荒野の廃農場
見えた建物に近づくにつれて、それが農場だと分かった。
建物全体はボロボロだが、なんとか雨風を凌げそうな状態だった。
建物のすぐ近くには盛り土が規則正しく作られており、一部の範囲で畑が作られていた。
「こんな小さな範囲でも、一応畑なのかな…」
世界が崩壊しているなら、家庭菜園レベルでも畑と呼べるのだろう。
ただ、植えてある草は枯れていて成長していないように見えた。
「しかし、畑があるということは、ここに関わった人物がいるということだから、まずは話をして情報収集しようかな」
建物の入り口から中を伺いながら周囲を見渡した。
錆びたよく分からない残骸や機械が散らばっていたが、人の気配は感じられなかった。
「すんませーん、誰かいないっすか?」
声をかけてみるが、反応は無い。
「ふむ?お留守かな?であれば、中をちょっくら見せてもらいま…」
その時、視界の左側にとてもよく切れそうな刃物がヌッと現れた!と同時に後ろに人の気配があった。つい今し方まで足音やらはなかったはずなのに…!
「キシシッ、おとなしくしてたらその細い首をすっぱり切り落とすのは止めておいたげるけど、どうするオジさん?」
「……言いたいことは2つ、1つは抵抗せずにおとなしくするからその得物でズンバラリンは止めてほしいってのと、もう1つはこれでも22だからせめてお兄さんって呼んでほしいな」
俺は動かずに前を向いたまま後ろの人物にそう言った。
「おっ、珍しくものわかりのいいやつじゃん。じゃあ手は見える位置で挙げたままね」
そう言いながら、俺の後ろから前側にやって来た人物は、声の感じから女だと予想していたが、中学生位の女の子というほうがまだ似合う娘だった。
俺の知ってる女の子と違うのは、俺の方くらいの身長であるのに、俺の身長と同じくらいの長い槍?薙刀?を微動だにせずに突きつけていることだった。さらに、日本人離れした白っぽい髪で俺の知ってる限りの芸能人でも見劣りしない美少女だった。
「おーい!ユウヒ!こっちはOKだよ!」
少女は建物の奥に声をかけると燃えるような赤い髪で長身ナイスバディなこれまた美人さんが出てきた。
「あら?珍しいわねオルヌ、あなたがバラしてない生きてる人間見るのは久しぶりだわ。私にくれるの?でも畑の肥料にするならやっぱりバラさないと面倒なんだけど?」
……この2人外見は極上だけど、中身は極悪ってもんじゃねぇな……
「すまないが、俺は見ての通り金目の物は何にも持ってないんだが、まだ死にたくないんだ。肥料にする以外の要求は何かないか?」
「…………」
「…………」
2人はお互い目配せし合って何事かを決めているようだったが、少し困惑気味?でもあった。
「……まあいいわ。あなた、持ってる水を全部寄越しなさい。」
「そんな綺麗なカッコしてるんだから無いってことはないよねぇ?オニイサン?」
ここで断っても俺の命が無くなるだけだろう。
「分かった、背中のリュックにあるんで取り出すのに動いてもいいかな?」
「……いいわ、おかしなことしないのが賢明よ」
俺はゆっくりとリュックを地面に降ろし、中から水の入ったペットボトルを取り出した。
「キシシシッ!こいつこんないい水持ってたのか!ユウヒ!久しぶりに私にも一杯くれない?」
「そうね、なら中途半端1本残して残り持って行くわよ」
2Lペットボトルが3本あったが、俺の飲みかけも含めてユウヒと呼ばれた方の女性が持って行ってしまった。
「やった!久しぶりの水だ!」
そう言うが早いかオルヌと呼ばれた方も奥に行ってしまった。
「……あの様子じゃ、やっぱり水が貴重ってことか……はぁ、とりあえず俺の分あるか聞いてみるか……」
さぁ、これからの交渉次第でどうなるか、最低でも水と食料をどうにかせんとだが、情報源は彼女達のみときたもんだ。もうちょい他の人間が居る場所の事聞けるといいんだがな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます