1-2  『変化』

 とある街に誕生したとある家族にはある隠し事があった。

 一見すると普通の仲良し家族でしかない。大胆ながらに冷静な父。おっとりしているが実は慌てんぼうな母。目を離すとどこかに行ってしまう乳児。三人で構成されている【ティンゼル家】は街の小道に建てられた二階建ての家で暮らしている。


 父:レオネス・ティンゼル。

 母:レーゼン=マリー・ティンゼル。

 子:アルフォード・ティンゼル。


 そんな家族にある隠し事。それは誰にも知られてはいけないような大事な隠し事だった。何故ならば――母は元勇者で、父は元英雄なのだから。

 けれど両親だけでもなく子供にも隠し事がある。

 誰も知り得る事がない、転生者という隠し事を。



 ■□■□■□■□■□■□



 両親のフルネームを最初に知った時、一番最初に思い浮かんだ言葉は「母のフルネーム何?」という事だけだった。

 名前の規則性はかつての世界とはさほど変わっていないが、それでも多少の変化はあるらしくこの時代の名前は場合によっては複雑になっている事があるのだそうだ。


 二人の会話的に【=】は名前の綴りで、【・】は姓名の区切りを担っている様だ。つまりレーゼン=マリー・ティンゼルは“レーゼン=マリー”が名で“ティンゼル”が姓になる様だ。うん、分からん。


 そして自分の名前の事だが、アルフォードという名前なのに両親はずっと「アル」と呼称するので気づくのが遅くなった。ちなみに自分のフルネームに気づいたのは母が何かしらの書類に名前を書くときに名前を呼んだ時である。


 今まで気にしていなかったが最近になってようやく自分の容姿を知った。今生の自分は癖っ毛のある黒髪に右前髪の一部が黄色になっており、髪と同じく黒目ではあるが瞳孔が白色と珍しい容姿をしていた。

 父もこの髪色は珍しいと言っていたし、基本的には一色で統一される髪が部分で分けられているのは稀な様だ。




 それはそれとしてこれから先の事を考えて何か行動を起こさなければと考えている。このまま順調に成長するならそれ相応の教育を受けるのは当たり前だし、仮にそうでなくても生きる為には色んなものを身につけなければならない。子供の内からそれをやれるのならかなりのアドバンテージを得られるはずだ。


 だが赤子に出来る事なんてたかが知れている。運動なんてもっての外だし、技術を磨く事すらもままならない。よってある程度の知的探求心が満たされていたアルフォードは文字の習得を目標にした。

 色々するのであれば語学の習得は必要不可欠だろう。事実、生前で他大陸に赴いた際にその土地の言葉を使えなくて苦労した物だ。せめて自国語くらいは早めに習得しておいて損はあるまい。


 そんなこんなで両親に本が気になる素振りを見せると二人はいろんな本を読み聞かせてくれるようになった。元から早いうちに語学を学ばせておくつもりだったのか、家には子供向けの本が複数冊購入してあったらしい。


 とはいえしっかりとした手順を踏んではいないのだから当然覚えるのは難しい。語学の習得というのは何の学習もない状態から情報と言葉を合わせて刷り込ませるから成り立つ。

 例えば馬車を覚えさせるのなら絵を見せて「ガラガラ」と覚えさせ、その次に「ばしゃ」、その次に「馬車」と段階を踏む。だがアルフォードの場合は元の語学を習得している為、半ば古代文字を頭だけで翻訳する様な作業になってしまうのだ。言葉が分かるからある程度はマシだが……新たな単語を元の単語と照らし合わせて覚えるというのは中々に一朝一夕にはいかなかった。




 が、文字も覚えてしまえばなんてことはない。生まれてから約二年で簡単な語学を習得したアルフォードは絵本から入り様々な本を読むようになった。

 まぁ、流石に最初の頃は訳が分からなさ過ぎて顰蹙ひんしゅくしそうになったが。


 それ相応の時間が進んでいるというのもあってか本の内容はかなり面白い。生前にはなかった常識や発見された知識、文化の発展に伴う新たな風習等々、かつての世界では存在すらもしなかった情報がこれ見よがしに乗っている。とはいえ、全て子供用の本だから眉唾な物が多いし全て童話っぽく片付けられているが。


 両親が買い揃えていた中でも気に入ったり興味を引いたのは四冊だ。


 ・世界絶景百科

 

 ・リンドアスの大冒険


 ・一冊で分かる!? 世界の生物図鑑!


