第6話異世界から来た黒猫⑥

「良く見ると宝石みたいな目の色と艶のある綺麗な黒い毛並みだよね~、僕の屋敷にいる猫達とは違うんだと分かるよ…だから、そんな隅っこでかくれんぼしなくても~~っ」

私は棚の隙間に入りジッとロペスと言っていた信者の人を見ていた。

「おいでネコちゃん♡」

『……』

「ほら~っ、僕は怖くないよ~っ」

ジャ~ン!と何処から取り出したのか一本の棒を手に取り、棒の先にはフワフワの毛玉のような物が付いて丸く動かない猫の私に向けていた。

「ほら!ほら!」

シャカシャカ、シュッシュッ、ポンポンと床に毛玉の付いた棒で、縦横に動かして見ていた私は体がムズムズとして(これ、欲しい!)とまるで頭の中から声が聞こえたような気がして、ハッ!?と気が付いた時には飛び出し毛玉を必死で取っていた!!

「はははは、可愛いな~~っ♡連れて帰りたいな~っ」

ガシッ!と捕まってしまった猫の私を抱き上げ膝の上に置き頭を撫でていた。

『ぅ~~…』

(お、男の人の膝の上を座るなんて…)

ナデナデと頭を触る手が気持ち良くて…(早く膝の上から離れないと駄目なのに…)ポカポカと暖かくて緊張していた体に力が抜けたように私の意思を無視した猫の体は、ポスッとロペスさんの膝の上で丸くなっていた。

「ははは、可愛いな僕の事が好きになったかな?」

(え?何故膝の上に乗っているだけで好きってなるの?)

少し頭を上げロペスさんをチラッと見て私は膝の上で丸くなり目を閉じた。

「えーっ、さっきのチラ見は何?まるで僕が言った事が分かっているようだね」

(分かります!私だって驚いているんだから日本語と違う国の言葉が分かるなんて…でも猫だから話せないから無意味だけど…)

なでなでと触る手に堪能していた私にロペスさんが話し始めた。

「…ネコちゃんと会話が出来たら良かったのにな~っ僕と沢山お話しが出来たら良いなって…猫ちゃんは王子様の側にいたいと思う?」

(えっ!?王子様?)

私は顔を上げロペスさんを見上げていた。

「にゃ~っ」

「!そうだよね、僕の側が一番だよね」

(え?私何も言っていないのに)

コンコン!

「ロペスいるのか?」

部屋に入って来た信者の人が王子様を連れていた。

「フランソワ王子様…」

(え!?)

猫の私を膝の上から抱き上げたロペスさんは、そのまま抱き上げて信者の人と王子様に頭を下げていた。

「ロペス、猫は降ろしなさい!」

「私になついていますので降ろします事は出来ません」

「おま…コホン、猫の世話をお前に任せていたのもあるが、挨拶の時は猫を放しなさい」

「……も、申し訳御座いません」

渋々、私を床に降ろしたロペスさんは猫が大好きなんだと思った。

「クスッ、貴方に頼みまして良かったです。元気な姿を見る事ができました」

笑顔を見せるフランソワ王子様は童話に出てくる綺麗な人なんだと…猫の姿なのが残念だと思い床に降ろされた私はササッと棚の隙間へと入った。

「え?ネコちゃん?!」

「ロペス、お前になついているのではなかったのか?」

「ええーっ、どうしたの~っ」

(猫の習慣だから狭い場所が好きなんです!)




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る