第41話・ATM

律子の隣の席に座る 福座ふくざ 津奈つなの元には、休み時間の度に双子の弟である かん けいが今日もり寄って来ていた……


圭「津奈?何処どこに行くの?」

津奈「トイレよ…」

圭「じゃあ 僕も行くよ」

津奈「女子トイレに来る気!?変態!!」

圭「アハハハ〜津奈ってば 夜中怖くてトイレについて来て〜って言ってた癖に」

津奈「アホか…そりゃ何年前の話よ……」


二人のやり取りを聞いていたミナは 普通の姉弟きょうだいってこんなに仲が良いものなのか?…と疑問を感じていた。


律子「ミナ?どうしたの?鳩が豆鉄砲を食らった顔してるよ?」

ミナ「リッちゃんにしては妙な言葉を知ってるね…」

律子「うん 意味はわかんないけど さぞかし痛いだろうね」

ミナ「いや…それはそう言う意味の言葉じゃ…まあ…いいよ…あの二人仲が良すぎて怪しくない?」


あの二人と聞き 律子は思った…他人の恋バナ好きのミナの事だから、また福座ふくざ 津奈つなかん けいの事を勘繰かんぐっているのだろうと……


律子「いや…あの二人は双子の姉弟きょうだいだよ?アンタだってお兄さんがいるんだから 仲良くするでしょう?」


兄と聞きミナは 少しあきれ口調で答えた。


ミナ「おにいなんて全然構ってくれないよ つまんない」

律子「おにいって呼んでるんだ…仲良しじゃん……」


ミナは更に語気を強めて語り始めた。


ミナ「テストで良い点を取ったら 嬉しそうに頭をナデナデして来るんだよ?毎回だから鬱陶うっとおしくてたまんないよ」

律子「はあ…アンタいつも良い点を取ってるからね……(自慢かよ)」


更にヤレヤレと言う口調で ミナは偉そうに答えた。


ミナ「やたら映画に連れってくれるんだけど ホラー映画ばかりで嫌になっちゃう、大学生の癖に小学生の女の子をホラー映画になんか普通誘う?おにいは本当に馬鹿なんだよ」

律子「映画に連れてってくれるの!?アンタそれ充分愛されてるんだよ…福座ふくざさん達の事を全然言えないじゃん……」


津奈「私達がどうしたって?」


不意に津奈が席に戻り 二人に話しかけて来た。


律子「ふ…福座ふくざさん!?」

ミナ「話を聞いてたの!?」

津奈「映画がどうとかって?」

律子「そ…そ…そうなのよ…ミナがお兄さんと良く行くらしくて…その…福座ふくざさんとけいくんも二人で良く行くのかなって……」


律子の問いに津奈は隣でまとわり付くけい鬱陶うっとおしそうに見つめながら答えた。


津奈「行くわよ 昨日も一緒にホラー映画を見に行った」

ミナ「え!?行くの!?」

津奈「まあね けいが怖がってきついて来るから大変だったわよ」

ミナ「きつく?……」


その瞬間 ミナの目が輝いた…気がしたが……律子はその目を良く知っていた…恋バナのにおいをいだ時のあの目だ……


ミナ「あの〜…二人の関係って…もしかして……」

津奈「こいつと行けば映画代を出してくれるからお得なのよ、けいは私にとって『ATM』な関係よ」

律子「けいくんって『ATM』なの?……」

圭「いや〜照れるな〜アハハハ〜」

律子「それ…絶対褒められてないよね?」


『ATM』な関係と呼ばれ けいは嬉しそうにしていたが、明らかに褒められた関係では無かった……

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