第2話 小さな旅人 森に立ち寄る
空に
旅人の朝は早い。
目覚めてすぐに旅人は目を擦りながら、松明を用意して小川に向かった。
夜間に冷えきった川の流れで顔を洗う。
冷たさで交感神経が刺激されて血管が収縮し、血液の流れが早くなる。
全身に新しい血が通い、脳が活発になり、曇りのないスッキリとした覚醒に至る。
清流を汲み、小鍋で火にかけはじめる。
「良いにおい♪」
スタッカートの効いた
干し肉とキノコの煮込みと、少しの木の実を幸せそうに口に運ぶ。
ちょびちょびと口に運んでは味わい、運んでは味わう。
食べ終えて小川で小鍋を洗い、歯を
取り出した荷物1式を
プッシュ式の噴射機構が備わった小瓶を取り出した。
植物から
それを首や手足など
虫や獣対策だ。
ことあるごとに活用しているその植物は、
香り成分が
薬の
決して
相当に
旅人の次なる目的地であるダーラム交易都市の外壁が見えている。
すぐ横には
ダーラムへ立ち寄る前に、森で
手持ちの地図によると、あと数キロメートルほどで
森とダーラムを行き
その道を森の方に進めば、ある程度は人が通るような道をたどって森の
これまでの旅路でも森には
各地の森を
運が良ければ新しい薬の材料に
ダーラムでもある程度の
太い道を曲がり、森の入口からさらに道沿いに森へと入っていく。
森ではどんな生態系が
岩やぬかるみ、木の根、つる性植物などに足を取られてケガをしないようにするなど、森に入ると気をつけることは
気を引き
道があっても森の中では完全な整備の行き届きは期待できない。
とにかく
しばらく道沿いに進んできてわかったのだが、道中いくつか広めの休憩スペースや
どうやらダーラムの人々は、この森で何かを採集か
森の中なのに道がかなり森の深くまで続いている。
数十人の規模で
おそらく、定期的に大規模に行っているのだろう。
大きく太い道なので、このまま道沿いに進んでも動物たちはこのような
寄り付かないだろうし、植物の植生も人の介入が
一旦、来た道を少し
思い切って野営地跡の
森の中の探索は、地形に慣れていないと方向感覚をつかむことが難しいので、目印として川沿いに進むことで
自然の道しるべだけをたよりに、まずは人の手が入っていないところを歩いて、森の地形や
小川の上流へ向かって二時間強ほど歩いた。
この辺の川の中には小魚やカエル、イモリなどが所々に
川沿いに来て良かった。
この辺りで植生を調べてみようと思う。
少しだけ見通しの良い川のほとりが見つかったため観測に移る。
まずは頭上を見上げる。
この地域の
中には紅葉樹や
今は新緑の季節。
落葉樹の若々しい黄緑色の葉っぱが生存競争の激しい森で
日当たりの悪い北面に
樹木だけでもこれだけ植生が
目線を少し下げると、低木や中木についてはあまり元気がない様子。
枝や幹が細く、根元から傾いていたり、土の
それもそのはず、見上げると光が射し込める隙間が
大木によって
さらに視線を下げて地面付近の植生も観察する。
樹木から養分を横取りする寄生植物や苔類が
草や花などの植物はこの寄生植物や苔から身を守るすべを持っているか、生存競争に負けない
紫色の小さな
その花の香りが五メートルほど離れているにも関わらず、強く鼻をかすめていく。
薬草の一種で生命力が非常に強いことで知られている。
良い薬品の原料になるし、フレグランスとしても人気が高い。
さらに見渡すと、暗がりで僅かに光る植物もあるようだ。
光る種類の植物は珍しい。
その植物が地中からミネラルを取り込む際に発光する元となる金属をふんだんに取り入れられる場所に咲いているのか。
または、その植物が取り込んだミネラルを発光素子を含む物質として合成ができる。
あるいは、特殊な土壌地質、空気質、魔素の源泉に接しているか、地脈などの条件に合致しているか、旅人の知らない未知の環境下に存在しているかである。
いずれにしても、その仕組みには多大な興味がある。
しかしながら、こうした珍しい植物は、扱いが非常に難しく、摘み取った瞬間に変質してしまったり、ものによっては息をふきかけただけで使い物にならなくなってしまうほど繊細であったりする。
収穫するにも、ある程度の数が確保できてなおかつ、様々な方法で採集を試みて最適な収穫方法を模索するにはそれなりの時間と物質が必要だ。
先程の薬草と併せて、ぜひとも採集はしておきたいところだが、生態系を崩さないように、最適な収穫方法を調べて
まずは、それらの植物の植生状況をもう少し
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