第7話異世界から来た黒猫⑦
モフモフの棒で誘き出された私は、ロペスさんからしっかりと抱き抱えられてしまった…
「クスクス、棒で捕まえる事が出来るロペス様は凄いですね」
「フランソワ王子様、わたくし達信者に『様』は不要で御座います」
「いえ、ロペス様には頭が上がらない」
クスクスと笑みを見せる王子様が、猫の私を抱っこしているロペスさんの前に立ち両手を広げていた。
「おいで」
『!?』
(え?!お、おいで…って…まさか、抱っこって事!?)
ダラ~ンとぶらさがった猫の私は、長いシッポをフリフリと揺らしこの綺麗な王子様に抱っこされたいんだと思った。
「…フランソワ王子様、この子はまだわたくし以外の方に抱かれた事がありません。まだ人に馴れていません、もし、お怪我でもいたしましたら大変で御座いますので…抱き抱えます事は控えました方が宜しいかと思います」
体を動かそうとした私にロペスさんはキュッと抱き抱えている腕に力が入っているような気がして…動く事が出来なかった
「私の猫になるのですが…私が触る事を控えた方がいいとはどうしてですか?ロペス様」
「…っ」
ジッとロペスさんの顔を見る王子様にビクッと動く体が伝わり私はロペスさんの顔を見上げ声を出した。
「ニャ~ッ」
(今日から王子様の所へ行くわけでもないから、抱っこぐらい良いと思うんだけど?王子様の顔が『何故駄目なんだ?』って顔をしているから、ここは大人しく聞いた方が…それに、信者の人が口をパクパクして口パクでロペスさんに話しているんだけど…『何をしている早くその猫を王子に渡すんだ!』って言っているんだけど……)
「……」
ロペスさんは猫の私を見て王子様に抱き渡した時、フワッと良い匂いがして笑顔を見せる王子様を見上げていた。
(うわぁ…香水かな?男の人には花の香水は合わないと思っていたけれど綺麗な人にはとても似合うんだって思った。こんな風に体を寄せて…ハッ!い、今の私は猫だから抱っこされるのは当たり前だし…)
「クスッ、可愛いですね」
王子様の肩に顔を寄せ、撫でてくる手がとても気持ち良くてまた寝てしまいそうになった…
「…フランソワ王子様、その猫ですが…宜しいのですか?まだ召喚いたしまして日が浅いのでわたくし達…いえ、このロペスが面倒を見ても宜しいかと思いますが…」
「!マエルさん…」
信者の人が王子様にロペスさんをこのまま猫の世話を任せてはと話しをしているようで、顔を見なくても分かるロペスさんの喜ぶ声がしていた。
「いえ、大丈夫ですこの子の世話は私が見ます。それに儀式の準備が忙しいと思いますから、ロペス様は皆さんの元へ早く戻らなくてはならないでしょう?」
「…は、はい…」
「……」
信者のマエルさんと言う人が、慌てて頭を下げ側に立って頭を下げないロペスさんに気付き小声で『おい、ロペス!』と声を出しロペスさんも声に気付き頭を下げていた。
「ロペス様、この子は私に託して暮れませんか?」
(王子様の話しを聞いていると猫の私は今日フランソワ王子様に引き取られるみたい…かな?!)
「……はい…お願い致しますフランソワ王子様…」
シュン…と落ち込むロペスさんはもう二度と会えないような顔をして、無理に笑顔を見せているように見え王子様に抱っこして貰っている猫の私の側に立ち頭を撫でてくれた。
「…ネコちゃん…王子様に可愛がって貰うんだよ…」
「ニャ~」
「さぁ、私の部屋に行こう。ロペス様、有り難う御座います。いつでもこの子に会いに来てください」
王子様がロペスさんにいつでもどうぞと言って猫の私と一緒に部屋を出た。
「…え…い、今の聞きました?マエルさん…」
「ん?ああ、猫に会いに来ても良いと言っていたが…まさか、あの異世界猫を引き取るとは…何かあった場合我々は責任持たないぞ…おい、ロペス聞いているのか?」
両手を重ね満面の笑顔を見せるロペスは信者マエルに声をかけた。
「マエルさん、今からネコちゃんに会いにフランソワ王子様の部屋に行っても良いですか?」
「馬鹿者ーーっつつ!!!」
信者のロペスは、年配信者マエルに説教が続き怒られているにも頭の中は黒猫の事で一杯だった。
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