第9話・ライバル

律子が学校の廊下を歩いていた時……。


女生徒「ちょっと、中川さん」

律子「え?二組の四ノ宮さん?」


その女生徒は、四ノ宮と言い短いツインテールに、小さな二つのリボンをした元気そうな女生徒だった。


四ノ宮「噂で聞いたわよ、アンタ最近……」

律子「?」

四ノ宮「すっかり、かよわくなったって」

律子(な…なんですと~!!??)

四ノ宮「全く情けないったら、ありゃしない」


四ノ宮は腕組して、律子に残念な眼差しを向けた。


律子「あ…いや…その…誤解だよ、かよわくないよ全然……」

四ノ宮「じゃあ、かよわくないって証明して」

律子「証明って、アンタ…わかったわよ」


律子は、腕まくりして気合を入れた。


律子「ギタギタのボロボロにしてやるぜぇ~!!」

四ノ宮「このおバカ!!殴り合いをする訳がないでしょう!!アンタはジャイアンか!!」

律子「じゃあ、どうやって証明を?」


四ノ宮は、含み笑いをして言った。


四ノ宮「フフフフ、マラソンで勝負よ!!」

律子「え?マラソンって…あの…走るやつ?」

四ノ宮「当り前よ!次の体育の時間は私の二組とアンタの三組が合同で、マラソンをする事になってるのよ!!」

律子「つまり?」

四ノ宮「先にゴールした方が勝ちよ、まあ自信が無ければ別にいいケドね~」

律子「やるわよ!!勝負してやるわ!!」

四ノ宮「決まりね」


そこへ、律子の席の隣に座る転校生の福座 津奈(ふくざ つな)が現れた。


津奈「ちょっと!!中川さんにちょっかい出さないで!!体が弱くてかよわいんだから!!」

四ノ宮「この子、誰?」

律子「転校生の福座さん…多分すごく良い人だよ……」

四ノ宮「ふ~ん……」


そして、マラソン対決の日がやって来た。


律子「遂にこの日がやって来たわ!!」


律子はハチマキを絞めて気合を入れていた。


律子「もう誰にも、かよわいなんて言わせない!!」

律子の母「格好つけてないで、早く学校に行きなさい!!遅刻するわよ!!」

律子「は…はい……」


そして、体育の時間を迎えた……。


安田「四ノ宮さんと勝負!?」

ミナ「それで、気合入れてハチマキを?」

律子「そうよ!!あの子には負けられないの!!」

安田「まあ、頑張ってね……」

律子「かけっこは得意!!福座さんにも、かよわいとは言わせないわ!!」

ミナ(四ノ宮さんとの勝負より、福座さんを見返したいのね……)


しかし、体育の時間になっても四ノ宮は現れなかった。


安田「その四ノ宮さんって、どこにいるのさ?」

ミナ「そう言えば、どこにもいないよね?」

律子「わたし、探してくるわ」


律子は、二組の生徒達に尋ねた。


二組の女子生徒「四ノ宮さん、どこにもいないのよ……」

二組の男子生徒「あいつ学級委員だから、いてくれないと困るんだよな」


二組の生徒達は困っていたが、不意に四ノ宮が律子の側に現れた。


律子「アンタ!!今までどこに?二組の人、困ってるのよ!?」

四ノ宮「い…いや、ちょっと……実はね…」


四ノ宮の足には、包帯が巻かれていた。


四ノ宮「盛大にこけて痛いから保健室に行ったら、走っちゃダメって言われた…」

律子「な…何それ!!??アンタだって、かよわいじゃない……」


二人の勝負は、終わった……。


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