第9話 秋子~後日譚~
書くべきか、書かざるべきか迷ったが、母の名誉のために書いておく。
母は大澤からのDVと経済的搾取の中で「縊死」を選んだように見える。
事実、母は「いつになく激しい夫婦喧嘩」の後に首を吊った。
だが、数年後のことだ。
隣の奥様がこう証言した。
「あの夜、大澤さんの奥さんの ”苦しい~苦しい~” と言う声を聞いた」
母は心から望んで死んだわけでは無かったのだ。
きっと、こう言うと語弊があるが、「狂言自殺」を行うことで現状の打開を図ったのではないだろうか?だからこそ「苦しい」と隣の家にも聞こえるような声で訴えたのだ。
誤算だったのは、私たち兄弟は夫婦喧嘩に嫌気がさし、家に居なかった。
大澤はその無神経さで、母の訴えを無視して寝てしまった。
母はきっと、芝居だったはずの自殺の中で、「もうどうでもいいや」と思ってしまった。
母は自殺ではなく、「事故死」に近かったのだと思う。
だからと言って大澤の罪が赦されるわけもなく、だから大澤は憑り殺された。
弟は母が死んだ年齢になる頃に狂ってしまった。
母の怨みはまだ残っているのだろう。私だけが無事なのだが、コレは「守護の者=嫁」のお陰である。私はこの守護の者に敬意を払い、「真月」と名を付けた。
母の死の尊厳は守るべきだ。
「自殺を選ぶほど弱くは無かった」と・・・
ただ、私を「あちら側」に連れて行くほどの理由もまた、無い。
母は私が幼き日に、私よりも「大澤ファミリー」を選択した。
ソレを恨んではいないが、これ以上の虐待はもう、受け入れがたいのだ。
母が死んだ日。
自室で眠る私の頬を撫でたのは「母の霊」であったと思っていたが、よくよく思いだしてみれば、あの触り方は幼き日から馴染んでいた「真月」のものであった。
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