第一話(仮)
夢の中で逢う女性。
金の髪。白い肌。しなやかな躯体。
その胸は大人の高さを備え、二連の頂は金絹に包まれて人踏を寄せつけない。
透き通った蒼い瞳。
光を追って遠くに逃げたかと思えば、実は近くをじっと見つめている。
視線の先に、少年。
名はテスタ。年端も行かぬ10代の少年。
夢の中で逢う彼女は、テスタを見つけるといつも、にっこりと、微笑むのだ。
微笑み、近寄り、そして、手を握ってくる。
ひんやりと、冷たい指。
テスタよりだいぶ背の高い彼女は、テスタの右手と、自分の左手を重ねて、握り、肩を寄せて、身体を密着してくる。
テスタは彼女が苦手だった。
だって……。
だって服を着ていないから。
なにも、着ていないから。
夢の中で逢う女性は、いつも裸んぼで。
テスタの目線の高さに、彼女の胸。
ふたつの丸みが、目の前にあって。
でも、肝心なところは、長いブロンドに隠れて、見えなくて。
女性が動くたびに、大人サイズの胸が、上下に、左右に、斜めに。揺れて。揺れて。揺れてっ……。
テスタは夢の中で、声が出せなかった。
だから言えない。
女性に、「服着てっ!!」って、言えない。
夢の中の女性は、テスタが声を出せないのを知っているのか、知らずか。
テスタに微笑み、話しかけてくる。
でも、彼女の声もまた、テスタには聞こえない。
無音。
静けさ。
動画をミュートで見ているような、寂しい感覚。
今すぐ「服着て!!」って言いたいのに、女性に伝えられない、もどかしさ。
だから、女性の艶めかしい唇が、開いたり閉じたりする様を、テスタは眺めるしかなくて……。
こうなのだ。
テスタは夢の中で、いつもこうなのだ。
声が出ない。
手足が動かせない。
体の自由がない……。
だから。
この先も、いつもの夢と、同じ展開になるってことは、目に見えていた。
女性が、妖しく微笑む。
(……来たっ)
テスタは、どっくんと、鼓動が暴れるのを感じた。
よく見る動画の、頭出し部分に、シークを合わせるような、背徳感とむず痒さ。
裸んぼの女性は、微笑み、それまで握り締めていたテスタの右手を、自分の胸へと導いた。
むにゅり、という感触。
こぼれ落ちそうにとろけて、やわらかくて、でもひんやりと冷たい。
何度も、何度も味わっている、夢の女性の、胸のやわらかさ。
テスタの指の腹にはやわらかいものがあり、しかし掌には硬いものが主張している。
それが一体、何なのか。
いちいち考えることを、テスタはやめた。
女性はテスタの手の上に、自分の手を添えて。
まるで操るように、テスタの手を間に挟んだまま、自分の胸を揉み始めた。
テスタの手と、女性の手は、胸をまさぐり、ぐにゃり、ぐにゃり、と丸みを歪めていく。
それは淫靡な共同作業だった。
少年の手は、繰り人形のように、女性の胸を揉みしだき、大人の女の唇から微かな吐息を搾り出す。
(ち、違う、これはっ……! 僕の意思じゃない。手が勝手に……っ)
誰かに言い訳しながら。
糸で引かれたパペットの如く。
テスタは淫猥な手の動きを、止めることができなかった。
夢の女性が、湿る吐息で少年の髪を撫でながら、にっこりと微笑む。
いいのよ。それでいいのよ。とでも言いたげに。
夢の世界では、テスタは生徒で、女性は教師だった。
裸の女性が、テスタに胸を触らせたまま、ゆっくりと背中から倒れ、寝そべるようなポーズになる。
テスタはいつの間にか、己も裸になっていた。
夢の女性が仰向けに倒れ、足を開く。
白磁のように透き通った白い太ももが、角度を広げ、少年を受け入れる意思を示した。
テスタは気が付くと、両手で女性の胸を左右とも揉みしだいていた。
ぐにゅり、ぐにゅり、と歪められてしまう、女性の胸。
元の丸みを保とうと奮闘するも、あっけなく揉みしだかれてしまう。
柔らかな丸みが少年の指に襲われ、歪に形を変えられて、苦痛を快感へと変換させる。
流石にもう、言い訳は効かない。
夢の女性と交接したいと願う、これはテスタの意思だった。
女性の薔薇色の唇が、大きく開いては、閉じる。
切ない息を漏らしながら。
無音の儚い夢。
でも、なぜだか湿度は、高い。
女性が女神のように微笑む。
赤い唇が、膨らんでは閉じる。何か言葉を発したようだ。
声は聞こえない。でも。
テスタは、女性の唇を、塞ぎたいと思った。
体を前に進める。女性に馬乗りになるかのように。
唇と唇が重なる。
そして──。
……。
…………。
………………。
と。
ここでいつも、テスタは夢から覚める。
『殺虫姫』終末世界戦闘用アンドロイド恋愛もの構想1 羽後野たけのこ @eternal_dream
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。『殺虫姫』終末世界戦闘用アンドロイド恋愛もの構想1の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。