第2話異世界から来た黒猫②

信者達の召喚部屋に入って来たのは、陛下と二人の王子に近衛騎士達が入って来た。六人の信者達は真っ青な顔で魔法陣を隠すように横に並び頭を下げた。

「へ、陛下!御忙しい中この様な場所へお越し下さいまして……」

「挨拶は後だ、聖女は何処に居るのだ?」

「……ぁ…」

陛下は部屋の中を見渡し信者達に問いかけていた。

「どうした?何故黙っているのだ?そこの信者が聖女の召喚に成功したと来たではないか」

「!」

ビクッと陛下を呼びに来た信者が、真っ青な顔と流れる汗に顔を上げる事が出来ずにいた。

「おい、まさか『嘘』だと言うのか?」

「……そ、それは……」

「わざわざ、その聖女を見に来てやったのにまさか誤報だとは余程、命が惜しくないようだな」

一人の王子が、頭を下げる信者達に睨むような目を向け命が無い事を伝え信者達は震えていた。

「ジェラルド王子、信者達は我が国に必要な人材だ。亡くす訳にはいかぬ、応えない理由を話すが良い」

「……も、申し訳御座いません陛下…聖女の召喚は失敗で御座いますが、異世界の生き物が召喚されました」

「何?!異世界の生き物だと?」

「はい……此方の魔法陣の中にその生き物がおります」

魔法陣を隠すように並んでいた信者達が、魔法陣が見えるように移動をすると陛下と王子二人は驚き、まだ上手く動けない黒猫に言葉が出ずにいた。

「「「……」」」

「……おい…」

「は、はい、ジェラルド王子様…」

ガシッと少し年配の信者の胸ぐらを掴み上げたジェラルド王子は怒りで声を上げた。

「何処が異世界の生き物だ!?ただの猫だろうがーっ!!」

「ひいっ、も、申し訳御座いません!ですが、この猫は普通の猫ではありません…く、黒い猫に赤い目はイムカルム王国並びに他の隣国にも生存しておりません生き物で御座います。異世界から来ました生き物で御座います」

「……確かに珍しい猫ですよね、ジェラルドその手を放して下さい。」

「チッ」

「ひっ!」

ドサッと他の信者達の前に放した年配の信者は支えられゴホゴホと咳き込んでいた。

コッコッとゆっくり魔法陣に近付くもう一人の王子は、魔法陣の中にいる黒猫の側へ足を止めた。

「フランソワ王子様、それ以上は御近づきなさいませぬように…」

「ふっ、猫に触れて死んだりしてな」

「ジェラルド王子、不吉な事を申すで無い」

「…申し訳御座いません父上、わたくしは無防備な兄を心配してその様な事を申し上げました……」

ジェラルド王子は父親である陛下に頭を下げ、目は魔法陣の側にいるフランソワ王子に向けていた。

「……本当に珍しい猫ですね…」

フランソワ王子はぶるぶると震え丸くなる黒猫に声を掛け手を差し伸べた。

「フランソワ王子様!?」

「大丈夫です…皆さん静かに……私はフランソワと言います。怖かったでしょう…もう大丈夫ですよ…」

フランソワ王子はゆっくりと手を黒猫の頭に触れ、ぶるぶると震える黒猫に優しい目を向けていた。










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