こうあるべきって止めたほうがいい話
今週は毎晩のように総会にお呼ばれしている雪です。新型コロナウイルス感染症対策が緩んで、書面で済んでいた会合が、対面で再開されることになりました。人と出会えることは嬉しいことですけれども、久しぶりに人と話すということは、ものすごいパワーを使うんでしょうね。すっごく疲れます。
先日。小学校の吹奏楽の保護者会も3年ぶりくらいに総会が開かれたました。私が役員をしていた頃も書面開催でしたから。なんだかすっかり忘れていましたが、結構議論が巻き起こって、時間のかかる総会だったことを思い出しましたよ。
そーだった。長女が四年生の時は、制服のリボンを変えるか変えないかで揉めました。次の年は会費を値上げすることで揉めましたね。今回はですね~。スタメン入りできない子がいるのはおかしいって話になったんです。
そのお母さん、涙ながらに20分くらい訴えました。他のスポーツならメンバーの人数が決まっていて、下手でも人数が足りなければ出してもらえるのに、なぜうちの子は出してもらえないんだってね。
はい。その子ね。支援学級の子なんですよ。私が役員していた時も、たった10分弱の時間、ステージの上でおとなしくしていられないんです。小学生って、思ったよりもへたくそ。吹けないんです。だから、学年が下がるほど、吹き真似することを強いられます。その吹き真似すらしていられないんですよね。だから、先生は外していた。そして、そのことはその親にも説明済みだった。
ところが、久しぶりの対面開催で、思いのたけをぶちまけたくなったんでしょうね。
「学校では『楽しく』とモットーにしているのに、オーディションをやって。出られない子がいるなんておかしいと思います。みんな一生懸命でかわいいんですよ」って。
彼女の言い分に、保護者たちは騒然です。ねえ、前も書いたけどね。涙ってやつに日本人は弱いわけです。泣かれると、なんだかすごく気持ちが揺れ動くものです。けどね。あんな大勢の前ではなかなか泣けませんよ。問い詰められた先生はこう返しました。
「支援学級だからと言って、出していないわけじゃないです。学校の方針で上を目指すということで講師を依頼してやってきています。みなさんが上を目指すことを止めるというなら講師は依頼しません。楽しくみんなでできる範囲でやっていこうというスタンスに切り替えます」と。
するとお母さん。すかさずこう切り返します。
「私は息子が支援学級だって一言も言いませんでした。なのにそんな言葉が出るなんて——残念です」と。
この会話を聞いていて、思ったのは、母親自身が一番コンクールに拘り、そして息子ちゃんを認められていないんだろうなって思いました。彼女にとったら、そこが一番引っかかっているところなんでしょうねえ。
ねえ、うちの子だってね。支援学級とかそんなの関係なしにほとんどできていませんでしたよ。四年生の時は一小節しか吹かせてもらえません。「音楽をやってきた私の子が、そんなはずない」と楽器のせいじゃないかと、楽器を店に持って行ってみてもらったことも笑。なんてお馬鹿さんだ。いや、事実、楽器はボロボロで音程なんて合わせられる状態ではありませんでしたけど。
五年生の時だって、数小節です。五年生のアンサンブルコンテストではオーディションで落選。友達がステージに立っている傍ら、低学年の子たちの面倒を見る役に。この辺りに来て、やっと理解しました。子の実力をね。やっとですよ。やっと。
親は子に過剰な期待を持つわけです。まさか。うちの子が。もう少しできるはずでしょう?って。
オーディションなんてやめて、みんなで楽しく吹こうってさ。オーディションに落ちる子に合わせてみんなも道連れかよって思うと、なんて乱暴な理論なんだろうと思います。
今年の6年生たちは、全国大会に駒を進めることができたら、修学旅行を途中で帰ってこなくてはいけないそうです。先生は6年生たちに意思確認をしていました。
「修学旅行、途中で帰ることになるよ? 上を目指すということは、仲間の誰かがステージに立てないこともあるかも知れない。自分もそうなるかも知れない。貴方たちはどうしたいですか?」
6年生たちはみんなで「上を目指したい。出られるように必死に練習したい」と答えたそうです。
子どもって、大人が思うよりも大人なんです。特に6年生くらいはね。確かに周囲の意見に惑わされることもあるでしょう。けれど、親が勝手に決めていい問題でもないわけです。先輩たちも歩んできた道を、彼らは自分たちも目指したいと言うわけです。
これって、親が応援しないわけにいかないじゃないかーって思います。
ずっと下積みばっかりだった長女は、6年生で初めてアンサンブルコンテストに出ました。厳しかった講師の先生から、特注のお高いトランペットをお借りして、きらきらと輝いてステージに立ちました。ずっと我慢してきた彼女が輝いた瞬間です。
中二になった彼女。後輩たちが入ってきました。五年生の頃、下級生の面倒ばっかりみてきた彼女は、後輩たちに慕われています。他の誰よりも話しやすくて頼りになりますって、一年生に言われたそうです。それって、彼女が後輩たちと必死にやってきた結果ですよね。
ステージに立てなかったという結果だけみると残念です。当時は本人が一番悔しかったことでしょう。けれど、彼女は確実にかけがえのないものを得たようです。ステージに立つことだけが全てではない。私はそう思いました。彼女はここの学校でよかったとよく言います。
そう、プライドがあるんですよね。頑張ってきたプライド。先輩たちから引きついたプライドです。「いつでもやめてやる」なんて言っていた彼女はもうここにはいませんよ。高校の目標も決まりました。地元で吹奏楽の強豪に入りたいそうです。先輩たちもたくさん進学していますしね。
次女もそんな姉を追いかけて、がんばってます。やる気だけは120パーセント。その実吹き真似ですけどね。すっごく嬉しいみたい。がんばれー、親は子の応援団です。
親が過剰に子に期待を寄せると、子も辛いです。そして親も辛い。親もね。現実に打ちのめされて、子と一緒に挫折を味わいます。だから親子でこうして成長していくんでしょうね。もう次女になると、吹かせてもらえないのが当然ですから。「お前、吹き真似頑張っておけよ」っていつも話ています。
親の思いばっかりじゃなくてね。子の思いをよく聞いてあげないといけないと思います。親っていうのは、子よりも人生経験が長いですから。小学校しか知らない子に、いろいろな道があると提示してあげる役割もあると思います。子に見合わない場所で頑張らせるよりも、楽しく吹ける場所に導いてあげるのもいいのではないかと思う今日この頃。
さて、仕事で辛くなっている今週。今日はお休みをもらって、親友と夕飯食べてきます。ストレスフルになると、いろいろと周囲にもよくないことをし始めますからね~。自分でなんとかしなくちゃいけませんね。
学園ミステリーが進みません。やっぱりBLじゃないと書き続けるのがストレスみたい。「こうあるべき」「こうしなくちゃいけない」ってことはやめたほうがいいかも知れないなあ。
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