たまに夢を見る

真っ暗闇で一人蹲る俺を

小さな光が照らし出す


「こんなとこにいたの?」

あの子がからかうように笑って

手を差し伸べる


濡れた頬の冷たさで

目が覚めたことに気付く


数字の名前の付いた犬が

心配そうに俺を見つめる

頭を撫でて抱き締める

温かくて安心する


冷蔵庫からポットを取り出し

グラスに麦茶を注いだ


騒がしい蝉の声と夏の日差し

犬に数字の名前を付けた日のことを

ぼんやりと思い出す


元気でいてほしい

幸せでいてほしい

俺のことは忘れてほしい


本当は少しだけ

俺のことを覚えていてほしい


イヤホンを付けて馴染みのない街を歩く

いるはずのないあの子を探す


歩道の隅っこ 自販機の横

寄る辺なさげに咲く花に

頑張れよと心の中で呟く


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