005 :光明を喰らう晦冥
不思議な感覚だった。
死を直前しているからなのか、感覚器官さえ機能しなくなったからなのかはわらかないが、不思議と痛みは薄く、ただただ、寒くて、眠い。
両足と片腕はなく、失ったそこを止血する為に巻き付けている布からは今だ赤い血液が滲み零れている。その量は止めどなく、それら全てが自分の中から抜けているなど信じられなかった。
視界は常に霞がかかっており、時折、暗転しては彼の声援に起こされる。
全身に感じる酷寒。それを少し和らげてくれるのが胸にかかる彼の背から伝わる優しい温もりであった。
凍え切った身体にほんの少しの温もり、根本的な酷寒がなくなったわけではない。しかし、それを感じると、眠ってはいけない。
生きないといけない。と強く心と身体が反応してくれるのだ。
「 タイプ『
彼の呟きが耳に入る。
タイプ『
『
外見、能力は『
『 Second・Third-Phase 』
『
現在考案されている『
僅かに働く思考で、先ほどまで対峙していた
アレがナニの生物を捕食しその外見を反映させていたのかは暗闇の影響で視認できなかった。しかし、自らを襲った
ただの『
ならば間違いなく、彼の推測通りアレはタイプ『
更に建物を包囲している『
そうなれば、今ここにいる全員が生き残れる確率は限りなく低い。どこまで逃げようと『
一体どうすれば、生きて帰れるというのか・・・
「 ・・・・二人を守って、絶対に帰ろうぜ 」
優しく添えられた手から彼の柔らかな温もりが更に伝わる。まるで自分の考えが見透かされているかのように、最も欲していた言葉を耳に自然と笑みがこぼれた。
しかし、その笑みに反して彼は柔らかな声色とは違う、どこか力強さを感じさせる言葉を口にする。
「 俺たちが、あんたの仲間の思いを引き継いでこの人たちを生かすんだ。大丈夫、俺たちならやれるさ。だから、その傷でかなりキツイと思うけど、少しだけ・・少しだけ力を貸してくれ 」
一瞬その言葉に耳を疑う。
役に立たないはずの自分の、足手まといにしかならないはずの自分の力を、彼は欲しているのだ。
もはや、戦うことはできない。今はただただ生きていたいと願うことしかできないと思っていた。
しかし、彼は言うのだ。
戦えと・・あんたはまだ戦える。と
多量の血液を失って、脱力がかかった身体に闘志が湧いてくるのがわかった。
それは失ったはずの力が戻ってくる錯覚さえ感じさせる。再び灯った戦う覚悟が、助けたいという信念が視界を蔽っていた霞を僅かに晴らした。
いつの間にか、今自分の胸にある思いが『生きたい』から『生かしたい』に代わっているのだと気づく。
「 せん、どう・・ 」
「 え? 」
「 私、の名前です。仙道、導。えへへ・・『あんた』じゃ、ありません 」
どうにか絞り出した言葉に彼は少しの笑みを洩らす。
そして手に握ったままであった自動拳銃をどうにかホルスターにしまい、手を差し伸べる彼へと今出せる一番の活力を持って力強く『戦友』としての握手を交わした。
「 よしッ!!じゃあ導さん!!よろしく頼むぜッッ 」
自分に何が出来るのかは分からない。けど、もう互いに笑いあう事が出来ない仲間たちの為にも戦わなければ。彼らの願いもまた。同じなのだからから・・・
ーーーーーーーー
「 それで、私は・・何をすれば? 」
交わしていた握手を解き、導が疑問を投げかける。それを耳に顔を渋め、彼女の仲間たちだったその血肉の淀みへと身体を向けた。
背に抱えられた彼女もソレを目に、涙をこらえ顔を強張らせる。
「 今は何より情報が欲しいんだ・・・導さんたちは、何の任務でここに来たんだ? 」
「 私たちは、桂浜基地に・・・新装備を輸送する任務を、していました。その途中で・・昼食をとるために、ここへ・・ 」