 ・不思議がいっぱい! 魔法と科学の解説書!


 どれも子供向けの本だからそこまで分厚い物ではないが中々に面白い。

 まず、世界絶景百科にはこの世界に広がっている絶景の数々が収録されている。大自然が作り出す幻想的な景色から人が作り出す眩い景色まで。これにより世界水準で高度文明が築かれている事を知った。


 次にリンドアスの大冒険とは大昔に存在したリンドアスという旅人が世界を巡りつつ書き記した本を物語にした物で、剣と魔法の世界で繰り広げられる大冒険を子供向けに分かりやすくまとめた本だ。

 どうやらこの世界では剣と魔法の世界は既に遥か過去の記録になってしまっているらしい。時折挟まれる解説ではかつての世界……いや、かつての時代からどれだけの年月が経ってしまったかが伺える。

 ちなみに、リンドアスは大胆な若造だとされているが実際には髭の生えたザ・魔術師! って感じの人だ(二千年前に邂逅済み)。


 世界の生物図鑑は動物や植物や昆虫などを基本に一般社会で流通している情報が纏められている。しかしこの世界にはまだ魔物や魔獣などがいるそうで、どこか見覚えのある個体から全く知らない個体までその生態と弱点が書かれていた。

 何よりもこの本で驚かされたのは竜の存在だ。何でも竜は長年人間と文化を共にして来た動物らしく、一般人には扱えないが、資格を取れば竜に乗り街を飛ぶ事が出来るのだとか何とか。


 そして最も気になったのが魔法と科学の解説書である。

 剣と魔法の世界が遥か昔になってしまったから魔法の存在は廃れてしまったと考えていたのだが、割とそうでもなく現在でも使われ続けているらしい。日常系から戦闘系まで幅広い活躍をしているのだそうだ。

 しかし科学というのは興味深い。生前で解明できなかった自然現象が分かりやすく解説されている。文化の発展に伴い様々な技術が進化したらしいが、その中でも科学分野というのが飛び抜けて進化したそうだ。「テレビ」や「スマホ」なんかもその進化の賜物なのだそう。


 その他にも五冊程度の本が買い揃えられていたが、大体が完全オリジナルの童話だったりした為、知識を欲していたアルフォードにとっては眼中になかった。


 完全に変わってしまったなぁと常々思う。まぁ転生後の世界が変わっているであろうという予想はしていたしそれ相応の覚悟もしていたが、まさかここまで大々的な変化を遂げているとは。


 今思い返してみればまだ赤子なのに童話関連に全く興味を示さないのは少し違和感があったかな~なんて思う。普通赤子ならこんな哲学的な本よりも童話に目がいくだろうし。

 両親が俗にいう「親バカ」であったため特に気にしていないみたいだったが。



 ――――――――――



 一か月後、我が家に変化が訪れた。

 突如として訪れた来訪者は驚きの姿……メイドの服装をしていたのだ。白く透き通った髪を腰まで伸ばしサイドポニーで縛っていて、一見するならば純白で統一された姿をしたメイドさんがやって来た。

