第3話 虹の鎧装
アリエスは疲労を気合いで耐え、幾度も飛んでくる魔弾を避け続けた。
しかし、気合いで疲労は誤魔化しきれるわけもなく、時間が経つにつれ身体を掠める回数は増していく。
それでも気持ちだけは負けるまいと、魔弾の軌道をしっかりと見つめて回避に全力を注いだ。
数えるのも億劫になる程に撃ち込まれた魔弾が、ある瞬間を境に急に止んだ。諦めたのだろうか?それとも魔力が切れたのか?
そんな淡い期待をもって猫又の方を見ると、先ほど連発していた魔弾の十倍程の大きさの魔弾を今にも放とうとしているところだった。
……確実にこの一発で殺すつもりだ。
そう確信した私は避けようと駆け出すが間に合わない。さっきと同じ<
そうしていると、視界の端にスピカの姿が見えた。
彼は自身が光属性に適性をもっているのに私が闇属性だと分かっても、奇異なものを見るような態度を取らず普通に接してくれた。
幼い頃から私は闇属性に適性をもっているというだけで疎まれてきた。
もちろん同じ闇属性の人からは疎まれるようなことは無かったが、傷を舐め合うような関わり合いはあまり心地の良いものではなく、対等に接してくれる人は初めてだった。
もしもっと早く彼のような人間に会えていたのならば……
私があんな過ちを犯すことは無かったかもしれない……
しかし、そんな思考は一瞬で打ち消した。あのような許されざる行為を行(おこな)ったのにも関わらず、何をそんな都合の良いことを。
自分の罪を償うまではまだ死ねないし、死ぬのは許されない。
もとより私の罪は償い切れるようなものないのかもしれなくとも、
そうして気合いを入れ直し、魔弾に少しでも持ち堪えるためにぎりぎりまで集中を高めて、着弾の寸前に展開しようとしたその
誰が何故飛び込んだのか思考を巡らす前に、私の視界は
————————————————————
目の前に立つと、魔弾は側から見た時よりずっと大きく見える。
だが、覚悟はとうに決めている。初めてだからこそ、しっかりと魔法のイメージを固めて、丁寧かつ迅速に詠唱を始める。
七つ全ての属性の魔法を身体に纏わせるイメージで……
「七色の輝きよ、この身を包み給え<
その瞬間に火が、水が、風が、雷が、土が、光が、闇が僕の身体を駆け巡った。
そして魔弾が僕の身体に直撃する……が痛みは全くない。
自分の試みが成功したことに安堵したが、僕の微量の魔力では魔力を常に纏わせた状態をそう長くは保てない。
僕の魔力が切れる前に素早く倒さねばならない。
魔法行使後特有の気だるさに耐えて、猫又に斬りかかる。猫又は何発も魔弾を撃ってきたが、それを意に介さずどんどん猫又との距離を詰めていく。
そこで放った渾身の斬撃は綺麗に躱されてしまった。
魔獣は魔法によって身体能力が高まっているため剣では分が悪い。
このままでは
魔弾に撃たれたと思い込んでいるようで呆然としている。
切迫した状況であるから申し訳なさを感じつつも、肩を大きく揺さぶって意識を引き戻す。
「え、あ、今、あなたは、魔弾に打たれたはずじゃ……」
「説明は後からする!今はとりあえずお前の魔法であいつの動きを制限してくれないか?」
とはっきりとした声で告げた。彼女は一瞬たじろいだが、真剣な表情で大きく頷いた。
「ありがとう」
「礼を言うにはまだ早いさ」
となにやら既視感があるやり取りをした後、彼女はすぐさま詠唱を始めた。
「彼の者の動きを妨げ給え<
その瞬間に猫又は凍りついたようにピタリと動きを止めた。
「おっ、らあぁぁ!!!」
そう叫びながら突進し、そいつの首を跳ね飛ばした。
ニギャオヴゥゥゥ
猫又はしばらく断末魔をあげジタバタしていたが、やがてピクリとも動かなくなった。
「……なんとか、やったみたいだな」
彼女が僕のところに駆け寄ってきたが、彼女が近づく前に猫又を討伐できた安心と魔法の使い過ぎによる疲労によって、僕は意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます