聖女として召喚されましたが猫なので冷血騎士様の膝の上で今日もまったりしています

冬猫

第1話異世界から来た黒猫

「おおっ…ついに魔法陣が完成し、この光の中に聖女様が……!」

五人の信者達が輪に成り魔法陣を完成させた。

青く光り輝く魔法陣の中から煙りと一緒に現れた影に信者達は歓声を上げた。

「お待ちしておりました異世界からの《申し子》聖女様!!我がイムカルム王国へ……」

『ニャ~』

「「「「「ニャ~?!」」」」」

五人の信者達は同時に猫の鳴き声で声を出し固まってしまった。

青い光りが消え、煙が消えかけた魔法陣の中から一匹の黒猫がちょこんと座っていた。

!!!??

信者達は驚きの余り声も出ず五人とも固まり、暫く沈黙が続いた。

「……こ…これは一体どういう事なのだ?」

「せ、聖女様は何処だ?何故猫が……」

「他の国では若い女性が聖女として召喚に成功したと聞きましたが…」

「……動物が召喚された話しは?」

「いや、聞いた事も無い……我々は召喚に失敗したと言う事なのか!?」

「でも、可愛いですね」

「「「「!!」」」」

一人の信者が頬が赤くなり笑顔で魔法陣の中にいる猫に見とれていた。

「お前…猫好きだったな……」

「はい、僕の屋敷では五匹の猫達が居るのですよ」

「五…」

「仕事終わりに帰宅するとみんなでお出迎えをするのです」

「……出迎えは執事とメイドでは無いのか?」

「僕の足音が分かるようで、猫達が走って玄関の前で待ってくれているので、も~っ、可愛くって、可愛くって!」

「「「「……」」」」

くねくねと体を動かし、猫が好きな信者は屋敷にいる猫の話しを四人の信者に聞かせていた。

「コホン!……君の猫の話しは後にして、さて…この事を陛下に知らせるのかどうするのか…」

「聖女様は召喚していないのです。お知らせする必要は無いと思いますが…」

「今回も失敗したと言う事になるのか?」

「ですが、猫が召喚しているので成功では無いのですか?」

「聖女様を召喚しての成功ではないのか?」

信者達は、今の状況を陛下に伝えるべきか悩んでいた時、猫好きの信者が魔法陣の中にいる猫を見て声を出していた。

「…あの、皆さんさっきから黒猫の動きがおかしいのですが……」

「おかしいとはどうしたのだ?具合いが悪いとか?」

「いえ…変な動きをしているのです」

「変な動き?」

「はい…周りを見ては頭を動かし…足を上げたり両手を顔に触っては上手く動け無いようで、体が倒れたと思うと動きが止まって、まるで動き馴れしていない赤ちゃん猫のようなんです……」

「まぁ…異世界から来た猫だ。魔法陣に酔ったのだろう…それにしても良く見ると不気味な猫だな…全身真っ黒に目が赤いとは……我々は聖女ではなく破滅を呼ぶ猫を喚んでしまったのか?」

「ま…まさか……」

「いや、人間ではなく動物を喚んでしまったのだ…その可能性はある……」

「それでは、この事が陛下が知りましたら…」

「「「「我々の命が危ない!」」」」

「は…早くこの不吉な猫を処分しなくては…」

「処分!?処分だなんて酷すぎます。この猫は僕に下さい!」

「何を言っている、普通の猫ではないんだ。何があるのか分からないんだぞ?」

信者達は異世界から来た黒猫をどうするのか口論に成っていた。

キィイ…と召喚部屋の扉が開き一人の信者が顔を出していた。

「あの、陛下をお呼びしました!」

「「「「「は?!」」」」」

五人の信者達は同時に声を出し、扉の前で笑顔を見せる信者の一人に顔を向けた。

「へ、陛下を呼んだだと!?」

「はい、もうすぐ此方へ来ると思います」

「バカ者!何故陛下を呼びに行くのだ!!」

「へ?バカ…?」

「まだ聖女様を召喚せずにいるんだぞ、このバカ者」

「えっ?え?!またバカ…って…まだ?って?」

「いつも仕事が遅いお前が今日に限ってなんでテキパキと動くんだよ~っ」

「えっ、でも…私も魔法陣が光るのを見ましたからそれで成功したと思って早く陛下に知らせないと…えっ?聖女様は何処ですか?」

「魔法陣を見てみるといい…君には魔法陣の中に何が居るのか見えるのか?」

「…魔法陣の中ですか……仰向けに成ってバタバタと足を動かしています…黒猫が見えます……へ?」

「可愛いよね~っ、僕が貰う事に成っているんだ」

「……え?ええ~~っ!?せ、聖女様は?どうしたのですか?!」

「はぁ…召喚は失敗だ……」

「ええーーっ!?陛下を呼んでしまったのですよーっどうし……」

「何を騒いでいる、聖女は何処だ?」

「「「「「「!!!」」」」」」

扉を開け中に入って来たのは陛下だった。





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