その返答を耳に「やっぱりか」と呟きを漏らす。そして視線を彷徨わせ、周囲から何か物資を回収できないか視察した。
「 ってことは店の外には『Garumu』の輸送車両があるんだよな。噂ではその車両って防爆・防弾装甲で出来てるって話なんだけど、それは? 」
彼女が「本当です」と声を絞り出す。
その最中も視察を継続。そして肉片の傍らにある銃口が抉れ削れた自動拳銃を手にした。これを観れば無残な最期を遂げた彼らの勇姿が目に浮かぶ。
しかし、ここまで銃口が変形したこれはもう武器としては使えない。
弾倉を排出するが残弾はなく、心疚しさを胸にそれを元の場所に戻した。
「 ならその輸送車両を使ってここから脱出しよう。問題は、ここから出てどうやって車両まで辿りつくか、だな 」
暗闇の天井に目をやる。おそらく今だ『
時間がかかれば更に凶悪となったソレは再び
そうなれば、最早完全なる終わりだ。
現状の装備、状況ではどのような対抗策を考案しても無意味となるだろう。
思考を巡らせる彼に対し、導は小さく「おじいさん」と店主へと声を向けた。
「 なんだ?お嬢ちゃん? 」
「 さっき預けた。無線、機を・・ 」
それを聞き店主はポケットから厨房で八条蓮と通信を執った際に使用した無線機を取り出し、柘榴へと渡した。導、そして今は亡き彼らが自分たちが全滅したとして。もし
「 柘榴、君。それを、今から言う。周波数に・・合わせて 」
「 お、おう 」
周波数を導が必死に絞り出した言葉の数に合わせる。すると無線機は『音声認識』という電子音を受信した。すると彼女は「それを」と呟き彼から無線機を受け取る。
そして不自由な身体に大きな深呼吸によって大量の酸素を取り入れ、荒れる呼吸をどうにか納めた後、ハッキリとした口調で無線機へと言葉を発した。
「
『・・・認証しました』
「 エンジン起動。サイドブレーキ解除。バック。自動運転。搭乗 」
「 ・・・自動運転、そんな機能もあったのか!!ナイスだ、導さんッ 」
無線機越しに指示を終えると彼女は我慢していた反動だろう、激しく咳き込む。その中には損傷した内臓から漏れた血液も混じっており、それらは導を背負う彼の背へと向けられた。
必死にそれを抑えようと努める導だが、ただでさえ弱った肉体に更に無理を重ねたのだ、そう簡単に身体の悲鳴を止めることはできず、彼女は「すみません」と小さく、謝罪の言葉を漏らす。
それに対し「気にするな」と返答し、彼女から無線機を受け取る。そして店主へと視線を移した。
「 おっちゃん。この地下にある他の出口はどこだ!!案内してくれ、あるんだろ 」
「 お、おぉ。こっちだ。」
店主に小型ライトを渡す。
彼女の指示通りに車両が動いたなら、おそらくそれは無線機の発信源を探知。対象が内部にいるであろう建築物の外で待機しているはずだ。
してなければこの計画は終わり、笑い話にもならない。
夜目が効いてきた肉眼で、孫娘の腕をとり進む店主の後を追いかける。
背にする彼女の呼吸が更に荒くなっている。もう限界か・・・
輸送車両に更に処置できる設備、薬があれば良いのだが。なければ、彼女は・・基地まではもたない。
その思い、現状、そして時間を追うごとに激甚を増す惨憺たる戦場がかつてない程に思考を鈍らせる。
自分だけがそれに対面する分には構わない。例えどのような怪物が目の前に現れようと、予想外のアクシデントに見舞われようと、内に宿る冷静を保つことができるだろう。
そのように鍛えられてきたのだ。
しかし、自分以外の命が関わってくるのなら話は別だ。
訓練では他人は死なない。
ここまで必死に誤魔化してきた。目の前で『
・・・助けたかったんだ。
死んでほしくなかったんだッッ!!!
