人は一人では生きていけない。


 もう今週は電池切れを起こしている雪です。昨日は夜、シンポジウムの打ち合わせでした。来月、シンポジウムのシンポジニストに選ばれまして(いや。厳密にいえば、やる人がいないから仕方なくやるんですけれども)、そのシンポジニスト同士で、どんな話をするかの打ち合わせだったんです。


 人と同じテーマで話すって苦手なんですよ。昔から。なんとなく人と比べられるような世界にいたもので、こういう土俵に立つと、人より劣っているのではないかという不安にさいなまれたり、一人だけ頓珍漢なことを言ってしまったりするんです。だから、すごく嫌なんです。


 今回は、ぶっつけ本番じゃなくて、事前にこういった打ち合わせを組んでもらって本当によかったなって思います。けど、夜の打ち合わせは母にとったらきついものです。二女も大きくなってきたとは言え、夜遅いとリズムが崩れるわけです。


 案の定、帰ると不機嫌な感じ。疲れてぶつくさ文句を言っています。それに引き換え、テスト期間中の長女は塾に行っていて、超ご機嫌で勉強をしています。姉の機嫌がいいと、妹は面白くない様子。結局、ぶすっとしたままふて寝をし始めました。


 長女が風呂に行き、さて寝るかと思った瞬間。「そうだ。右の肩甲骨の内側が痛いんだった」と思い出した私。ここのところ、背中が固くなってきて、痛みがあります。


 いつもだったら、二女がシップを貼ってくれるんですけれども、今日はもうすっかり眠ってしまっています。わざわざ起こすわけにもいかず。浴室のところに行って、長女に「シップ貼ってくれ」と頼みます。しかし、思春期の女子の入浴ほど長いものはないわけ。「いいよ」っていうわりには、待てど暮らせど上がってくる気配なし。


 こっちはもう疲れていますからね。さっさとシップを貼って寝たいわけです。仕方がないので、人に頼ることはやめて、自分で貼ってみることにします。今時のシップは昔と違って薄くて、うまく貼らないと、すぐにコチャコチャになってしまいます。慎重に慎重に。そう思って、右腕を後ろに回して、シップを貼ろうとした瞬間。


 あいててて! 肩、痛い! 釣った、釣った!


 背中どころか、右肩回りに激痛が。うおおおおお。と一人でのたうち回ります。仕方ない。左手で貼ろうか。しかし、そうすると、うまく貼れないわけで。案の定、シップはぐちゃぐちゃに。


 ——年取って、一人暮らしになったら、一体だれがシップを貼ってくれるのだ……。


 そんな将来への不安が胸を締め付けてきます。ああ、これが孤独ってやつか。シップを貼ってくれる人もいなくなるってわけね。人間、一人では生きていけないって本当です。やっぱり誰かの手助けがあると助かるわけです。


「私はね。人の世話にはならないんですよ」っていう人ほど、人の世話になるわけで。だったら最初から「お願いします」っていうしかないよねって思いました。


 結局は、意気消沈してしまって、長女が上がってくるのを待つことなく寝ました。くそー。テスト期間中なんだから、長湯してるなよって思います。


 ああ、それにしても、腕が背中に回らないだなんて。年を感じた秋の夜です。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る