモグ、私達みたいに美人で!スタイル良くって!ゴックン、すっごく強い人間のこと!【ノマ】はそれ以外!分かりやすいでしょ!」
ユウヒが額に手を当てて頭を振っている。やっぱりざっくりし過ぎだよなぁ。
「……【デザ】は【デザインヒューマン】の略と言われているわ、大昔人間の遺伝子設計を弄って見目麗しくタフで長寿、中には不老になった者もいたそうよ。そんな風になった人間かもしくはその後継が【デザ】と呼ばれているわ。遺伝子を操作した弊害か生殖能力がガタ落ちして子供の【デザ】は滅多にいないの。【ノマ】って言うのは【ノーマル】の略と言われていて、オルヌも言ってたけど詳しく言うと遺伝子を弄っていない人間のことよ、遺伝子操作をしていない分生殖能力は普通にあるから子供を見たら【ノマ】と判断していいわ。」
「おお!ユウヒ流石だな!私よりも詳しい!」
「それで…貴方のその能力なんだけど…教えてもらえるかしら?」
そう言うと、ユウヒはコップに入った水を飲み始めた。オルヌは相変わらずトカゲ肉を食べている。
いつの間にか俺の皿に載った分も彼女の皿にワープしているが、流石にまだ心の準備が終わっていないのでむしろ、有り難いです。
「そうだな、まず俺の左腕は生身じゃない。ナノマシンっていう目に見えない小さな機械が集まって腕の形でくっついている。この機械が対象物に浸透して【解析】して状態を把握したり【分解】【抽出】して材料にしたりそれを使って【修理】したりとまぁ他にも割と色々出来るんだ」
「…実際に見たし、聞いていてもまだ信じられない気持ちが強いわね…」
「俺自身もさっき使ったのが2回目だったから気持ちは分かる、まぁあまり言いふらさないでくれると助かるな」
「こんな事他人にわざわざ言わないわよ。この時代では本当に貴重な能力だしね」
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