蓮は何度も、それこそ耳に胼胝ができる程にいう。
「なにがあっても冷静でいろ」と・・・
例え目の前で誰かが死のうと。殺されようと。
冷静を失った者にできることは、そうでないものと比べると明らかに劣る。
一人でも多く救いたいなら、『死にたくないなら』。どんな状況でも心を落ち着かせろと・・・
ここまでは、自分の力量で乗り切れる範囲内だったからこそ、まだ余裕があった。
しかし、残された相手は『
もちろん、ソレとの戦闘経験など一度もない。机上の情報など突き付けられる現実の前ではあまり役に立たないことは、これまで巡ってきた戦場で嫌という程に学んできた。
『生きる』為なら戦わないことが最善の策だろう。しかし『生かす』為には・・逃げられない。
『D2マグナム』をその身にして、初めてだった。
不安と焦燥に心が支配されようとしているのは・・・
しかし、感情よりも身体は身に着けていた技術を、感覚を最大限活用しようと働いてくれる。
血の臭い漂う地下空間に似合わない”潮の香り”が鼻についたのだ。
「 なんでこんな地下で海の匂いが・・ 」
店主に声をかけ、静止する。そして小型ライトを借りると香りの元へと灯りを向けた。
現状、それは気にするべきことではないのかもしれない。
もし、その香りの元を知ることで『
しかし、そう思考するのは焦燥に駆られた自分だ。冷静な自分が語り掛ける。
これは知らなければならない。
そう・・後に一人でも多くの命を救うために・・・
「 どうしたんだ、坊主。そこには何もない壁があるだけのはずじゃが 」
「 ・・・いや、なんだこれ。どこまで続いてんのかわからないけど穴開いてるぞ 」
灯りに照らされたそこには人が余裕で通れるほどの、トンネルを思わせる大穴。その先から潮の香りがするにこの先は海につながっている・・・
そして穴と地下空間を挟んだ先へと灯りを当てると、そこにももう一つの大穴。
「 これは・・・ナニカが『
ポケットから取り出したスマートフォンのスリープを解除。待機画面にいくつかの通知が来ているが、それを気にせず地図アプリを起動し、ソレを現在地と連動させると、ナニカが掘り進んでいる先には・・・桂浜基地がある。
冷や汗が流れた。到底、偶然には思えない。
「 これは・・・知らせといたほうがいいな 」
周囲に広まる血肉の臭気が気になるが、今だに内側で胸を叩き騒いでいる焦燥を冷静で覆い捕らえるためにゆっくりと深呼吸を繰り返す。そして無線機の電源を入れ、周波数を蓮と通信したときのモノに合わせた。
・・・
しかし、数十秒が経っても送受信される電波はなく、スピーカーからは耳障りなノイズのみが発せられている。前回よりも念入りに確認するが、無線機の故障ではない。
なら、これは・・・
「 電波が上手く届いてないのか、それとも・・・ナニカに妨害されている。・・・嫌な予感がする 」
繋がらない無線機を無駄に起動し続け、その電池を消費するのは愚の骨頂だ。電源を切り、それをポーチにしまう。そして踵を返し、店主にライトを返した。
「 おっちゃん。急ごう!! 」
「 おう。出口はもうすぐそこだぞ 」
再び暗闇の中を速足で進む。
現状をどうまとめても。結論は『ナニカがこの四国を攻撃してきている』というものにしか辿りつかない。
おそらく超・高度なハッキングによるものであろう『フレイヤ』システムの停止。
機を待っていたとばかりのタイミングで襲撃してきた複数の
そしてそれに平行して地下を掘り進み『
しかし、誰がなんの為にこんなことを。それにどうやって
どれだけ考えても頭に中にある情報だけでは答えは導き出せない。
気が付くと、呼吸を整え落ち着かせたはずの心臓はその鼓動音が外に漏れているのではないかと思える程に大きく脈だっていた。
速足で歩いているだけなのに、まるで訓練でもしているかのように多量の体力が失われていく。
それは自分の荒れた吐息が耳に入る程で、本能が日常的に行っていた呼吸という動作を拒否したかのように『息をする』という行為を常に意識していなければ身体が酸素を肺へと取り込んでくれない。
これが、蓮が危惧していた戦場で『冷静を失う』ということなのか。
「 ざ、くろ・・・君 」
不意に背にする彼女の、か細くまるで簡単に千切れてしまいそうな糸を思わせる声が向けられる。
足を止めずに聞き漏らしのないよう集中。焦燥が露わとなっている顔を見られないように、冷静を努めた声色で「どうした?」と言葉を返した。
「 ・・・019・・・0。7。・・・2・・・ 」
「 え?それなんだ?導さん・・・導さん? 」
彼女の口から発せられる数字たち。
しかしその数字たちを言い終わるよりも先に、傷つき抗い続けていた導の肉体は限界を迎えようとしていた。激しい咳き込みと共に背にかかる赤い雫たち。
「 おいッ導さん。大丈夫か!!?導さんッッ 」
足を止め、必死に呼びかける。
おそらく気を失ったのであろう返事はないが、その顔を覗き込むと、いつ最後の糸が切れてもおかしくない程に苦しみを浮かべた、しかし必死に生きようともがいている瞑られた顔つきが見えた。
本格的にタイムリミットがこようとしている。
急いで、急いで車両に乗り込まないと!!!
