第5話 心ノ音

嬉しいと思えたことも、哀しいと思えたことももう手放してしまいそうだ。それは紡いだ記憶が薄れる、少しのホログラムと創った声が遠のく、終わらない3.1秒。

廻り、巡りの僕の声が、君に届いて、君の願う誰かに届いて、それが叶ってしまうには短すぎて。

もう此処にはいられない。好きな君はもういない。もう昨日には戻れない。来るはずの明日はもう来ない。もう何処にも行けない。もう何処にも、行かない。

ごめんなさいをひとつ。

ありがとうをひとつ。

だいきらいをひとつ。

だいすきをひとつ。

俺の音をひとつ。

貴方の音をひとつ。

「愛していたのかな。誰かを。」

終焉に見合う音を繰り返し呟く。

「思い出せない、君を。」

ながい、ながい物語の最後に添える音を。

「思い出せない、きみを。」

「今日は、雨が降ってるね。」

「 」

「雨音がするの、聴こえる?」


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眠ル音 凪ノ空音 @naginosorane_0130

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