第28話 その日の前 2
「まったく、皇子様も役者だね、三文役者だけどね。都に見舞いに行きたいと嘆願書を出して、駄目と言われて泣いて…最初から分かっていたくせに…しかも、行く先準備までして…私らを全員集合させてさ。まあ、だから、安泰ともいえるんだけどね。」
「私らは、もう歳だからいいけど、一応長生きしたからね、でも、あんたらは、若いのにな…もしもの時は、主様のために死ぬつもりかい?」
ハーレム全員が、一応ディオゲネスの館に招集され、ステネサとパノストラが皆に揶揄うように言った。エルフ、特にハイエルフは長命だ、不老不死に近いと言われている。400歳にして若々しいハイエルフも、確かに稀にはいる。しかし、虚弱体質或いは繊細なため、100歳まで生きるエルフは、ハイエルフも、80歳まで生きる人間と同じ比率だとも言われている。また、大部分の150歳以上のエルフは80台の矍鑠としている人間より老いているし、200歳以上のエルフの大半は寝たきり気味である。その意味で、2人は平均よりは長生きしたと言える。
「私達は騎士だ、戦士だ。何時だって、主人のため、大義のため息、死ぬ心構えはできているよ。」
そう勢い込んで反論したのは、メランタだった。アルケシア以下が頷いた。
「まあ、騎士として待遇されているからねえ。まあ、上を見たらきりがないこどね。姫様は…。巫女様もかい?」
ステネサが、アスコナとスダナにふると、2人は、
「感謝してますよ。聖女としての仕事を与えられたのですから。」「その聖女に、相応しい態度を取りますよ。」
「聖女として、殉じます。」
穏やかだが、断固とした調子で言った。
「衣食住、奴隷としては、かなり優遇されているからね。わたしらも、領主様の名で仕事を、させてもらったからね、感謝してるよ。」
奴隷で宰相、将軍などに用いられる場合もある。しかし、それは例外中の例外である。
「まあ、普通に望んでもなかなか得られないものを与えられているわな、あたいらも。」
「だから、死んでも主様を守るさ。」
「大したことは出来ないだろうけど、あんたらと違って。」
最後は、同様な落ちになっていたが、それは彼女らの本心だった。
それを、別のところから、密かに聞いていた者が3人いた。
「ふん。分かっているような口を…。」
ヒケシアが不快そうに呟いた。
「…。」
のディオゲネスを見て、パイステアは、
「…。」
“俺がやっているのは、あの盗賊達と変わりがないかもしれないのにな…。”
「すまないな。」
パイステアの方を見て、口から出てしまった。
「?」
という顔をしていたパイステアだったが、直ぐに“立ち直って”、ディオゲネスの腕と自分の腕を組ませて、寄りそって、頭を彼の肩に預けた。
「私が一番よく分かっていますよ、主様。ディオゲネス様が、自分勝手で、わがままで、冷酷で、弱虫の小心者で、人を利用することを考えていて、愚か者でウッカリやで優柔不断で、怠け者であることをよく知っていますよ。心まで、毎日通じ合っているんですから。」
耳元で、息を吹きかけながら囁いた。
「ひどい言い方だな。まあ、かなりあっているが。」
苦笑しながら、ディオゲネスは答えた。
「主様も私がどんなにひどい女が分かっているでしょう?」
「は?お前は、立派な令嬢で騎士だったぞ?」
意外なことを言うな、という彼に、
「そうです。敢えて自信を持って断言します。でも、同時に主様と同様な私もいるんです。分かっておられるでしょう?だから、私も分かっているのですよ。主様の優しい心や賢明さ、勉強家で勤勉なところも、そして、理想もね。」
そう言って、彼の耳を軽く噛んで、彼がびくっと反応したのを、楽しそうに笑った。
「ソウ先生ですよ。」
清貧そのもので、報酬がなくとも人、地域、国のためになるのなら東奔西走も、何百里も厭うことなく、駆け巡り、人間が全て生まれながら平等であり、平等であり続けなければならないとして、それを現すために平らな帽子を被る多芸多才万能の偉人だった。ディオゲネスの母は、帝王学を学ばせる傍ら、彼も息子の師とした。彼女が彼に何を、息子に期待したのかはわからない。彼のあまりにも広い教えの中の統治、人間操作、厳密で冷徹な現実認識を期待したのか…。
「似た者同志と言うわけか?」
そう言って、お返しとばかりに彼女のズボンの中に手を差し入れて、彼女の下半身の敏感なところに触った。
「ひ!そんな…ひ、ひどいです。」
体をくねらせて抗議する彼女の唇に自分の唇を重ねた。
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