「 なんてこった!! 」
少し先でとどまっていた店主が絶望を叫んだ。
視界をそちらに向け少し進むと、前方に現れる厚い合金で作られた大扉。
ほんの少しだけ胸をなでおろす。
この扉の先に車両がある。そこで処置できれば、まだ導が助かる見込みはまだある。
しかし、店主はその扉の鍵をガチャガチャといじっては、イラつきを浮かべ続けていた。
「 どうしたんだ、おっちゃん!! 」
「 と、扉の鍵が錆びちまってて開かないんだッ 」
思わず舌打ちをしてしまう。店主の後ろにいた娘はあまりにも険しい顔つきとそれに「ひっ」と恐怖を漏らした。
こんな所で止まれない。謝罪などあとでいい。
自分が今どんな顔をして、口調が強くなっているなど関係なく、店主に叫ぶように言葉を向ける。
「 おっちゃん、導さんを頼む。後、これの弁償は『Garumu』に頼むぜッ 」
彼女を降ろし、店主へと預けた。
そしてホルスターにしまっていた『D2マグナム』を手にする。
ずっしりとした重量、両足に力を籠め。放つことによって全身を襲う、規格外の反動に備える。
「 耳を塞いでろッッ!! 」
店主が自分の二の腕で導の両耳を塞ぎ、周囲のもの全てが音を遮断したのを確認して引き金を引いた。
そして伝説に登場する『ドラゴン』の咆哮を思わせる、強烈な轟音。
扉に放たれたソレが当たることによって巻き起こった埃煙は一瞬にして、あまりにも強大な破壊力から生まれる暴風によって地下奥深くへと吸い込まれていく。
強大すぎる威力。全ての装甲を打ち貫く為に生み出された武器。それがDORGシリーズだ。
その試作型
『D2マグナム』は例え空襲であろうと耐える強度を誇るシェルターの大扉を一撃で凹み亀裂を走らせる。
錆びあがっていた鍵は粉砕され、元の形を保っていない。
「 あと、一撃。耳塞いでろよ、みんなッ 」
その規格外の反動は両腕に深刻な痺れを起こす。
大砲を両手で支えて撃っているようなものなのだ。そもそも両腕が瞬時に脱臼していないということ自体、彼が訓練によって身体を慣らしている証拠であった。
この銃の使用は”人より身体構成的に進化している”『
『
一発撃つごとに両腕に走る痺れ。それは時間にして約5秒で収まるが、その間両腕はまともに力が入らず使い物にならない。
加えて、そのダメージ自体が肉体から消えたワケではないため、現状では一日で7発以上発砲すれば。両腕の筋肉繊維のいくつかが千切れ、回復するまでの数日間腕が完全に使えなくなるのだ。
そして5秒が経つ。
腕の痺れが引くと同時に、大扉にとどめの一撃を放った。
再び轟く咆哮の如き銃声。
それによって大扉はまるで爆発によって吹き飛ばされたかのように抉れ跳び、地下へと眩い陽光を差し込ませる。
そしてその先で待つ。バック駐車された車両。
それは一般的な中型4tトラックと同様に見える全長12000mm、全幅2500mmのボディー。しかし、その荷台の装甲は一目で強固なものだと理解できる程に厚く、更にそのタイヤも特殊なもので通常のものよりも巨大かつ強固、タイヤだけで一般的な成人男性の身長の半分はあるであろう寸法であった。
歓喜の叫びを上げそうになるが、それを抑え荷台を開けようと手を伸ばす。
すると、外開きの扉の中心にタッチボードが取り付けられていることに気が付いた。
