第6話・かよわい乙女

律子は隣の席の転校生、福座ふくざ 津奈つなに、かよわい女の子だと思われている事に悩んでいた。


(何とかして福座さんに、わたしが全然かよわくないって認めさせなきゃ)


先生「お~い!すまんが誰か、この本を図書室に返して来てくれ~!」


山のように積まれた本を前に先生が生徒達に声をかけた。


津奈「わたし…行こうかな…」


津奈が先生に申し出ようと立ち上がったが、その前に律子が元気に申し出た。


律子「ハイ!!先生!わたし行きます!!」

先生「おう、頼むよ中川」


山のように積まれた本を前に津奈は律子を心配した。


津奈「あなたに持てるの?」

律子「持てるわよ!わたし、かよわくないですから!」


律子は山のように積まれた本を持ち教室を出た。


律子「ちょ……これって……意外と重いんですけど…」


本の山は意外と重く律子の腕はプルプルと振るえた。


津奈「ねえ?中川さん、それわたしが持とうか?」


津奈が後ろから声をかけた。


律子「いや…でもコレ…めっちゃ重いッスよ…」


津奈は律子から本の山を取り上げた。


津奈「なんだ軽いじゃない?大げさね」

律子「え!?ちょっ!?か…軽々と……」


津奈は本の山を軽々と持ち運んだ。


律子(あの程度の荷物すら運べないなんて……)


律子は机の上に、ショックでうなだれた。


津奈「また調子が悪いの?」


その姿を見て津奈は心配した。


律子「い…いえ…平気ッス…」


休み時間に男子生徒が大声で叫んだ。


男子生徒1「誰か!!俺と腕相撲やろうぜ!!」

男子生徒2「お前、何だよ急に?」

男子生徒1「昨日、腕相撲の世界大会のテレビを見たんだ。ネットで調べたら結構有名らしいぜ」

男子生徒3「ふ~ん…」

男子生徒1「さあ!!俺に挑戦する強者はいないのか!?」


挑戦者を求める男子生徒を他所よそに津奈がつぶやいた。


津奈「どこの学校でも男子って馬鹿ね…」


律子は立ち上がった。


律子「この、わたしが受けてたつわ!」


律子は腕相撲勝負を挑んだ。


男子生徒1「え?リッちゃんが??」

津奈「ちょっと…辞めなさいよ…かよわいんだから」


津奈は律子を心配して止めた。


律子「平気!わたし、全然かよわくありませんから!」


だが…律子は負けた……。


律子(か…軽くひねられた……)

津奈「何してるのよ?アンタが男の子に勝てるわけ、ないじゃん」

律子「うぐっ……」


うなだれる律子に津奈は言った。


津奈「ねえ…中川さんって本当に……」

律子「え?」

津奈「かよわい乙女だよね~」

律子(な…何ですと!!??)


律子は、その一言にショックを受けた……。


ミナ「ねえ?どうしてそんなに、かよわいのが嫌なの?」


親友のミナは廊下を歩きながら律子に尋ねた。


律子「嫌なものは嫌なの…」


そう言う律子に悲劇が襲う…。


ドン!!ガン!!


律子「ぐふぉっ!!……」


律子は、よそ見をして歩く男子生徒にぶつかり、その反動で教室のドアにも激突して倒れた。


ミナ「リッちゃん!!しっかり!!」


心配するミナ……。


律子「ミナ…わたしはもうダメみたい…今までありがとう…元気でね……」

ミナ「そんな大げさな…」


律子は倒れて弱気になっていた。


ミナ「リッちゃんらしくない!どんな時も前に進むのがリッちゃんだよ!!」


落ち込む律子にミナが言った。


律子「前に進むのが…わたし……」


律子はミナの言葉に目が覚めた。


律子「ミナ!わたしが間違っていたわ!!」

ミナ「リッちゃん!!」


感動のシーンと思われたがそこへ……。


津奈「中川さん…またこんなところで倒れたりして…あなたって、とことんかよわい人なのね……」


津奈が現れ律子を介抱し始める。その光景を見たミナは思った…。


(せっかくいい感じで終わろうとしてたのに台無しね…)

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