 唯一白に染まっていない牡丹色の瞳を見せるとスカートの裾を持ち上げてお辞儀をした。


「この度は【メイドボックス】をご利用いただきありがとうございます。本日よりご奉仕をさせていただきます、白鍵しらかぎと申します。以後お見知りおきを」


「あなた、メイドさん! 本物のメイドさんよ!」


「あぁ! こう見ると凄いな!」


 自分達で呼び出しておいて何を言う。心の中でそんな事を呟きつつもメイドさん……ではなく白鍵を見た。


 年齢は母と同じ二十代前半くらいだろうか。身長は百七十かそれくらいと女性の割には高い。それにしても身長と比較してもそれなりに大きな物を持っている。

 これは自分が前世の記憶持ちだから変に感じるのかもしれないが、過去の世界ではメイドとはいえどあまりにも大きなバストサイズは見せびらかしている~みたいな風潮で白い目で見られていたっけ。今は平気なのだろうか。


 そうして【ティンゼル家】は新たな変化を迎えたのであった。

 ……が、真の変化を知るのは一か月後であった。



 ―――――――――



 白鍵が来てから一か月。

 どうやら白鍵を雇ったのは自分があまりにも活発だからというのが理由だそうだ。普通にしているだけならマシだが、目を離せばすぐにどこかへ行ってしまうし、二人はこれから仕事が入り始めるからどうしても目を離してしまう、という事でベビーシッターを兼ねてのメイドなのだそう。

 自分のフルネームを知った時に母が書いていた書類はその為の手続きに必要な物だった様だ。


「アルフォードさん、そちらに行っては行けませんよ」


「うっ……」


 両親がいない間は白鍵が面倒を見てくれている。本来ならば寝室にある本棚から本を取り一人で読むのが日課なのだが、やはりまだ二歳児という事もあり監視の目は厳しい。流石はメイド、隙が無い。


 “メイドとは仕える者。奉仕を任される以上、主君を安心させる為にも笑顔であれ”


 昔の世界では半ば常識であったメイドになる為の謳い文句である。身の回りの世話や家事を任されるからには信頼が必要であり、その為常に礼儀正しく笑顔であらなければいけないのだ。笑顔も信頼関係を築くのに大事な要素の一つだから人に仕える仕事である以上それは仕方あるまい。そういうルールもあり昔の世界では無表情のメイドはあまり見なかった。


 が、白鍵は無表情である。表情が動かない。ザ・クール。

 昔の世界ではそれでも一定の需要があったが、白鍵の場合は本当に「仕事だけを熟せればいいのでしょう?」と言わんばかりのクールさであった。


 そんな彼女にも当然裏はある。だがそれを知ったのは白鍵が部屋の掃除をしている時で、アルフォードはベビーベッドでうとうとしている最中にそれを聞いた。


「ふぅ、これで終わりっと。……あれ、予定よりも早く終わったわね」


 白鍵の作業速度は本当に早い。それも的確だ。その技量を見るとただのメイドとは思えない程に。


「いけない、まだ素早く片付ける癖が残っているんだわ……」


 そしてうたた寝している赤子しかいないからか、彼女はとんでもない事を口走る。


「こんなでは私が元暗殺者と気づかれてしまいそう……」


 ――!!?!?


 なんか、自分の周りは妙に口が滑る人が多い気がする。

 そんな事を考えつつもアルフォードは白鍵が元暗殺者だという真実について考えながら寝不足に陥った。



 ――――――――――



 三歳になった。

 喉もしっかりして言葉をしゃべれるようになってきた。とはいえいきなり流暢に難しい言葉を使ってしまうと怪しまれてしまうだろうから言葉遣いは気にかけている。


 言葉も会話も出来るようになってからは三人の事をもっとよく知れるようになり、新たに父が都市や国からの依頼でお金を稼いでいる事、母は魔術の才能から時折魔術教師として呼ばれる事がある事、白鍵は【メイドボックス】にいた頃先輩に喧嘩を吹っ掛けられてボコボコにした事などが判明した。


