約束


揺れる電車の中で

あなたは私の肩に頭を預ける


無防備に眠るその顔を見て

どうして私をそんなに信用できるんだろうと

不思議に思う


呼吸に合わせて少し膨らんだり

萎んだりを繰り返す胸板


あなたは大人のような顔をして

子供みたいなことを言う


あなたが私を見つめる柔らかい目

あなたが私のために作る料理

あなたが私に差し出す大きな手


それをまともに受け取っていいものか

いつも迷う


左肩に感じる当たり前の温もりを

いつ失くしてしまうか分からないから


あなたは私を見つめる

考えすぎだよって笑う

おいでって両手を広げて

大事な宝物みたいに私をそっと抱きしめる


子供のようなことを言う

大人のあなたの胸はとても広くて

泣きそうになる


「こんなことして済むと思ってるの?」

私の脅しにあなたは笑う


「こんなことするなら、絶対離さないでよ」

私の手をあなたが握る


「絶対離さないよ」

子供がするような約束をする


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る