一見するとそれは八桁のコードを入力しなければ荷台扉のロックが解除されない作りだということがわかる。それを認識すると同時に脳裏に彼女が気を失う直前に柘榴へと託した言葉が瞬時に蘇った。
「 そうか、導さんはこのコードを教えてくれていたのかッッ 」
問題なのは、必要な数字が八桁だということ。彼女はそれを柘榴に伝えようと力を振り絞ったが、最後の二桁の数字を口にすることができなかったのだ。
しかし、六桁までわかっていれば、あとはしらみつぶしに数字を当てはめていけば問題ない。
何度か試してみたが、幸いなことにこれにはセキュリティーロックは対応されていないようだ。
焦燥に囚われ同じコードを入力し、無駄な時間を消費しないよう。思考をボードそしてそこに入力する数字だけに抑える。
ここまで来て時間を無駄にしたくはない。
そして、まるで数時間もの間、タッチボードと対面していたかのように錯覚したが、時間にして約三分。導き出した正解のコードを入力すると扉のロックは解除され展開された。
「 よしッ二人とも早く乗り込めッ!! 」
背後にいる二人へと向き直り、笑みを浮かべたその刹那。
真横をすり抜け「助かった」と口々に、希望で胸満たされ荷台に乗り込む彼らとは裏腹に、周囲へと展開される警戒。そして手遅れとまでに還ってきた冷静が高速で思考を開始した。
まるで遥かな海底に身を置くように身体が重く時間がゆっくり流れる錯覚に捕らわれる。
『 襲撃してきた
想定するに『
『 撃退に成功した数は? 』
『
「 ッッッッ!!! 」
二体残っている!!!
慄く暇も与えられず、記憶に投影される三つの映像。
一つ。それは『
二つ。大扉を破壊した映像。周囲全てに轟くであろう轟音を生み出した。
そして・・・
瞬きを一つ。錯覚が解除される。
視界に映し出される、
「 おっちゃん!!手をッッ!!? 」
戦慄に駆られ、身体を荷台へと投げ出し喚叫を上げるが、まるでそれを待っていたとばかりに空に浮かぶ全身を襲う鈍い衝撃。
しかし、荷台から手を伸ばす店主のソレを掴み、搭乗に成功。同時に「閉めろ」と店主へと放ち、一時的なシェルターが完成した。
「 や、やったな坊主 」
しかし・・・
「 あ・・あぁぁぁ!!!!。ぐぅ。あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!?? 」
今だ体験したことがない程の激痛。
耐えることができない程のソレに情けなく涙が溢れるが、そんなもので痛みは消えない。
どれだけ必死に呻きをとどめても。全身を駆け巡る痛覚が意志とは関係なしとばかりに口を開かせ、この叫喚を室内に轟かせる。
「 そんな。坊主!!! 」
視界に映し出される自らの左脚。その膝下は、もはや少量の肉と皮だけでつながっていた。
円状に大きく抉り取られた肉からは鮮血が噴水のように溢れ零れ、そこから下は下手に刺激を与えれば千切れ落ちてしまうであろう、ふらふらと意思から解放されたとばかりに靡いている。
「 あぁぁぁぁぁぁ!!!! 」
片脚を・・奪われた。
絶望が叫びに変わり、室内をそしてその中にいる全ての者の心を侵蝕する。
芽生えた一筋の希望は、瞬時にして失われた・・・
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