「それにしても、アルフォードさんはよく本を読みますね」


「面白いよ?」


「いえ、同じ内容の本ばかりを読んでいるのなら飽きないのではと」


 白鍵が休憩している途中、逃げようとしても逃げられないから彼女の視界内で本を読んでいたのだが、そんな会話から思い当たる事があって考える。

 そういえば新しい本はそんなに貰っていなかったか。まぁ半年も同じ本ばかりを読んでいればそんなような反応になるのも無理はない。自分だって昔の世界では魔術師の少女に似た様な事を問いかけた物だ。


「よろしければ私と共に新しい本を買いに行きましょうか」


 白鍵が気を利かせてくれているのは理解している。けれど今ばっかりはそれよりも目先の外の世界を肉眼で見れるという好機に食いついた。


「いいの?」


「レオネス様とマリー様は夕方までお仕事に行ってなされるので、私がお買い物のついでにお土産として、という態であれば心配はありません。もちろんこの事を言わないのであれば、ですが」


「いくいく! 行きたい!」


 最初の頃はクールだった白鍵もそれなりに垢抜けて本音の部分が見えるようになってきた。

 どうやら白鍵はクールではあれど根はやんちゃな部分があるらしい。普通のメイドであればこんな提案なんてすることはないだろう。まぁ親が親だし相手が子供だから大丈夫という考えもあるのだろうが。




 そんなこんなで白鍵と共に買い物へ出かけて三冊の本を買ってもらい、早速その日から新しい本を読み更けていた。


 買ってもらった本は魔術、化学、歴史の三つ。この世界の大体の状況は把握できた為、次に何が変わり何が必要なのかを求める為にこの本を買ってもらった。まぁ流石に三歳児で歴史に手を出し始めても詳しくは理解できないだろうが。

 ちなみに白鍵は子供が歴史書に手を伸ばすのを何とも思っていなかった様だ。「これが普通なの?」と言っていた辺り世間には疎いのだろう。


 そうして魔術、化学の本を四か月以上もの時間を要して読み切った末、更に長い時間を消費して一つの結論を導き出した。


 どうやらこの世界の魔術はかなり近代化が進められており、自分がいた時代よりも遥かに高度な物に仕上がっていた。というのもそれを手伝ったのが科学だ。何でも既存の魔術に科学的解釈を挟む事によりそれまでとは比較にならない程に進化したのだとか何とか。


 以上を踏まえての結論は“魔術=科学”、“科学=魔術”の計算式が成り立っているという事だ。


 魔術は科学によって進化し、その魔術を用いる事で科学は進化していったらしい。互いに共存し合い互いに必要不可欠な物となれば、それはもう常識と言ってもいい程に差し支えない。

 実際かつての世界では魔術しか存在していなかった為、文明の発展は著しかった。その上新しい技術を開発しようものならよく戦争になっていたから百年かけて進んだ技術が一か月で五十年衰退していたほどだ。そう考えればこの世界の技術は世界水準という事もありかなり安定している。


 まだ科学がいつから誕生したのかは分かっていない。が、そこは歴史の方を読み漁ればある程度は見つける事が出来るだろう。


 知識を得たいというのなら魔術、科学の他にも歴史を読むべきなのは理解している。特に前者の二つなんかは日常生活において切っても切れない関係だ。この世界における理解度を深めたいのならば読むべきだった。


 ただ……単純に怖いという思いもあった。

 同じ世界だとしても明らかに文明をまたいでいる。そこから見ても豪傑と呼ばれていた自分を知っている人物は誰もいないのだと分かっている。だからこそ、大切な仲間達がどれだけ過去の人になってしまったのかを知るのが怖いのだ。最近こそ慣れてきたがそれを知るときっとまた胸が締め付けられるはずだから。


 しかし、満を持してついにその手を伸ばして歴史を漁り始めた。これで全てがハッキリとする。歴史の中に自分が知っている時代の名前が一つでもあれば時代を超えての転生となる。

 あの時……最後に生きていた時代はナロッセス時代だからそこを探せばいいか。


「ナロッセス、ナロッセス……」


 歴史的事件とか快挙などは全て無視してひたすらに歴史書で時代をさかのぼっていく。やはりある程度の時間が経ってしまっているのか、遡っても全く聞き覚えのない時代の名前が出て来ている。


