第37話・根倉姉妹

保健室から出て来た律子は、あきれ顔で腕組みをする親友のミナに言った。


律子「いや~アハハハ…バンソーコ貼られたよ…めっちゃヒリヒリする…」

ミナ「全く…調子に乗りすぎだよ、会長にマークされても知らないから」


律子は校庭で四ノ宮と駆けっこ勝負の後、野球のボールをおでこに受け保健室に担ぎ込まれた。放課後の校庭は様々な部活動の巣窟で、一般生徒が歩き回るのは危険がいっぱいだ……


律子「カイチョーってそんなに偉いの?」

ミナ「リッちゃん知らないの?下級生の憧れだよ、常に成績はトップだし委員会でも凄い人望なんだよ?」


学校には遊びに来ている様な感覚の律子には、全く知らない世界だった。


ミナ「オマケにリッちゃんみたいな、ポンコツのボンクラだって更生させるの」

律子「アンタの毒舌って…本当に親友なのか疑問に思える時がある……」


律子にとってミナの無自覚な毒舌は、時折心をむしばんだが、そこはまあ…長年の親友だと言う事で心をグッと押さえていた。


律子「でもさ、あの独特のメガネに成績優秀って、アンタのライバルの根倉さんに似てない?」

ミナ「じょ…冗談でしょう!?辞めてよ!!あんなガリベンメガネ!!!!」


生徒会長とミナのライバルである根倉が似ていると指摘され、ミナは全力で否定をしていたが、それほどまでに生徒会長を尊敬するミナの事を、成績に於いてはカースト最下位に近い律子には全く理解が出来なかった。


根倉「わたしに何の用?」


騒ぎを聞きつけたのかどうかは定かではないが、渦中の人である根倉が二人の前に現れた……


ミナ「ゲッ!?ガリベンメガネ!!??」

律子「噂をすれば現れるのね……」


敵対心を燃やすミナを無視して根倉は律子の前に進んだ。


根倉「アンタの事は見直したわ、百点取ったじゃない?」

律子「ミナ!!褒められたよ??案外いい人じゃない!?」

ミナ「騙されちゃダメよ、メガネで成績が良くても会長みたいに尊敬なんか出来ない人なんだから」


会長と聞き根倉は勝ち誇った様な顔をしてミナに言い放った。


根倉「フン!!三番目ごときのアンタなんかが、お姉さまの事を尊敬してる?身のほど知らずね!?」


お姉さま……根倉の放った信じがたい言葉を耳にし、ミナは巨大化…した様に律子の目には見えた。


ミナ「お…お…お姉さまですって!!??」

律子(ミナ…でかいよ……)


ミナにとって受け入れ難い言葉を根倉は再び放った。


根倉「根倉ナナ!!生徒会長はわたしの姉よ!!」

律子「カイチョーの妹さんだって……」

ミナ「イヤ~!!憧れの会長とガリベンメガネが姉妹なんて嘘よ~!!!!」


翌日からミナは、委員会で生徒会長の姿を見つめ根倉と似ていない部分をひたすら探し続けた……

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