スカーレット


彼女は恐る恐るそれに触れる


へこんでいたり

膨れていたり

ささくれていたり

爛れていたり


ついさっきできたばかりのものから

もう、ほとんど見えないものまである


赤、青、白、緑

色とりどりのそれが

彼女の瞳に映り込んで

宝石のような輝きを放つ


「これは必要だった?」


彼女は泣き出しそうな

慈しむような顔をして

恐る恐る、順番にそれに触れる


「あの頃のぼくには」


必要だった。

そう言って、ぼくは彼女の髪を撫でる


彼女が一番大きなそれを指差して尋ねる


「これも? これも必要だった?」

「これがなければ、きみと出会えなかった」


彼女は子供のようにペタペタと音を立てて歩き

一番大きくて醜いそれを

全身でそっと抱き締めた


「あなたに会えてよかった」


彼女は振り返り笑った


ぼろぼろの体に、ずたずたの心だ

だけど、今思えば

どれもが必要な傷だった


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