 ヴォギトス、エプスダロク、ラーゼスといくつかの時代を下っていくとようやく目的のナロッセス時代の名前を見つけて心からの安堵の息を付いた。


「見つけた!」


 この世界で生まれてから三年間ずっと不安だったものが今晴れたのだ。

 アルフォードは時代を超えて転生した。つまりこの世界はかつての時代から続いていて、ここにはいなくとも仲間達は確かに存在していたのだ。もし全くの別世界だったらどうしよう、という不安はずっと拭えなかったから本当に安心する。


「よかった、時代は続いてたんだ……。よかった。本当によかった……っ」


 気を抜くと今までに堪えていた分がぶわっと溢れてしまったのか止めどなく涙が流れて来る。

 これで安心してみんなとの約束を果たせるのだ。

 これで、ようやくみんなの想いを繋ぐ事が出来る。


 時代が繋がっていると分かった瞬間から今までの思い出が脳裏で再生されて色んな感情がなだれ込んだ。願いが叶って嬉しい気持ち。やはりもう二度と会えないという悲しい気持ち。約束を守らなければいけないという暖かい気持ち。それらの感情はもう一度涙となって頬を伝った。


 ――そうすりゃ俺達ゃ名実ともに――――世界最強のパーティだ!!


 そうだ。

 生前の■■は強さと引き換えに寿命が決められていた。だから強さは使命という鎖となって縛り付けられ、寿命は焦燥となって体を焦がした。


 仲間たちは絶対に諦めたりなんかしないはずだ。あの時代で、どこかの日で、必ず最強と呼ばれるパーティーになったはずだ。最強の少年がいたパーティーを、後世まで残し思いを届けられるように。

 ならば自分だって諦める訳にはいかない。過去に自分が、未来に仲間がいないのだから、例え自分が何をしても誰も世界最強のパーティだと言ってくれはしないだろう。だが、それでいいのだ。


 時代を超えて尚も意志だけで繋がっている。

 それこそ、最高にかっこいい理想ロマンではないか。


 根源的呪いは今生で解呪された。だから生前では三歳児で巨石を砕いた手は小石すらも砕けない。

 面白いではないか。

 五十からスタートして七十で終わった人生が、今新たにゼロから始まっているのだ。


「……俺、生きるよ」


 仲間達の願いと理想ロマンを背負っている。なればこそ、必ずやり遂げなければならない。

 それに、苦難に挑むのは嫌いではない。割と好きでもないが。


「俺は、今度こそ自由に生きてみせるよ。みんながいないこの世界で、俺なりの幸せを見つけるために……」


 拳を握り締めて時代を超えた仲間にそう応える。

 時代が違えど仲間達は同じ空の下で戦っていた。なら自分だって。


「どんな事だって乗り越えて見せる。もう泣いたりなんかしない」


 自由に生きるからってそれが百%仲間達への報いになるわけではないだろう。ただそれでもこれは仲間達が送ってくれた最後のプレゼントだ。

 自由に生きる。だから、使命なんて関係ない。

 自分の命の使い方は自分で決められるのだから。


 だが。


「……でも、ある程度の力は取り戻したほうがいいよな。危険がない訳ではないんだし、それこそ望むのなら最強とか最強とか……あれ? ほぼほぼ変わってないような……?」


 ナロッセス時代からはいくつかの時代を挟んでいる。であれば当然それ相応の時が過ぎている訳で、この書籍が製作された二年前から遡ったナロッセス時代の年月を見て驚愕した。


「……え?」


 時代とは長い物だ。実際、ナロッセス時代から過去の時代を遡っても余裕で百年を超えている。中には世界が滅んで空白の数千年があったとか何とか言われていたけど……。


「に、に――――」


 まさか、ソレをなしにしてもこんなに時間が経っていたとは。




「二千年ンンンンンンンッ!?」



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